(a)南アフリカ鉱山における半制御地震発生実験
南アフリカの金鉱山の地下深部の採掘域周辺に多数の高感度微小破壊センサを設置し,半径100m以上の範囲にわたってM–4以下という数cm程度の微小破壊までを検出・位置標定する,世界でも例をみない試みは,自然地震では観測されたことのない,既存弱面への極端な地震活動の集中や,プレート境界のそれにくらべて極端に高い効率で発生するリピーター活動など様々な発見をしてきた.観測は既に終了したが,東北大・立命館大と協力して,センサ設置孔から採取されたコアを用いた応力測定によるサイトの応力場の推定を行っている.
(b)合成開口レーダーを用いた大地震にともなう地殻変動の計測
地震現象は断層すべりの結果として発生し,ある程度以上の規模の地震であれば,計測可能な大きさの地表変位が観測される.断層面は平面ではなく,多くの場合曲がりや分岐などをともなう.合成開口レーダーの観測は空間分解能が10 m程度と高いために,そのような複雑な断層運動を詳細に観測することができる.本研究では,2023年2月に発生したトルコ・シリア地震(Mw 7.8及びMw 7.6)にともなう地表変形を,合成開口レーダーを用いて観測した.この地震による地表変形は非常に大きいために,一般的な干渉解析では特に断層近傍での変形場を再構築することができなかった.そのため,ピクセルオフセット法・バーストオーバーラップ干渉解析など,さまざまな手法を用いて地震にともなう3次元的な変位場を再構築することに成功した.得られた変位場は,断層すべりの空間的な不均質が断層形状によって強く支配されていることを示唆する.
(c)LiDARによる地形計測の試み
近年,自動運転車の開発競争に伴い,近赤外線レーザーを用いたLiDAR測距装置の高精度化・低価格化が進んでいる.具体的には,測距可能距離500 m・測距精度± 2 cm・広視野角・高サンプリングレート(~10 Hz)程度の製品が安価に手に入る状況となっている.こうした製品を適切に用いることで,(1)高速・簡便な地形計測,(2)火口などの地殻変動のリアルタイムモニタリング,(3)地表断層の検出・記載,といった様々な研究が可能になると期待される.本年度は,Leishen社の車載用LiDAR(Terminator 1-400)を調達し,大学構内のおける測距分解能の評価,火山火口内でのテスト観測(伊豆・大室山),リアルタイムに変化する地形(海水面・火口内の湯だまり等)での点群映像撮影などに取り組んだ.