3.2.6 地震先行現象の研究

(a) 長期的静穏化が地震に先行する傾向の客観的評価

巨大地震のほとんどに数年以上の静穏化があるという傾向の有意性を客観的に評価するため,北海道大学と協力して,一定の基準に基いて静穏化を判断し,一定の領域に一定の期間,大地震がおきやすいという予測によってランダムに立てた地震より有意に良く当るかを検証した.千島から小笠原にかけて,客観的・網羅的な静穏化の検出をおこない,9-12年程度以上続く静穏化があればそこから50-70km程度の範囲に4-8年程度有効な警報を出すという試行予測による警報マップと,1988年から2014年におきたM7.5以上8.5未満の地震8個とを比較した結果,確率ゲインが2程度,p値が5%をきる有意な先行傾向を示す.しかし,学習に使ったデータと評価に使ったデータが同じなので,過学習による好成績である可能性がある.そこで,今年度は,実験期間を前半・後半にわけて,片方で最適化したパラメタで他方の予測を行うクロスバリデーションを行い論文にまとめた.この場合,評価はたった4個の地震に対して行うことになるので低いp値は得られなかったが,後半データで学習した予測モデルは,前半の地震の予測に対しても確率ゲインが2程度の予測ができ,また,最適化された予測モデルは全期間のデータで学習したモデルと同様であった.一方,前半データで学習した場合は,この期間におきた地震前の静穏化に継続期間の特に長いものが複数あったため,異常検出の閾値が厳しすぎるモデルが選好されてしまい,学習期間では確率ゲインが4を超えるが評価期間では1程度となる(予測できていない)典型的な過学習となった.いずれにしろ,8個の地震に対して学習したモデルはロバストに見えるので,評価に使える地震数を2倍にすれば,クロスバリデーションに合格できるかもしれない.