3.4.3 深層学習による地面と建物の長周期地震動の即時予測

大地震による長周期地震動の即時予測の実現に向け、震源近傍の地震観測データから、遠地の平野の長周期地震動の揺れ波形を機械学習 (Temporal Convolutional Network; TCN)モデルに基づき即時に予測するシステムを開発した。長周期地震動のレベル(長周期地震動階級など)に加えて、揺れの波形を予測することで、大振幅かつ長い継続時間を持つ長周期地震動による構造物の影響と被害の予測が可能となる。実験では、2011年東北地方太平洋沖地震の前の期間に日本海溝沿いで発生した60個の大地震における、福島地点の強震観測波形と横浜地点の地震波形の関係を学習した。そして、学習済みTCNモデルを用いて東北地方太平洋沖地震の本震と、その後に発生した日本海溝沿いの大地震における横浜地点の地震波形を予測した。予測結果と実際の観測波形との一致度を、応答スペクトル、地震動継続時間、波形エンベロープの相関係数の観点から評価し、プレート間地震、アウターライズの地震、内陸地震など多様な震源とメカニズムを持つ大地震の予測性能を確認した。なお、TCNモデルの訓練はGPU計算により数分で完了し、学習済みTCNモデルを用いた予測は、CPU計算で瞬時に実行可能である。地震発生からの時間経過と震源近傍での観測波形の取得状況に合わせて予測更新を短時間で繰り返し行うことで、予測精度と猶予時間のトレードオフの問題が解消できる。さらに、地面の揺れと高層建物の各階の揺れの関係を学習したTCNモデルによる2段階の予測により、地面の揺れのみならず建物の各階の揺れの予測システムへの拡張を行った。