3.3.8 海洋プレート下における小規模対流の空間パターンの理解

地殻熱流量や海洋底深さ、地震波速度異方性など様々な観測から、海洋プレートの下で小規模対流が生じている可能性が指摘されている。地球物理学的観測から小規模対流の存在をより詳細に議論するためには、小規模対流がとりうる空間パターンを物理的に理解する必要がある。これまでの研究では、特に海洋プレートが比較的速く移動する際、小規模対流はその回転軸がプレート運動方向に対して平行になるように生じやすいとされてきた。これは小規模対流が海洋プレートの運動に伴う大規模なマントルの流れを妨げないように生じようとするためである。一方海洋プレートが比較的遅く移動する際には小規模対流はランダムな空間パターンを示すと考えられてきた。しかし3次元の数値モデルを用いて小規模対流の振る舞いを再評価したところ、プレート移動速度が比較的小さい場合には小規模対流の回転軸は海嶺軸に対して平行となる場合が多いことが明らかになった。これはプレート運動に伴うプレート運動方向の温度勾配が小規模対流の空間パターンを支配する主要な要因となっていることを示唆している。