3.10.2 応力不均一によるエピソディック非地震生すべり

速度・状態依存摩擦則を利用して地震サイクルの数値シミュレーションを実施した.速度弱化域の長さWと不安定すべり発生に必要な臨界断層長h*の比W/h*が発生する地震サイクルの様式を支配することが知られている.W/h*が大きくなるにつれ,すべり様式は(1)安定すべり,(2)速度弱化域全域でのスロー地震の繰り返し,(3) 速度弱化域全域での通常地震とスロー地震の混在,(4) 速度弱化域全域での通常地震の繰り返し,(5) 速度弱化域全域での通常地震の繰り返しに加え速度弱化域の一部でのエピソディック非地震生すべりの発生,(6) 速度弱化域全域での通常地震の繰り返しに加え速度弱化域の一部を破壊する小地震の発生,のように変化することがわかった.(2)は,速度・状態依存摩擦則のうちaging lawで生じやすいことを確認した.(5)は本研究で新たに明らかになったものである.速度弱化域全域で地震が発生すると,この領域のせん断応力は低下する.深部での安定すべりにより速度弱化域最深部の応力は時間とともに増大するが,速度弱化域浅部での応力は低いままである.そのため,速度弱化域最深部において不安定すべりの発生に向けてすべり速度が加速し始めるが,すべり先端が浅部の低応力域に達したところで停止してしまい,結果としてエピソディックな非地震生すべりとなる.この発生機構は,浅部の低応力域において破壊が停止する点で(6)の速度弱化域の部分破壊と似ている.深部の安定すべりがさらに進行すると,速度弱化域内部のせん断応力も徐々に増大するため,最終的には速度弱化域全域を破壊する地震が発生する.その破壊核形成過程は,先行するエピソディック非地震生すべりの発生過程と途中までは良く似ており,見分けるのは困難である.