石川県能登地方で継続していた群発地震活動の中で,2023 年 5 月に発生した Mj6.5 (Mw6.2) の地震と,2022 年6月に発生した Mj5.4 にともなう余震活動の高精度な地震カタログを作成した.その結果,2つのイベントの余震は,南東約 45 度の傾斜面に沿って発生していることが分かった.Mj6.5の地震は,最初,2022年のMj5.4地震で破壊されたのとほぼ同じ断層を破壊し,その後,浅部まで南東傾斜の断層面に沿って沖合まで伝播したことが明らかになった.また,Mj6.5の地震直後の余震活動域は,断層浅部もしくは沖合に向けて時速約20 kmという速い速度で拡大を示した [図3.5.1].Mj6.5の地震の発生から約7時間後に発生したMj5.9の地震直後にも,同様な断層浅部に向かう高速な余震域の拡大が確認された.余震域の拡大は,本震の動的破壊によって破砕した浸透性の高い断層帯に沿った地殻流体の上昇によって引き起こされた可能性が考えられ,断層バルブモデル挙動と解釈できる.
地震活動モデルの高度化を目的とし,ハイパーカミオカンデの建設にともなう世界最大級の大空洞掘削工事によって生じる応力場の時空間変化と誘発地震活動の高精度な把握を進めている.2022年9月から,高感度地震計(34台)をハイパーカミオカンデの建設サイト直上に高密度に展開し,連続波形記録の取得を継続している.

図3.5.1 2023年5月のMj6.5の地震発生直後に見られた余震域の拡大の様子.(a)断層傾斜方向の時間変化,(b)断層深さ方向の変化,(c)地震観測点N.YGDH(Hi-net)で観測されたエンベロープ波形(赤線)と検出された地震イベント(青色星印)