3.5.9 森本・富樫断層帯の重点的な調査観測

森本・富樫断層帯は石川県の金沢平野の南東縁にある長さ26 km,北東走向の活動的な逆断層である.平均変位速度は約1 m/千年とされ,北陸地方に分布する活断層のうち,最も活動的な主要活構造である.本断層帯の周辺には金沢市をはじめとする北陸地方有数の人口密集地が分布しており,その長期評価は本断層帯の活動に伴う地震被害を想定する上で大変重要である.長期評価では,発生する地震規模はM7.2,今後30年間の地震発生確率は2〜8%と高く,強震動評価としては,この断層帯が活動した場合には,震源断層近傍の金沢平野をはじめとして,富山県西部も含む周辺の広い領域が震度6弱以上の強い揺れに見舞われる可能性を指摘している.しかし,本断層帯の長期評価を行う上で最も重要な断層活動性のデータは不足しているほか,強震動予測を行う上で重要な震源断層面の形状や盆地の構造を推定するための反射法地震探査をはじめとする地球物理学的手法による探査は十分に実施されていない.このような課題を解決するために,2022年度から3ヵ年で「森本・富樫断層帯の重点的な調査観測」(研究代表者 岩田知孝・京大防災研教授)が開始された.このうち,サブテーマ1.1「活断層の詳細位置・形状・活動性解明のための調査」を担当し,断層帯の変動地形解析および深部構造探査を実施した.