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2.6 Volcano Research Center

西之島における近年の噴出物の全岩化学組成(SiO2およびMgO含有量)の時間変化.白抜きシンボルは降下火砕物,それ以外は溶岩.

3.6.8 実験・理論,シミュレーション,地質学的手法に基づく火山の基礎研究

(1)噴火のダイナミクスの解明を目指した実験と理論研究

 マグマ破砕過程を「粘弾性流体の破壊現象」と位置づけ,定量的モデル化に向けた粘弾性構成方程式の構築と数値計算手法の開発を進めた.単純なマクスウェル型の粘弾性を示す光弾性物質を用いた変形・破壊実験を行い,加速を伴う3次元の変形場の中で,流動から破壊へと遷移する様子を,光弾性を利用した弾性歪の可視化を含めて観察した.また,気泡の膨張に伴う流体の破壊と流動挙動について,この粘弾性流体と降伏強度より小さい応力下で弾性を示すジェル状流体の比較を行った.気泡への気体供給速度を増加すると,粘弾性流体は脆性破壊を生じたが,ジェル状流体は流動速度が増加した.また,それぞれの流体の表面で気泡が破裂するときの音波発生の条件について系統的に実験を行い,制約を与えた.上記の流体のレオロジーと,水蒸気噴火の噴出物である火山泥のレオロジーを比較したところ,火山泥はジェル状流体に近い性質を持っていることが分かった.そこで新たに固体粒子と粘性流体からなる懸濁流のレオロジーおよび破砕過程を調べる実験に着手した.
 爆発的な大規模噴火が発生すると,噴出ジェットの反力が「シングルフォース」として地震波を発生し,広域で観測されることがある.このシングルフォースの大きさと噴出率の関係を調べるモデル実験を行い,既存のモデルを修正する必要のあることを示した.

(2)火山噴煙ダイナミクスのシミュレーション研究

 爆発的火山噴火で見られる噴煙柱・火砕流の噴煙ダイナミクスと,火山灰輸送・堆積プロセスの解明を目指し,数値モデルの開発とそれを用いた大規模シミュレーション研究を進めている.火山灰は噴煙によって上空へと運ばれ,噴煙から離脱すると大気風によって広範囲に移流・拡散する.そのため,噴煙の上昇・拡大が火山灰輸送を支配する噴煙ダイナミクスとそれに続く大気風による移流拡散,それらの結合が降灰予測のために解明すべき重要な問題となる.噴煙ダイナミクスの問題に関し,様々な噴出条件と大気条件を与えた3次元噴煙シミュレーションを実施した.条件によって噴煙最高高度・噴煙パターン・傘型噴煙拡大率などが変化する様子を捉え,一般的に用いられている簡易な噴煙1次元モデルと比較した.3次元シミュレーションと1次元モデルでは,噴煙最高高度の噴出率依存性が系統的に異なる様子が確認された.
 火山灰の移流拡散問題に関しては,火山灰トレーサー計算と噴煙ダイナミクス計算をカップリングした数値シミュレーションを実施した.大気の風速が対流圏圏界面で最高速度を持つような現実的な風速プロファイルを与えたシミュレーションを行った.この計算によって,大気中の火山灰粒子分布や地表での堆積物分布の基礎データを取得することができた.また,噴煙ダイナミクスにおける火砕流粒子の影響を評価するため,固体・気体2相流のモデル開発を進め,火口付近で急減圧する領域では含まれる火砕物の粒径と体積分率によって流速が変化することを捉えた.

(3)超巨大噴火に関する研究

 南九州鬼界カルデラの活動履歴や7.3 ka鬼界アカホヤ噴火の推移を解明するための研究を進めている.とくに従来アカホヤ噴火の前駆的活動により形成された可能性が指摘されていた長浜溶岩(流紋岩質溶岩)やそれ以前の活動の実態を明らかにするために,2018年にボーリング掘削を実施した.それにより得られた試料の解析を進めた結果,長浜溶岩は深度11-190 m(水深130 mに相当)に存在し,その直下の深度190-230 mには貝殻を含む粗粒砂質層や複数枚のテフラ層を主体とした海成の地層が存在することがわかった.長浜溶岩直下の砂層に含まれる複数の貝殻の14C年代測定を行ったところ,7000〜8300 calBPの年代値が得られた.これにより,長浜溶岩の活動が鬼界アカホヤ噴火に先行する活動であったことがはじめて地質学的・年代学的に明らかになった.長浜溶岩およびその下位のテフラ層(12-15 ka)とアカホヤ噴火の岩石学的関係,大規模噴火に先行する溶岩流活動の役割など,巨大噴火を起こしたマグマシステムとその進化について研究を進めている.また,アカホヤ噴火前半のプリニー式噴火フェーズの層序の細分化を行うことで,従来よりも詳細な噴火推移と噴出率の変遷が明らかになった.

3.6.7 新たな観測手法の開発

(1)火山の空振モニタリング手法の開発

火山噴火に伴う空振の波形や振幅を正確に計測するため,新しい空振計を開発している企業や工学系の研究者らと協力し,小型・低消費電力マイクロフォンやMEMSセンサー,高精度気圧計の比較試験,火山地域における長期評価試験,国立極地研究所の低温室における低温耐性試験を行い,必要な改良を進めている.

より効率のよい空振アレイ観測の方法として,従来のアレイ観測よりも一桁空間スケールの小さい,10メートルサイズの極小規模アレイの開発を行い,さらに,地上2~4m程度の高さに1要素加えることによって,方位角だけでなく仰角の分解能が向上させられることを示した.イタリアのストロンボリ火山,霧島火山硫黄山周辺,富士山において,極小規模アレイの実験を行い,微弱な信号の検出や,複数の音源からの空振シグナルを分離することに成功した.本研究の手法は,噴気地帯や複数の活動的火口を有する火山の監視や観測に役立つものと考えている.

(2)無人ヘリやドローンを活用した火口近傍観測システムの開発と応用

活動的な火山において,観測者を危険にさらすことなく火口周辺での様々な観測を実施することを目的として,2008年から無人ヘリを用いた火口近傍観測システムの開発を進めている.産業用無人ヘリを火山観測に利用するため,様々な火山での飛行実績を積むとともに,観測に必要な様々な周辺機器,静止画・動画撮影用の機器を搭載するための専用雲台,地震計やGPS観測装置をヘリから降下設置するウインチ,無人ヘリ設置用の地震計モジュール,GPSモジュールなどの開発を進めてきた.口之永良部島では2015年4月に火口近傍の4箇所に地震計を設置した.この地震計は2015年5月の噴火で失われたが2015年9月に再度5点を設置した.観測データから2015年5月29日の噴火に先行して火口近傍で地震が急増していたこと,単色地震も増加していたことがわかった.また,可視画像・熱映像・電磁気・ガス等の多項目データから,活動の大きな変化も捉えられた.火口に接近して得られたガスの分析により脱ガス時の見かけ平衡温度が推定された.2016年6月には,火口から1.5km内が警戒範囲となっている西之島において,気象庁と共同で無人ヘリ(船上より離発着および制御)により活動・噴出物の観察および岩石試料の採取を行った.また,2009年から2017年にかけて,桜島山頂付近に地震計およびGPS受信機を設置した.桜島山頂の地震計は2021年2月末時点も稼働を続けている.

無人ヘリによる空中磁気測量も精力的に行っている.2011年霧島新燃岳噴火後の山体の帯磁状態の変化を把握するため,2011年5月,11月,2013年11月,2014年10月,2015年11月,2017年11月,2018年11月の計7回,新燃岳およびその西側,およそ3㎞四方の領域において,繰り返し空中磁気測量を実施した.測線間隔および対地高度はおおよそ100mで一定として測定フライトを実施した.プログラムした航路に沿って正確に測定飛行できることは繰り返し測量にとって大きな利点である.解析の結果,新燃岳火口内の溶岩は平均として4.0 A/m帯磁したと想定すると観測された全磁力データをよく説明することが判り,火口に蓄積された溶岩が熱拡散過程で順調に冷却している様子を明確にとらえることに成功した.また,三宅島においては,今後の火山活動を把握するための基礎資料とするために無人ヘリを用いた詳細な空中磁気測量を2014年5月と2016年11月に実施し,2017年度に解析を進めた結果,山体北側で負,南側で正の変化を検出した.その後,2019年6月にも実施している.2018年1月 に噴火した草津白根山・本白根山においても無人ヘリによる空中磁気測量を実施し,過去有人機により得られたデータとの比較解析を進めている.
伊豆大島カルデラ内で実施した無人ヘリ空中磁気測量のよる磁化構造推定を行った結果,1986年噴火B火口列下は低磁化であった一方,A火口列を挟んだ北東ー南西の走向に高磁化の領域が検出された.前者は噴出により磁化を失った,あるいは,残留している未噴出物があるとみられる.後者は未噴出マグマが浅部で固化したものと考えられ,これは1986年B火口列噴火と同様式の噴火を将来引き起こす可能性を内在していることを示唆するものであり,今後の活動推移を見極めるための重要な情報となった.

電動モーターを動力源とするいわゆる「ドローン」の性能が近年大幅に向上し,火山観測において活用できるレベルに達しつつある.火山センターではドローンを活用した火山観測も進めている.新燃岳においては,ドローンによる火口内への接近撮影を実施し,西之島においては船上から飛ばしたドローンによる画像撮影と試料採取を実施した.霧島山・硫黄山ではドローンによる繰り返し空中磁気測量の活用実験を開始し,2019年に複数回の測定を実施した.その結果,無人ヘリよりも低廉かつ機動的に観測を実施できることが確認できた.これを受けて,三宅島においてもドローンによる空中磁気測量を実施した.磁化構造推定を行った結果,2000年カルデラ縁のみが極めて弱磁化であることがわかった.これは2000年噴火時にカルデラがその形状を保ったままピストン状に沈降したことで,カルデラ縁のみが磁化を失ったと考えられる.また,磁化の時間変化の検出に成功し,火口縁および南側主火口とスオウ穴火口下が消磁傾向を示していることがわかった.このことは火口縁および火口下のクラックにより熱量が効率的に上方へ輸送されたことを示しており,次期噴火活動もこの弱点を通じて起こる可能性が高いと考えられる.

無人ヘリは広域をカバーする測量に適しているが,経費や機動性にやや問題がある.一方,電動ドローンの飛行性能は年々向上しており,観測対象によっては無人ヘリに置き換える観測手段となり得る.今後は,観測対象に応じて両者を使い分けることになろう.

(3)衛星技術を活用した火山活動の把握

ひまわり8号とJAXAのしきさい(GCOM-C/SGLI)の赤外画像を用いてアジア太平洋域の主要活火山のリアルタイム観測を行うと共に,これを基盤データとし各種高分解能画像・現地観測データ等を組合せ,噴火推移・噴火プロセス解明に関する研究を進めている.この一環として,高頻度観測が可能なひまわり8号の熱異常データを用いた噴出率推定方法の開発を行った.ひまわり8号の1.6-㎛画像での熱異常と噴出率の関係を検討し,両者の間に高い相関関係があり,この回帰式が,Y = 0.47 X(Y:噴出率 106 m3 day-1 ,X:輝度値 106 W m-2 sr-1 m-1 )と求められることを示した.この式を用いて,西之島2019-2020年噴火初期の噴出率を推定し,この時の噴出率は2013-2015年西之島噴火における平均噴出率より2-3倍高かったことを明らかにした.一方,しきさいのSGLI画像は分解能が250 mと比較的高く,溶岩流の拡大や火砕流の発生等,噴火状況の変化を高頻度で捉えることができる.このSGLI画像により,カムチャッカ半島に位置するシベルチ火山の2019年噴火の観測を行い,溶岩ドームの成長率が低い状態から急上昇する時,火砕流が発生していることを見出した.また,ジャワ島東端部にあるイジェン火山の火口湖の観測を行い,2019年5月中旬から6月にかけて湖水温が最高38℃まで上昇し,火山下のマグマあるいは熱水活動が活発化した可能性を示した.

Sentinel-5 Precursor搭載のTROPOMIを用いたSO2放出率の推定手法の開発を行った.この衛星は極軌道を周回しており,1日1回程度の頻度で大気中のSO2鉛直カラム量分布のデータが提供されている.このデータに,気象モデルの風向風速の解析値から推定される噴煙の輸送距離・輸送時間を合わせることで,放出率を推定するプログラムを開発した.この手法を,福徳岡ノ場2021年噴火や西之島の2021年噴火以降の活動に適用し,活動状況の把握を試みた.福徳岡ノ場2021年噴火では,初期の継続した噴煙活動のフェーズとその後のスルツェイ式噴火のフェーズで,SO2放出率は10,000 ton/day以上,最大75,000 ton/day程度だったものが,1,000 ton/day以下に急激に減少していく変動を把握した.西之島では2021年8月以降,検出限界(100 ton/day)以下から1,000 ton/day程度の値で増減を繰り返しながら推移していたが,2022年7月下旬より徐々に増加し,9月には3,000–5,000 ton/day程度に達した.10月の噴火時には,日平均で最大16,000 ton/day程度の値を記録した.噴火終了後も11月までは2,000 ton/day程度の値を維持している.今後,この手法を自動化し,上記アジア太平洋域のリアルタイム観測システムに組み込むことを行う.

3.6.1 火山噴火予知研究センターの活動の概要

 火山センターでは,火山やその深部で進行する現象の素過程や基本原理を解き明かし火山噴火予知の基礎を築くことを目指して,火山や噴火に関連した諸現象の研究を行っている.その基本的な研究方針は地震研究所の2009年サイエンスプランで掲げられた「火山活動の統合的解明と噴火予測」および科学技術学術審議会により2019年1月に出された「災害の軽減に貢献するための地震火山観測研究計画(第2次)の推進について(建議)」に基づいている.

 本センターは2004年度に「火山観測の将来構想」を作成し,その中で主たる観測対象とする火山を3つに分類し,a)観測網を強化し研究成果を上げるべき火山として,浅間山,伊豆大島の2火山を,b)研究成果が短期的には大きく望めないが,将来のために観測を継続・改良すべき火山として,三宅島・富士山・霧島山の3火山を,c)他機関が既に観測網を整備している等の理由で基本的には撤退する火山として草津白根山を挙げた.全国の火山噴火予知研究コミュニティーで了解を得つつ,この構想に基づいて順次更新・整備を進めてきた結果,浅間山・伊豆大島では多項目観測網の強化が進み,霧島山では広帯域地震観測網を火山体に集中することができた.富士山の観測は着実に継続しており,三宅島については次の噴火に備えた観測網の強化が進んでいる.草津白根山については撤退を完了した.2010年度以降は,観測所等の施設は観測開発基盤センターに移管されたが,同センターの火山担当教員との協力・共同の元に研究方針に沿った整備を進めている.2022年度には,主な観測対象火山のデータをリアルタイムで表示する新たなシステムを導入した.観測網の強化・整備は一段落したと言えるが,観測を担うことのできる人材が急速に減少しつつあり,現状の観測網をこれまでどおりに維持することは相当な困難を伴う.これは地震研に限らず全国的な傾向であり,国内の火山観測における大学の役割を見直す時期が来ていると考えられる.伊豆大島や三宅島等次の噴火が切迫する火山を念頭に置きつつ,新たな火山観測研究の将来構想を早急にまとめる必要がある.

 本センターの観測研究の対象となっている主たる火山の近年の活動は以下のとおりである.浅間山では2004年の活発な活動以降に大きな活動は無く,2008年,2009年,2015年,2019年に弱い噴火が発生したのみである.しかしながら,2019年8月に発生した小噴火は活動度が極めて低い状態で発生したものであり,気象庁の噴火警戒レベルは1であった.この不意打ちともいえる噴火は観測を継続する上で安全管理の問題に影響を及ぼしている.伊豆大島は顕著な活動は無いものの,マグマ蓄積を示す基線長の伸びは継続している.富士山では目立った活動は無い.霧島山・新燃岳では2011年1月26日に約300年ぶりの本格的な準プリニー式噴火が発生し,それ以降は活発な活動が継続している.新燃岳は2017年10月に再噴火し,翌2018年3月には山頂火口から溶岩が溢れて北西に流れ下った.爆発的な噴火活動は2018年6月まで続き,山頂火口を埋めた溶岩や西斜面の噴気孔からは今も噴気が立ち上る.霧島山・硫黄山では2018年4月に小規模な水蒸気噴火が発生し,噴気活動は消長を繰り返しつつ2023年中も続いている.伊豆・小笠原諸島の西之島で2013年11月から始まった噴火は,周辺の浅海を溶岩で埋め立て新しい火山島を作り出し,約2年の活動後一旦終息したが,2017年4月と2018年8月に再度活発化し流出した溶岩により西方と南方への拡大が進んだ.2019年12月には再度溶岩流出が始まり,2020年8月まで続いた活動により旧島部分は完全に埋まり,面積が大幅に増加した.2022年7月よりガス放出などの表面活動が再開している.2023年にも微弱な噴火活動があり,4月の活動では空振も確認された.

 本センターでは主たる観測対象火山以外についても様々な観測研究を行っており,新たな火山活動があれば国内外を問わず観測あるいは調査研究を実施している.西之島から約300km南の福徳岡ノ場海底火山は2021年8月にマグマ水蒸気爆発を発生し,噴煙高度が16kmに達した.また,国外では,トンガ王国のフンガ・トンガ=フンガ・ハアパイ海底火山が,2022年1月に巨大噴火を発生し,現地では降灰や火山性津波による大きな被害が発生した.その噴火に伴う地震や大気波動は世界中で観測され,また,大気波動による津波(気象津波)は日本にも被害や影響を及ぼした.これらの噴火を契機に,トンガ王国・フィジー共和国・バヌアツ共和国と共同で,広域に災害を及ぼし得る海域火山噴火の理解と監視を強化する研究を開始した.また,実験・理論,シミュレーション,地質学,物質科学的手法等に基づく火山の基礎研究も実施している.以下,火山毎および研究手法毎に,最近の主たる研究成果を紹介する.

3.6.5 霧島山

霧島山に関してはこれまでの本センターの研究により以下のような知見が得られている.

(1)噴火に関連する微動活動と地殻変動

 新燃岳における微弱な火山性微動の長期活動の解析を行った.2008年8月の水蒸気爆発以降の約8か月間微弱な微動がほぼ同じレベルで継続していたことと,2010年10月から2011年噴火に向けては,顕著に振幅の増加が進んだこと,2017年噴火の数か月以上前からも振幅の加速的増加が発生し,2018年噴火まで続いていることが明らかになっている.この微動の成長期は,深部マグマだまりの膨張を示す地殻変動も発生していること,その震源は新燃岳火口近傍の2 km以浅にあると考えられることから,噴火前の長期的なマグマ移動に伴う振動であると解釈される.また,2011年噴火の主噴火発生後の調和型微動については,非線形振動系を示唆する 特徴が抽出され,流体の流れが励起する振動であることが示されている.

(2)地殻変動観測とマグマ蓄積過程

 稠密なGPS観測網により,霧島新燃岳の2011年1月噴火に関与するマグマ溜りの位置や,噴火前の蓄積レート,噴火に伴う流出量,噴火後の再蓄積レートが詳細に求められている.また,2018年3月に発生した7年ぶりのマグマ噴火に先行する蓄積レートも求められている.このようにマグマ溜まりへのマグマ蓄積の時間変化を長期間にわたって精度よく捉えることで,マグマ蓄積と 噴火発生の関係が解明されつつある.

(3)火口近傍多項目観測による噴火過程の解明

 霧島山新燃岳の火口近傍で観測された広帯域地震計,傾斜計により,2011年噴火活動初期の準プリニー式噴火,マグマ湧出期,ブルカノ式噴火という異なる火山活動に伴う火道浅部に起因する傾斜変動を捉え,これらの火山活動に関連する火道浅部のプロセスに関する詳細な知見が得られている.また,2017年10月の再噴火発生から2018年のマグマ噴火までの噴火については,火口近傍の広帯域地震記録から抽出した傾斜成分の解析により,噴火に先行する膨張と噴火後の収縮の時定数が推定されている.

(4)微小地震活動

 火山性地震活動特性の把握のため,機械学習を利用した地震検出及び震源位置推定手法の開発を進めた.過去に様々な火山で観測された火山性地震の波形記録を教師データとした学習モデルを構築し,この手法を霧島山地震観測網の2008年以降の波形データに適用し高精度な震源カタログを得た.新燃岳や硫黄山浅部において微小な火山性地震が多数検出され,噴火に先行して火口浅部で地震活動の高まりや,b値の増加,低周波地震の増加が推定された.

(5)近年および歴史時代の噴火推移とマグマ供給系の解明

 新燃岳2017-2018年噴火の表面現象・噴火様式推移を,噴火直後の地質調査と火山灰の全岩化学組成分析,軽石の物性および組織分析にもとづき明らかにした.その結果,観測された噴火様式とその推移は,山頂火口直下の地質構造とマグマ上昇速度の影響を強く受けたことを明らかにした.また,16-17世紀えびの高原硫黄山噴火の噴出物分析を進め,浅部珪長質マグマ溜まりは新燃岳とよく似るものの,噴火時に混合した苦鉄質マグマは霧島火山群で最も未分化な組成を有することを明らかにした.さらに,新燃岳,御鉢,硫黄山,御池の噴出物について,全岩主要,微量元素,Sr-Nd-Pb同位体比組成分析を行った.その結果,前三者は同位体3元素それぞれについてほぼ同様の組成比を有することから共通の起源物質に由来すること,御池は前三者と異なり,地殻物質の混染の影響を強く受けた起源物質に由来することなどを明らかにした.新燃岳,御鉢,硫黄山の深部苦鉄質マグマが共通である可能性は,地球物理学的手法によりこれらの山体直下(深さ9-15 km)に広域に広がるマグマ蓄積領域がイメージされていることと矛盾しない.

3.6.4 富士山

富士山に関してはこれまでの本センターの研究により以下のような知見が得られている.

(1)地質・岩石学的データに基づく火山発達史

 深部掘削で得られた試料の岩石学的検討により,先小御岳火山,小御岳火山,富士火山はそれぞれ独自の化学組成上の特徴をもち,安山岩組成の小御岳から段階的に富士の玄武岩組成の火山へと変化してきたことが明らかになった.一方,古期後半のスコリア層のメルト包有物を主体とする解析から,富士山の浅部深さ4-6㎞付近には安山岩質の小マグマ溜りが存在し,深部の主玄武岩質マグマ 溜りから上昇したマグマとこの安山岩質マグマとが混合することによって富士山の噴出物が生じているとするモデルを提案した.さらに,新期のスコリア層の解析により,新期では安山岩質マグマ溜り内のマグマがやや分化し,よりSiO2に富む組成となっている可能性を指摘した.宝永の噴火で想定されているデイサイト質小マグマ溜りはこのような浅部マグマ溜り内のマグマがより分化し高いSiO2 量となったものと解釈される.この他,物質科学系研究部門が中心となって企画した富士山起源火山灰層のデータベース構築計画を同部門と連携して進めている.

(2)富士山深部の地震波速度構造の解析

 富士山においては,過去に発生した低周波地震の震源分布や岩石学的な考察から地下15-20km付近にマグマだまりがあると推定されていたが,地震学的手法であるレシーバ関数解析により,富士山周辺の数10kmまでの深さの地震波速度の不連続構造が明らかになった.その結果,富士山下40-60kmの深さに南北に沈み込む顕著な速度境界面があり,富士山直下でその境界面は不連続になっていること,また,富士山下で火山性の低周波地震が発生する地下10-20kmの領域の下およそ25kmの深さに顕著な速度境界面があることが示された.さらに,レシーバ関数と富士山周辺の表面波分散曲線を合わせて逆解析することで富士山直下の深さ約50km以浅のS波速度構造が明らかになり,富士山直下の深さ20kmから40kmの深さに大きなマグマ溜まりが存在する可能性が示されている.このような研究に加えて,富士山の各所にボアホール型を含む地震計,GNSS,傾斜計,歪計,全磁力計等を設置し,定常的な活動観測を行っている.

(3)富士山の雪崩観測

 富士山のような標高の高い火山では,冠雪期に噴火が発生した場合,融雪による大規模な泥流が発生する可能性がある.この現象は甚大な被害をもたらすため,監視技術の開発が必要である.山梨県富士山科学研究所と協力し,冬季の富士山という厳しい環境の中で効率よく監視を行うため,空振計の配置や解析手法を検討した.観測期間中には,多数の空振イベントが検出され,その時期や波形,発生位置から,小規模雪崩であると結論付けた.また,同時期に展開された地震観測網のデータを合わせて解析することにより,雪崩の性質を推定することのできる可能性を示した.また,温度プローブを用いた鉛直温度分布を計測することにより,降雪や融雪の時間変化を把握することが出来た.これらの結果を踏まえて,空振・地震・温度プローブ観測網の設計を行い,3回目の冬季観測を実施している.

(4)富士山の深部低周波地震活動について

 富士山深部深さ15km付近に発生する低周波地震について,2003年1月から2019年7月までの富士山周辺16観測点での連続地震波形記録に対してマッチドフィルター法を適用し,約6000イベントの低周波地震を検出した.これは気象庁一元化震源カタログの約3倍の数に相当する.検出された低周波地震活動の時系列に対して,地震活動を予測・評価するETAS(Epidemic Type Aftershock Sequence)モデルを適用した結果,2011年3月11日東北沖地震(M9.0)の4日後に富士山麓で発生した静岡東部の地震(M6.4)の後,低周波地震活動が活発化したことが明らかになった.また,活動レベルは静岡東部の地震前のレベルに戻っておらず,富士山のマグマシステムが変化したことが示唆される.

3.6.3 伊豆大島

伊豆大島に関してはこれまでの本センターの研究により以下のような知見が得られている.

(1)地震・地殻変動と広域応力場

フィリピン海プレート北縁にある伊豆大島では,フィリピン海プレートと日本列島のプレートが伊豆半島北縁で衝突していることにより,その周辺の広域応力場は,北西―南東方向に圧縮場,北東―南西方向に伸張場が卓越している.このように水平方向に伸張と圧縮の双方に大きな応力場が卓越する火山では,岩脈(ダイク)の貫入や側噴火(山腹噴火)がしばしば発生する.伊豆大島においても側噴火火口が圧縮軸方向に延び,山頂を中心に島内だけでなく,海底においても島の北西延長に火口丘がいくつかあり,それは静岡県伊東市沖まで続いている.前回の1986年の噴火では,大規模なダイク貫入により山腹割れ目噴火が発生し,一部の溶岩流が住居地域に近づいたため,全島民が避難する事態になった.伊豆大島のような火山島においては,カルデラ内にある山頂で噴火する場合と異なり,居住地近くで噴火を引き起こす山腹噴火の発生予測は火山防災上の大きな課題を抱えている.また,山頂噴火と山腹割れ目噴火の噴火様式の差は何が作るのかを解明することは火山学的にも極めて興味深い研究テーマであり,同様の地球物理学的環境にある三宅島,伊豆東部におけるダイク貫入現象も併せて研究を進めている.これまで,地震活動と地殻変動の同時解析から,これらの地域でのダイク貫入現象について多くの知見が得られている.

1986年11月の前回の噴火から既に30年以上が経過し,更にその前3回の中規模噴火から始まる一連の噴火活動の開始が1876年,1912年,1950年と36~38年間隔で規則的であったことから,次の噴火に近づいていると考えられる.伊豆大島と同様に,噴火間隔が比較的規則的で,山腹噴火も繰り返す三宅島との比較が重要であることから,2017年12月25日~26日に地震研究所共同利用研究集会「次の伊豆大島・三宅島の噴火について考える」を開催した.これを契機に,文部科学省委託研究「次世代火山研究推進事業」の中で三宅島でも機動観測を実施し,観測開発基盤センターと協力しながら,両火山を比較検討して研究を進めている.

(2)地震・地殻変動によるマグマ蓄積過程

伊豆大島では前回の一連の噴火活動(1986年11月~1990年10月頃)以降,1990年代半ばまで山体が収縮していたが,1990年代後半から山体膨張に転じ,その後は長期的には山体膨張が継続している.これは,火山の地下でマグマが蓄積していることを示している.2003年から地震観測網の高度化及びGPS観測網の構築を行い,地震活動及び地殻変動の時間変化が詳細に観測できるようにした.その結果,以下のような特徴が明らかになった.1)長期的にはマグマ蓄積が進み,山体膨張が進んでいるが,その中に1~3年間隔で収縮と膨張を繰り返している.2)マグマ蓄積の圧力源は,ほぼ同じ場所で膨張と収縮を繰り返していると推定され,伊豆大島カルデラ内北部地下約5kmの場所であると推定される.このような間欠的な山体膨張・収縮の原因,噴火へ至る過程の解明が課題である.地震活動と地盤変動の関連については,大変興味深い現象が見いだされており,それについては開発観測基盤センターの項で詳述する.常時微動を用いた地震波干渉法により2003年以降の島内地震波速度構造の時間変化を推定した結果,間欠的な山体膨張・収縮と時間的に相関した地震波速度の減少・増加が検出された.これは,膨張・収縮に伴い励起されたひずみ変化に対応した火山浅部の速度構造変化と解釈される.

(3)伊豆大島における比抵抗構造と電磁気観測

伊豆大島では,比抵抗ならびに全磁力等の電磁気連続観測を実施している.比抵抗連続観測は人工電流源を用いたCSEM法に基づくもので,火口の南および北東に2つの電流送信局と,火口周辺に5点の測定点を設置している.その結果,浅部から深部に向かって,高比抵抗-低比抵抗-極低比抵抗のおおむね三層構造からなることがわかった.また,連続観測により,帯水層上面の昇降によるものと考えられる年周変動が確認された.また,島内9点における全磁力連続観測からはここ数年,火口近傍の帯磁傾向の鈍化がみられる.なお,この他にも直流法比抵抗測定,地磁気3成分,ならびに,長基線電場測定の連続観測も引き続きおこなっている.

(4)伊豆大島における大規模噴火の推移とマグマ供給システム

伊豆大島では,これまでおよそ100~150年おきに大規模な噴火(噴出量1億トン以上)が発生している.これら歴史時代の代表的な大規模噴火について,地質学的,物質科学的研究を進めている.最新の安永噴火については,新たな層区分を提案するとともに,層序毎の岩石鉱物化学組成・組織の特徴を明らかにした.その結果,しだいに斜長石斑晶に富むマグマが噴出したことや,それに対応した噴火強度やマグマ噴出率(噴煙高度)の変化など,マグマの特徴と噴火推移の詳細が明らかになってきた.他の噴火についても同様の解析を進め,伊豆大島の大規模噴火の特徴や共通性,それらの原因を明らかにする研究を進めている.

3.6.6 その他の火山に関する研究

(1)西之島における噴火活動の把握

小笠原諸島の西之島は,2013年11月に海底噴火を開始し,2015年11月頃までに噴出した溶岩は旧島の大半を覆い,面積で2.7㎞2,噴出量は1.6㎞3に達した(第1期).2017年4月(第2期)および2018年7月(第3期)には活動が再び活発化して溶岩を流出したが,活動の規模は次第に低下し,一旦沈静化した.2016年10月と2019年9月には上陸調査を実施し,噴出物の調査と旧島上への地震・空振観測点の設置を行った.その後,2019年12月に再び活動が始まり,2020年8月まで噴火は続いた(第4期).2021年8月には小規模な噴火が起き(第5期),その後も顕著な噴気活動や変色水が認められるなど,やや活発な状態にある.火山センターでは関係者と協力しつつ,地質学と地球物理学の両面から火山活動の把握と西之島の成長プロセスの解明を目指して研究を進めている.

遠隔調査:2013年11月以降,西之島の成長過程を衛星画像に基づいて把握し,溶岩噴出率の推移等を明らかにしてきた.2016年6月の観測では気象庁の啓風丸の協力を得て,無人ヘリコプターによる観測を実施し,溶岩流の形態的特徴の詳細やスコリア丘の表面に発達した亀裂構造を観察,岩石試料採取を行った.また,第2期および第3期活動後にも,気象庁の凌風丸および啓風丸の協力を得てドローンによる地形観測,試料採取等を行い,それぞれの活動の概要を把握した.他の部門・センターとの共同研究では,西之島周辺海域に海底地震計を設置して,噴火活動に伴う振動を連続的に観測することに成功し,2015年から2017年にかけての噴火活動の推移を連続的に把握した.一方で,第2期の活動推移を明らかにするために,ひまわり8号赤外画像,ランドサットOLI,プレアデス,ALOS-2画像等の高分解能衛星画像を用いた解析を行った.この結果,第2期活動は2017年4月中旬から8月上旬まで続き,陸上と海面下を合わせた総噴出量は1.6×107 m3 ,平均噴出率は1.6×105 m3 /dayと推定され,当該期の平均噴出率は第1期と同程度かやや低いことが明らかになった.第4期活動についても衛星画像の解析を中心に噴火活動の推移を明らかにする研究を進め,2020年6−7月には過去最大の噴出率(106 m3 /day以上)を記録し,噴火様式が大きく変化したことを明らかにした.2020年12月には海洋研究開発機構と協力して,ドローンによる地形地質の調査,岩石試料採取を行った.島の面積や体積などの地形変化量を明らかにしたほか,噴出物の分析により,第4期活動ではマグマ組成が安山岩から玄武岩質安山岩へと変化したことを明らかにした.2021年の第5期以降についても環境省の調査への協力や新青丸を活用した遠隔調査(2022年1月)を行い,活動状況の把握に努めている.このような調査と並行して,活動状況の把握のために,Sentinel-5 Precursor搭載のTropospheric Monitoring Instrument(TROPOMI)を用いた二酸化硫黄(SO2)放出率の推定を行った.2021年8月以降,検出限界(100 ton/day)以下から1000 ton/day程度の値で増減を繰り返しながら推移していたが,2022年7月下旬より徐々に増加し,9月には3000–5000 ton/day程度に達した.10月には,明瞭な火山灰を含んだ噴煙が確認され,この灰噴火は10月中旬まで継続した.この間SO2放出率は,日平均で最大16000 ton/day程度の値を記録した.噴火終了後も11月までは2000 ton/day程度の値を維持している.
西之島から130 km離れた父島に設置した空振計と気象庁の地震計のデータを用い,相互相関解析から,西之島の噴火に伴う空振活動の把握を行っている.2020年の噴火以降鎮静化していたが,2022年10月から再び空振が見られるようになり,11月には噴火活動期と同程度の振幅の空振が父島で観測された.また,本年度,電力不足による欠測の問題を改善するため,低消費電力の機器に一新した.

上陸調査: 2015年秋以降の活動低下を受けて,2016年10月16日から25日にかけて西之島の火山活動と生物相の調査を実施した.上陸調査では,西海岸および旧島で地形・地質の調査および火山噴出物採取,地震・空振観測点の設置,噴火後の海鳥営巣状況の把握が行われた.また同航海中に,西之島周辺海域での海底地震計,海底電位磁力計の設置・回収とウェーブグライダーを用いた離島モニタリングシステムの試験も実施した.旧島上に設置した地震・空振観測点は,第2期活動の噴火開始1日前から火道内部のマグマ上昇を示すと考えられる低周波地震や傾斜変動を捉えることに成功した.一方,採取した第1期噴出物の全岩化学組成分析を行った結果,全試料について安山岩組成であり,1973-1974年噴出物と旧島溶岩との中間的な組成であることや,時間経過とともにSiO2含有量が低下,MgO含有量が増加したことなどが明らかになった.
2019年9月には環境省の総合学術調査に参加し再度上陸する機会を得て,第2期以降の噴火活動により生じた地形や地質,噴出物の調査と試料採取,地震・空振観測点の再設置を行った.2017年噴火により島の西側および南西側に流出し,地形を大きく変えた溶岩流は,地質学的には第1期活動の噴出物とよく似ていることがわかった.一方,全岩化学組成分析の結果,噴出物は安山岩であるが第1期噴出物とわずかに異なり,SiO2 含有量の低下やMgO含有量の増加が認められることがわかった.2019年12月には再び噴火が始まり,爆発的噴火と溶岩の流出により島は再び成長を始めた.再設置した地震計や空振計により,新たな噴火活動の開始の様子やその後の噴火推移を捉えることに成功した.

(2)福徳岡の場2021年8月噴火活動の研究

小笠原火山弧に属する福徳岡ノ場海底火山において,2021年8月13日に大規模噴火が発生し,噴煙高度は16 kmに達した.浅海の噴火口から生じた大規模噴火の推移が捉えられたのは初めてのことである.衛星・空振・噴出物等の多項目データの分析を行い,その活動推移をまとめた.その結果,噴出量はおよそ0.1 km3(マグマ換算)で,その大部分は噴出源における浮遊軽石と新島の形成に費やされたことがわかった,また,外来水を考慮した噴煙モデルに,浮遊軽石からの熱量の効果を取り込み,噴煙高度を説明する噴出率条件を調べたところ,既存のモデルから期待されるより二桁小さい噴出率である可能性が示された.

(3)海外の火山における噴火活動の研究

トンガ王国のフンガ・トンガ=フンガ・ハアパイ海底火山において,2022年1月15日に大規模噴火が発生し,噴煙高度は55 kmに達した.この噴火に伴う大気波動,地震,津波が世界各地で観測され,日本にも大気波動と結合した津波が到来し被害も発生した.インドネシアのクラカタウ火山で1883年に発生した大噴火とよく似た規模・様式のイベントであるが,近代的な観測網で捉えられたのは初めてである.衛星データと遠方の地震計・気圧計データの解析を行い,その活動推移をまとめた.また,高密度重力流シミュレーションにより津波発生過程の検討を,火山噴煙シミュレーションにより大規模噴煙や火山雷発生過程の検討を進めた.また,トンガ地質サービスとの共同研究として,トンガ国内の調査及び噴出物採取を行った.また,噴火で切断された海底光ケーブルを用いた分散型音響計測(DAS)実験を行い,ローカルな微小地震を捉えることに成功した.