日三浦半島断層群(主部/武山断層帯)は,三浦半島を横断して複数併走して分布する,長さ約11 km以上,北西走向の右横ずれ主体の断層帯である.断層群主部を構成する衣笠・北武断層帯,武山断層帯は,神奈川県横浜市・横須賀市など首都圏近傍に位置するA級活断層として,従来から注目され,数多くの調査研究が行われてきた.既往の調査研究の結果得られた断層帯の活動履歴や平均変位速度などの活動性データに基づき行われた長期評価では,今後30年以内に地震が発生する確率が国内の主要活断層帯の中で高い部類であり,特に武山断層帯は今後30年以内の発生確率が6-11%と非常に高くなっている.また,強震動予測では,武山断層帯が活動した場合,震源断層の直上にあたる首都圏南部の広い領域が震度6弱以上の揺れに見舞われ,震度6強のり災人口が約13万人と見積もられるなど,甚大な被害をもたらす可能性が指摘されている.しかし,一方,断層帯の長期評価で採用された平均変位速度の幅が大きく,信頼性が高くないこと,断層帯が相模湾・浦賀水道の海域に達している可能性があり,正確な断層長が不明であることなど,武山断層帯の長期評価には重要な課題があることが指摘されている.また,武山断層帯をはじめとする三浦半島断層群はフィリピン海プレート上面のメガスラストと近接し,相模トラフで発生する巨大地震との連動の可能性があることから,断層帯とフィリピン海プレート上面の構造的な関係を解明することが望まれる.加えて,強震動予測を行う上で重要な震源断層面の形状や断層帯を含む地下構造,近接する複数の断層帯の構造的関係を推定するための反射法地震探査等の地球物理学的手法による構造探査や物理探査は,三浦半島断層群においてこれまで十分に実施されていない.このような課題を解決するために,2023年度から3ヵ年で「三浦半島断層群(主部/武山断層帯)における重点的な調査観測」が開始された.このうち,サブテーマ1.1「活断層の詳細位置・形状・活動性解明のための調査」を担当し,断層帯の変動地形解析および陸域の深部構造探査・海域音波探査を実施した.