3.5.3 活断層-震源断層システム

 内陸地震の長期評価や発生メカニズムを理解するには,地震発生層底部から表層に至る一つのシステムとして活断層-震源断層を理解する必要がある.このため,当センターでは地殻スケールから極浅層に至る反射法地震探査による活断層の地下構造の解明に主眼をおいた研究を,全国の研究者と共同で進めている.

 日本列島の震源断層のモデル化は,島弧地殻の変形プロセス・内陸地震の長期予測・強震動予測においても重要であり,2010 年から全国の研究者と共同で地質・変動地形・重力や地震活動などの地球物理学データに基づいた総合的な日本列島の震源断層のマッピングプロジェクトを進めている.2021年は東北日本弧とその沿岸海域の震源断層モデルを作成した.さらに,2011年東北地方太平洋沖地震後10 年間の粘性緩和にともなう上盤プレート内の震源断層の応力変化の評価に向け,東北沖地震の地震時・余効すべり分布に千島海溝の固着など広域のプレート境界過程を含めたモデル計算を行い, この条件下で日本列島域の応力速度場を計算し, さらに東北地方陸域および日本海沿岸域の震源断層にかかる応力を計算した.