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3.1 Division of Theoretical Geoscience

3.1.2 大気・海洋現象が引き起こす固体地球の弾性振動現象

大量の地震計・気圧計・水圧計などのデータを丹念に解析し,ノイズと思われていた記録の中から新たな振動現象を探り当て,その謎の解明を目指している.その際,大気-海洋-固体地球の大きな枠組みで現象を捉える事が重要である.

(3-1) 脈動実体波に関する研究

脈動実体波を全球的に検出するため,新たにauto-focusing法をを開発した.この手法では,波面曲率とスローネスの情報を用いるため,震源の重心位置と外力を精度良く推定することが可能となった.この方法を2004年から2020年までの日本国内の約780のHi-net観測点の地震記録の鉛直成分に適用した.また海洋波浪数値モデルに基づく合成CSFカタログとの比較し,地震波のS/N比が検出を制約するものの,時間的・空間的パターンは概ね一致している事が分かった.例外的に、海洋波浪モデルはカーペンタリア湾の重要な活動を説明できないことも明らかにした.2023年度には,新たにS波脈動の系統的な検出を行い,その励起メカニズムについて議論した.

本研究は,遠く離れた嵐によって励起された地震波を使って嵐直下の地球内部構造が推定で きる可能性を示している.地震,観測点ともに存在しない海洋直下の構造を推定できる可能性 を意味し,地球内部構造に対して大きな知見を与える可能性がある.

脈動実体波を用いた観測点下の深部構造推定のため一般化したレシーバー関数解析法を開発した.解析にはHi-net観測点691点の上下動・水平動の速度計記録を利用した.昨年度作成した脈動実体波のカタログに対して一般化したレシーバー関数解析手法を適用した.得られた全レシーバー関数にアレー解析を適用したところ日本列島直下のマントル不連続面でのP-s変換波(P410s/P660s)の検出に成功した.この結果は、脈動実体波の利用により地震活動とは独立に観測網直下のマントル不連続面を検出できることを示唆している.

(3-2)海洋島の地震計記録から海洋外部重力波活動を推定する

海洋島に設置された広帯域地震計のノイズレベルを解析してみると,しばしば周期100秒から数100程度のブロードなピークが観測される.原因として海洋外部重力波起源だと考えられているが,定性的な議論が中心となっている.最近,津波(物理的には海洋外部重力波と同一の減少)の伝搬にともなう海洋島の弾性変形(Nishida et al.,2019)の定量的な評価できろことがわかってきた.しかし津波は物理的には外部重力波であるが,平面波を仮定していたため,そのままではその活動の見積もりに使うことは出来ない.そこで,津波に対して開発した手法をランダムに励起された海洋重力波に対して拡張し,海洋外部重力波の定量的な議論の可能性を示した.

3.1.1 地震発生場の研究

(1-1)地震のOFCモデルに現れる余震領域の拡大現象

地震発生のセル・オートマトンモデルあるOlami-Feder-Christensen(OFC)モデルは、地震発生頻度のべき乗則(Gutenberg-Richter則、その指数b値)と、余震に関する統計的性質(大森則、その指数p値)が同時に現れ、地震のマルチスケール性理解のための統計モデルとして用いられてきた。しかし、余震の定義と統計的性質については不明瞭な点が残る。従来の定義は、ad-hocに「あるイベント震央と本震震央の距離が一定値以下のもの」とし、余震でない地震も集計されている可能性がある。 本研究は、「OFCモデルで自然に定義される領域」として新たな余震領域の定義を提案する。第一の定義では、本震の破壊領域とその最近接要素に含まれる地震を余震とし、第二の定義では、余震の余震も余震とみなす。これら二つの定義による余震の統計的性質を数値実験により調べ、第二の定義は余震領域のより良い指標をとなることを示した。

3.1 数理系研究部門

教授 西田 究(部門主任)
准教授 亀 伸樹
日本学術振興会特別研究員 小野寺圭祐
外来研究員 石井憲介
大学院生 加藤翔太(D3),正本義宗(M2),大谷 哲人(M1)

本部門では,地震や火山活動およびそれに関連する現象を理解するために,数学・物理学・化学・地質学の基本原理に基づく理論モデリングの研究を行っており,その内容は多岐にわたる.