中央海嶺下の部分溶融によって、最上部マントルに枯渇層が形成される。この枯渇マントルは、重い鉱物や水がメルトに取り去られるために、溶ける前のマントルに比べ低密度・高粘性であることが知られている。そのため詳細な枯渇度の空間分布を知ることは海洋プレートの構造やダイナミクスを考える上で非常に重要である。しかし従来の研究の多くは、中央海嶺を含む2次元的な断面における枯渇度変化のみに焦点を当ててきた。本研究では数値モデリングを用いて中央海嶺-トランスフォーム断層系における3次元的な枯渇度分布を予測した。その結果、(1)枯渇度は一般的にプレート拡大速度と共に増加すること、(2)トランスフォーム断層と断裂帯の下で低枯渇度となり、その傾向は低プレート拡大速度・長いトランスフォーム断層を考慮した場合に顕著であること、(3)脆性破壊を考慮すると海嶺軸に平行な方向の枯渇度変化が小さくなること、が明らかになった。またトランスフォーム断層の長さによる枯渇度の変化はプレート拡大速度が低い時ほど大きいことから、深海性かんらん岩の組成が低プレート拡大速度でばらつく原因の1つとしてトランスフォーム断層の長さが挙げられる。