3.3.6 地球ダイナミクス:水・マグマと固体地球の相互作用

太陽系の岩石惑星の中でも,地球は,海と陸,活発な地震・火山活動,プレート運動と大陸移動,地球磁場を有し,生命を宿す「にぎやかな惑星」である.なぜ兄弟惑星である火星や金星と異なりこれほど活発で多様性に富むのか,その仕組み・鍵の一つは水にあると考えている.物質科学系研究部門・岩森研究室では,これらのユニークな地球の営み(=地球ダイナミクス)について,特に水と固体地球の相互作用に注目しながら,温泉や火山の調査,室内分析,データ統計解析,数値シミュレーションなど,さまざまなフィールドや手法を組み合わせて研究している.2019-2020年には,

  •  島弧火山岩および地下水組成解析(地球化学解析および統計解析)に基づき,沈み込んだプレートから物質が供給され,マグマや深部流体が地表に達するまでのプロセスを定量的にとらえた.具体的には,(1)カムチャッカ半島北部における火山活動には,沈み込む海山列から供給された流体が関与していること,(2)日本列島に分布する有馬型塩水の組成,特に希土類元素組成の多様性は,沈み込むプレートからの脱水深度,上昇過程での冷却・酸化,天水との混合,および母岩との反応によって支配され,組成からそれぞれの寄与が分離できること,などが分かった.
  • 地球表層を覆うリソスフェアが,地球内部のアセノスフェアと熱的・物質的にどのように相互作用するかは,プレート運動や地球内部物質循環,および地球の熱的進化を規定する重要なプロセスである.アフリカ・カメルーンでは,大陸リソスフェアがプルームあるいはマントル対流の上昇流と相互作用し,火山(カメルーン火山列)を生み出していると考えられている.カメルーン火山列のマグマの組成およびその時空間から,リソスフェア-アセノスフェアの相互作用を探った.マグマ中のアセノスフェア由来成分とリソスフェア由来成分を識別し,両者ともそれぞれ複数の成分が存在すること,量的には前者が卓越すること,ものの,より放射改変起源成分に富むリソスフェア由来と考えられる複数の成分が存在することが分かった.今後,これらを鍵として,リソスフェアがどのように熱的に変化したかを議論する.