3.4.4 鉄筋コンクリート構造物の耐震性能評価

近年,建物の設計においては,建物を詳細にモデル化し,その非線形挙動を解析的に追跡してその性能を評価することが主流となっている.建物の非線形特性においては,非線形化による減衰効果の評価が極めて重要であり,その主要なパラメータは降伏時変形である.一方,降伏時変形の推定式は40年以上前に実験結果の統計処理により求められた経験式を現在も用いているのが現状である.そこで,過去30年の国内で発表された鉄筋コンクリート部材の実験結果に関する論文を収集し,そこに示されている荷重―変形関係をデジタル化することにより,降伏時変形に関するデータベースを構築した.更に,部材の変形を①曲げ変形,②せん断変形,③鉄筋の抜け出し変形,に分けて理論的に降伏時変形を推定する方法を考案し,実験データベースを用いて検証している.

更に,建物全体の挙動における降伏点推定精度の影響を検討するため,実大5層の鉄筋コンクリート造建物を作成し,E-Defenseを用いて振動破壊実験を実施した.実験では,大きな損傷を加えた後にエポキシ樹脂を用いたひび割れ補修を行い,再度加振することにより,補強効果の確認も行った[図3.4.4].