3.5.3 活断層-震源断層システム

内陸地震の長期評価や発生メカニズムを理解するには,地震発生層底部から表層に至る一つのシステムとして活断層-震源断層を理解する必要がある.このため,当センターでは地殻スケールから極浅層に至る反射法地震探査による活断層の地下構造の解明に主眼をおいた研究を,全国の研究者と共同で進めている.2022年度は北陸地域の主要活断層である森本・富樫断層帯中央部の深部構造探査および三浦半島断層群の浅層高分解能反射法地震探査を行った.また, DAS技術を用いた活断層極浅部構造の超高分解能イメージングのための準備を開始した.

日本列島の震源断層のモデル化は,島弧地殻の変形プロセス・内陸地震の長期予測・強震動予測においても重要であり,2010 年から全国の研究者と共同で地質・変動地形・重力や地震活動などの地球物理学データに基づいた総合的な日本列島の震源断層のマッピングプロジェクトを進めている.さらに,東北沖地震の地震時・余効すべり分布に千島海溝の固着など広域のプレート境界過程を含めたモデル計算を行い, この条件下で日本列島域の応力速度場を計算し, 上盤プレート内の震源断層の応力変化の評価を試みている.2022年度は,東北日本横断地殻構造探査の解析を進めたほか, 関東地域の震源断層にかかる応力の評価を試みた.また,島弧の長期間地殻変動速度を解明する目的で,東北日本沿岸部において宇宙線核種を用いた海成段丘面の露出年代の推定を試みた.