4.4.2 総合観測室

担当教員 小原一成(教授,併任),篠原雅尚(教授,併任),大湊隆雄(教授,併任),酒井慎一(教授,併任)
技術職員 阿部英二,秋山峻寬,安藤美和子,藤田親亮,橋本 匡,増田正孝,宮川幸治,西本太郎,佐伯綾香,芹澤正人,田中伸一,八木健夫,渡邉篤志,辻 浩(小諸地震火山観測所)

平成22年4月の地震研究所における改組により,これまで個々の研究室に配属されていた技術職員のうち,主としてフィールドで観測研究の支援にあたる技術職員を総合観測室に集め,技術者集団として組織的に様々な観測支援依頼に対応し,研究所全体の観測研究をより高度化することを目的として体制を変更した.総合観測室では,従来から行ってきた観測開発基盤センター所管の観測機材の維持・管理や,地震・地殻変動・火山・強震・電磁気の観測所及び観測網の保守,データの処理や管理に加え,所内の他センター・部門が実施する観測研究の支援を行うようになった.更に,地震研究所が「地震・火山科学の共同利用・共同研究拠点」として,地震・火山研究分野における全国の大学・研究機関の中核的役割を担っていることから,全国の大学・研究機関による地震・火山の合同観測における観測支援やそれに利用する観測機材の貸出・管理・維持を行っている.
観測網や観測所の維持・管理業務については,それに従事する多くの技術職員が平成23-24年度に退職を迎えたが,順調に現世代の技術職員への引き継ぎが行われ,現在に至っている.更に,これまで研究室ごとに観測機材を管理していた非効率なシステムの改善を目指して全所的に観測機材を管理できる「機材管理システム」の構築や,全国の大学で地震データを共有する仕組みを支援する「データ流通・収集・処理の高度化を目指した作業部会」を技術職員が立ち上げ,業務改善に向けて自主的に励んでいる.
今後は,新たな研究の方向を見据えて,既存の観測所や観測網の整理・再構築を行い,学術の進展に従い,より柔軟な技術支援を実現できる体制を目指す必要がある.一方,研究活動の発展に伴って,技術職員の業務量が年々増加の一途をたどり,支援業務は概ね順調に行われているものの,技術職員の業務過多が深刻化しつつある.また,2020年に始まった新型コロナウイルス感染拡大は,消長を繰り返しながら継続しており,感染対策にも留意しながら業務を進める必要がある状況は今後も長期間続くと考えられるため,研究所の将来計画とも連動して,研究支援業務の内容・量を大幅に見直す時期に来ている.

主要な活動:

(1)陸域における地震/地殻変動観測研究の支援

  • 各観測所の庁舎維持管理
  • 各観測所データシステムの保守・記録の整理・保管
  • 定常地震及び地殻変動観測点の保守
  • 各観測所の地震・地殻変動データの収集状況及び機器動作状況の確認
  • 定常地震観測点・地殻変動観測点におけるデータ品質管理・処理
  • データ流通/収集/監視に必要なサーバ等の構築や保守
  • 地殻変動データの一次処理と共同研究利用者への提供
  • 四国南西部,九州東部における広帯域地震観測支援・保守・データ監視
  • 四国・東海に展開された臨時広帯域地震観測網の現地保守・観測点撤去・機材管理支援
  • 茨城県及び福島県域のオフライン稠密臨時観測支援
  • 茨城県および福島県域の準定常地震観測点の保守・データ監視
  • ひたちなか柏崎側線の臨時観測支援
  • 谷根千臨時地震観測点の設置・保守
  • 弥彦観測所の観測坑の閉鎖と地震観測点の移設準備
  • 内浦観測坑の閉鎖にむけた準備
  • 油壷地殻変動観測所の観測機器の移転の準備
  • 筑波地震観測所観測室の解体にむけた準備
  • 民間企業施設内の臨時地震観測点の撤収
  • 石川県珠洲市における臨時地震観測支援
  • 大井川上流部における臨時観測点の設置

(2)海域観測研究の支援

  • 自己浮上式海底地震計・圧力計の組立・解体
  • 自己浮上式海底地震計・圧力計の機材整備
  • 釜石海底地震計・津波計観測施設の維持・管理
  • 日本海海底地震観測所の維持・管理
  • 東北・千島沖および日向灘における地殻熱流量観測支援
  • 青森東方沖での自己浮上式海底地震計を用いた海底地震観測支援
  • 宮城沖での自己浮上式海底地震計を用いた海底地震観測支援
  • 紀伊半島沖での自己浮上式海底地震計を用いた海底地震観測支援
  • 南西諸島沖での自己浮上式海底地震計を用いた海底地震観測支援
  • 房総沖での自己浮上式海底圧力計を用いた海底地震観測支援
  • 日向灘での自己浮上式海底地震計を用いた海底地震観測支援
  • 日本海での自己浮上式海底地震計を用いた海底地震観測支援
  • 日本海でのエアガンとハイドロフォンストリーマを用いた反射法屈折法地震探査支援
  • 三陸沖光ケーブル式海底地震観測システムの未使用光ファイバを用いたDistributed Acoustic Sensing計測支援
  • 三宅島に流れ着いたガラス球OBSの回収

(3) 火山観測研究の支援

  • 浅間山,伊豆大島,霧島山の火山観測所の維持・管理
  • 火山定常観測網(浅間山,伊豆大島,富士山,霧島山)の維持・管理及びデータ処理
  • メタル回線を使用している各観測点の光回線への切り替え
  • 浅間山および霧島山における空中電界変動観測支援
  • 伊豆大島における臨時観測点の新設支援
  • 伊豆大島における地磁気絶対観測
  • 伊豆大島における海陸合同比抵抗構造探査支援
  • 富士山における臨時地震・空振観測支援
  • 三宅島における臨時観測点の保守支援
  • 父島における空振観測支援
  • 西之島における火山観測の準備
  • 無人航空機による火山観測支援およびマルチコプタの管理

(4) 電磁気観測支援

  • 八ヶ岳地球電磁気観測所の維持・管理
  • 八ヶ岳地球電磁気観測所における機器保守ならびに基準観測支援
  • 伊豆・東海地磁気観測点の観測点維持・管理・廃止
  • 北関東におけるMT観測支援
  • 南鳥島における地磁気絶対観測支援

(5)強震観測支援

  • 定常強震観測網及び観測設備の維持・管理・廃止・リアルタイム化
  • 油壷地殻変動観測所解体にともなう強震油壷観測点の移設にむけた準備
  • 共同強震観測網の観測支援
  • 強震観測データの回収、整理及びWebサーバでの公開
  • 強震観測データベースWebサーバのミドルウェアアップデート
  • 強震観測事業推進連絡会議への強震年報ならびに強震速報への掲載データの提出

(6)その他の国内観測・実験支援

  • 桜島と伊豆大島における絶対重力測定支援
  • 松代地震観測所の重力計保守の支援
  • 箱根・南足柄アレイ観測機材貸出および観測支援
  • 四国東部緻密地震観測の観測機材準備とデータ処理支援
  • 石川県珠洲市における稠密アレイ地震観測
  • 地震研究所及び東大赤門に設置されたIT強震計の保守支援
  • ミューオンによる跡津川断層透視のための観測準備作業
  • レーザー伸縮計を用いた歪観測
  • 石垣島におけるサンゴマイクロアトールの試料採取
  • 先島諸島で採取したサンゴマイクロアトールの試料整理と喜界島サンゴ礁科学研究所への輸送支援
  • 南海トラフ海底地震津波観測網(N-net)開発のための鋸山観測坑内試験支援

(7)国外における観測研究支援及びその関連業務

  • ニュージーランドでの自己浮上式海底地震計を用いた海底地震観測支援
  • メキシコでの自己浮上式海底地震計を用いた海底地震観測支援
  • チリでの自己浮上式海底地震計を用いた海底地震観測支援
  • ネパールに構築したオンライン地震観測網の技術移転支援
  • ペルーに供与する地震観測装置の試験・輸送及び技術移転支援
  • マリアナ東方沖海域でのBBOBS・OBEMを用いた観測アレイ構築支援

(8)観測機材の維持・管理業務

  • 共同利用・共同研究拠点機能としての観測機材貸与(観測機器の点検・準備・発送)
  • オンライン地震計及び地震観測システムの維持・管理,貸出
  • オフライン地震計及び地震観測システムの維持・管理,貸出
  • 電磁気機材及び観測システムの維持・管理,貸出
  • 機動強震観測システムの整備,維持・管理,貸出
  • 本所及び観測所の公用車の維持・管理
  • 機材管理システムの維持・管理・運用

(9)その他

  • 地震計博物館・一般公開・ラボツアーに対する支援
  • 研修運営委員会業務
  • 技術研究報告編集委員会業務
  • 一般公開WG業務
  • CERT委員会業務
  • 部屋割検討委員会業務
  • 地震火山災害予防賞選考委員会業務
  • 百周年記念誌編纂準備WG業務
  • 報道取材(NHK・読売新聞など)対応
  • 広報アウトリーチ向け動画撮影への協力