3.4.5 構造物の総合観測ネットワークの構築と損傷度評価

巨大地震が発生した場合,早急に損傷を受けた建物の損傷度を評価し,建物の継続利用の可否を評価する必要がある.そこで本研究では,比較的安価の加速度計を設置し,建物の地震時応答を計測して,等価線形化法を用いた損傷度評価システムの開発を進めている.等価線形化法とは,建物に作用している力と変形の関係を等価一自由度に縮約してその耐震性能を評価する方法である.このシステムの有効性を実証するため,既存構造物に実際に設置して,計測を続けている.観測建物は,中層事務所ビル,学校建物,低層木造歴史建造物,低層戸建て住宅,60m級通信用鉄塔などである.東北地方太平洋沖地震の際に観測された,8階建てSRC学校建物の性能曲線を見ると,剛性低下が見受けられるが,詳細な被害調査の結果,連層耐震壁脚部に軽微なひび割れが確認された.また,地震研究所1号館の観測記録から,東北地方太平洋沖地震の際に免震装置が有効に作用したことを確認した.

更に,非構造材を含めた建物の継続利用性を判断するシステムの構築を目指し,「首都圏を中心としたレジリエンス 総合力向上プロジェクト サブプロジェクトC:非構造部材を含む構造物の崩壊余裕度に関するデータ収集・整備 課題②災害拠点建物の安全度即時評価および継続使用性即時判定」の一環として,天井や窓,外装タイル仕上げなどを有する実物に近い実大建物(鉄筋コンクリート造3階建て)を建設し,E-Defenseを用いて振動破壊実験を実施した。その結果を従来の目視に拠る「被災度区分判定」および地震保険の損害率算定の結果と比較し,構造被害自動判定結果の妥当性を検証した。 [図3.4.5]。