1. はじめに

 本年報では,東京大学地震研究所の2019年度における研究・教育活動の全般について報告します.地震研究所は,教員が約80名,研究員が約30名,大学院生が約70名,その他のサポートスタッフが約80名いるという,地震学・火山学では,世界でも有数な規模の研究所です.これらのメンバーによって行われている幅広い研究や教育などに関する活動をまとめたのが,この年報です.部門・センター毎に主な研究成果をまとめてあるのに加えて,教員・研究員・技術職員毎に研究成果・学会活動・教育社会活動が列記されています.
 地震研究所は「世界の地震研」を目指し,毎年多くの客員教員・研究員を受け入れているほか,海外の18研究機関と協定を結び,定期的なワークショップやサマースクールを開催しております.また「社会の中の地震研」として,ホームページ,学会等でのブース出展,一般公開やラボツアーなどの広報アウトリーチ活動も行っており,それらについてもまとめられております.
 2019年度の主な出来事としては,「計算地球科学研究センター」の設置,学内連携研究機構の拡大,第2次の地震火山観測研究計画の開始が挙げられます.
 地震研究所では,東日本大震災直後の2012年に「巨大地震津波災害予測研究センター」を設置し,シミュレーション技術等の高性能計算による災害予測技術開発を行ってきましたが,地震研究所で行われている地球科学との融合をより加速していくため,2019年9月1日に同センターを「計算地球科学研究センター」と改組しました.
 東京大学の部局間連携機構として2018年度に設置された「国際ミュオグラフィ連携研究機構」は,工学系研究科,理学系研究科,医学部附属病院に加えて2019年には総合研究博物館が加わり,次世代透視技術の開発ならびにその成果の社会発信を進めています.史料編纂所との「地震火山史料連携研究機構」では,日記史料などを蒐集・データベース化して過去の地震活動を推定するなどの研究を継続し,宇宙線研究所が責任部局である「次世代ニュートリノ科学連携研究機構」では,ハイパーカミオカンデプロジェクトの実施に向けた体制強化に貢献しています.
 地震研究所は「地震・火山科学の共同利用・共同研究拠点」として文部科学省から認定を受けておりますが,2019年度は第3期中間計画(6年間)の後半(4年目)に入りました.特に建議に基づく「災害の軽減に貢献するための地震火山観測研究計画」は2019年度から第2次計画(5年間)が始まり,8つの計画推進部会と5つの総合研究グループという新たな計画・実施体制で活動を開始しました.

東京大学地震研究所長 佐竹健治