4.1.1 広報アウトリーチ活動の実績

(1) ホームページ

 ホームページ(所の公式なウェブサイト)は社会への情報提供のための重要なツールである.広報アウトリーチ室ではこれまで,ニューストピックス,地震・火山情報の発信などを整備し,運営・管理を行ってきた.2013年度以降は,所の最新の研究活動をより広く知って貰うため,最近の研究を紹介する欄を設け,研究成果として論文に公表された内容を一般の方にも判るような解説を付けてホームページにアップするコーナーを立ち上げた.また、2014年11月にホームページを大幅にリニューアルして,よりシンプルなトップページと整理された階層構造を整えて,ホームページによる情報発信の強化を図った.さらに,教育・研究活動の国際化に応えるため,国際的な情報発信を強化するホームページ英語版のリニューアルも行った。

 2019年は,地震研究所の最新の研究活動に関する情報を掲載するホームページの維持管理と情報発信に務めた.大規模な地震・火山活動時には,国内外を問わず,すみやかに地震・火山情報のページを設け,地震研究所の観測・研究情報や解説記事などを迅速に提供している.2019年には,山形県沖の地震や浅間山噴火などの項目を設け研究速報の情報発信を行った.トップページには,所員が出版した最新の論文についての解説を掲載し,順次入れ替えを行っている。また,「お知らせ」「シンポジウム」等の新しい情報の掲載を頻繁に行い,所内外への広報アウトリーチ活動を行った.

(2) 印刷物

 所内研究者の研究や所外研究者との共同研究の成果を公表・発信するために,広報誌・要覧などの印刷物を出版するとともに,これらをホームページで公開している.

 広報誌は「地震研究所広報」から電子媒体のみの「地震研究所ニュースレター」(2005 年より 30 回発行) を経て,2008 年より紙媒体の広報誌「ニュースレター Plus 」を発行している.4ページのコンパクトな紙面に,特集記事とトピックスを一般の読者を意識して分かりやすく解説するよう努め,学内・行政・審議会・メディア等の関係者や地球科学関係の学科等がある大学や首都圏の高校,図書館等に送付するほか,全所員,一般公開の参加者や公開講義等でも配布している.執筆・デザインには外部の協力も得て,質の高い広報誌を目指している.2019年には「ニュースレター Plus」を2回(第30号, 31号)および「ニュースレター Plus」を発行して,地震研究所の最新の研究成果を紹介した.

 また,世界及び日本の震源地図のポスターは最新の地震活動データを加えた改訂版を作成した.さらに,世界の火山とプレートを表すポスターを新規作成し,また江戸時代の地震・火山災害資料(図書室所蔵)の絵葉書を作成した.これらの配布物は,一般公開の際やラボツアーや所内見学に訪れた来場者に配布し,地震活動の理解への啓発に向け活用した.

 (3) 研究紹介動画等

 一般の方に地震の観測の方法や研究の意義を理解してもらうためのビデオを作成し,展示ブース等での上映,地震研ホームページへの掲載を行った.また,地震波伝播を再現する模型等の教材を作成し,学会等で展示したほか,学校,防災関連イベントへの貸出を行った.火山噴火の解明を目指す研究者の観測研究活動の様子,そして震源地図・プレート運動地図の制作過程とその教育・研究活用をテーマとする動画を作成し,YouTubeにて公開した.さらに,地震研の観測研究と,これに従事する研究者らの姿をテーマに2020年カレンダー(日本語・英語版)を作成した.

 (4) 関連学会へのブース出展

 学会に参加する研究者,学生・生徒へのアウトリーチとして,これまで日本地球惑星科学連合大会,日本地震学会,国際学会 (EGU,AGU,AOGS,IAVCEI等) に,地震研究所としての展示ブースを出展し,研究所の活動や成果,開発機器等の紹介を務めてきた.2019年は,4月にオーストリアのウィーンで開催された2019 EGU General Assemblyと12月に米国サンフランシスコで開催された2019 AGU Fall Meetingに出展し,地震研究所の紹介に努めると同時に,海外からの留学生の受け入れ促進を図っている.国内学会では,5月に開催された日本地球惑星科学連合2019年連合大会にブース出展した.

 (5) 一般公開・公開講義

 地震研究所では,地震や火山の基礎研究,地震火山災害の軽減に関する研究などを直接的に社会に伝達することも重要な責務であると考え,学生や市民を対象に研究所の一般公開を実施している.2009年までは一般公開に合わせて公開講義を実施してきた.2010年から2013年までは,1月から3月に公開講義を開催したが,2014年からは,一般公開の時期に公開講義を実施している.2019年は,東京大学のオープンキャンパスの日程に合わせて,8月7日に地震研究所の一般公開が実施され,公開講義も同日に行った.

 (6) 所外からの問い合わせ・講演依頼等への一元的な対応

 社会の関心が高い研究を進めている研究機関として,一般の方からの様々な問い合わせに対応するため,地震研究所ホームページに「問い合わせ」欄を設け,広報アウトリーチ室が窓口となる体制を整えている.また,所外(政府省庁,地方公共団体,防災関係機関,学会,教育委員会,中学・高校)からの講演依頼については,所内の教職員の協力のもと本務である研究・教育活動に支障がない範囲で,できるだけ対応する方針をとっている.

 (7) 見学,ラボツアーの実績

 中学生・高校生・大学生・研究者及び地方あるいは国の行政機関,学校教員,関連企業などからの地震研究所の訪問・見学の希望については,できるだけ受け入れる方針で対応している.訪問・見学者に対しては,希望により所内教員の協力を経て地震火山に関する講義を行い,また所内研究施設(海底地震計,首都圏地震観測網,地震計博物館など)のラボツアーを実施している.また,国際室と協力して,海外の研究機関や行政機関からの来訪者にも対応している.2019年は,国内外から50件,人数にして1500名以上の見学・訪問者があった.

 (8) 報道対応及び報道関係者,防災関係者向けの教育

 地震研究所における取組みを一般に伝えるためには,ホームページや印刷物の他に,報道機関からの取材への対応も広報アウトリーチ室が担当している.2012年度以降は,報道関係からの取材依頼や問い合わせについても,広報アウトリーチ室が窓口となって一元的に受けつける体制を整備し,これらの取材依頼や問い合わせに対して,対応が可能と思われる適切な教員に依頼等を受けて貰う形で応えている.この様な体制を取ることで,報道関係からの取材とその対応について,2012年度以降は広報アウトリーチ室において,把握できる状況となっている.

一方,観測計画によっては地元自治体,住民の協力・理解を求める事が必要であり,それらの実施予定や重要な研究成果などについて,発表者や東京大学本部広報課と緊密な連絡を取りながら,それぞれの内容に応じてプレスリリースや記者会見等の適切な手段を選んで報道対応を行っている.

 地震研究所の研究活動,研究成果をより的確に社会に伝えるためには,仲介者となる報道や行政機関,教育関係者などとの十分なコミュニケーションが不可欠である.国内外の地震・火山災害の解説や地震研究所が取組む課題などの話題提供を行う機会として「地震火山防災関係者との懇談の場」を設けている. 2012年からは,「ニュースレターPlus」で取り上げた話題を報道関係者に掘り下げて詳しく話題提供する試みを始めている.2019年は,「ニュースレターPlus」第30号と31号の内容を話題として,5と7月に開催した.また,報道関係者や自治体防災担当者を対象に,地震・火山情報の基礎となる研究と予測の現状について意見交換をはかる「地震・火山噴火予測研究のサイエンスカフェ」の第一回目を地震火山噴火予知研究協議会と協力して12月に開催した.