伊豆大島火山の深部構造解明のため,2021-2022年度に地震研究所と海洋研究開発機構が合同して陸上および海底に観測点を設置し電磁気観測を実施し,地下比抵抗探査をおこなった.比抵抗構造解析の結果,伊豆大島火山下は主に以下のような特徴があることがわかった.
1)およそ海水準より浅部は1kΩm以上の高比抵抗を示し,それより深部は全般に100Ωm以下の比較的に低比抵抗を示した.前者は不飽和な間隙が多く,一方,後者は液相で飽和されているために低比抵抗であることを示唆している.
2)低比抵抗体は,特に,深度3km程度で0.5-1桁さらに比抵抗値が下がり,深度10km以深まで寸胴型に鉛直に伸びていることがわかった.低比抵抗体形状と震源分布とを比較すると,低比抵抗体の縁部にのみ地震が起こっていることがわかった.このことは,低比抵抗体内に火山性の高温流体が存在しており,脆性破壊をおこさない状態であると考えられる.
3)他項目の先行結果と比較検討すると,低比抵抗体の上面深度およそ3kmには浅部マグマ溜りが存在し,深度10km程度の深部低比抵抗域は深部マグマ溜りが存在しており,両者の中間はその上昇域(マグマ供給系)であると考えられ,地殻変動膨張・収縮源の深さとも調和的である.深部マグマ溜りは,1986年A火口噴火で見られたマフィックなマグマで,浅部マグマ溜りはB,C火口噴火で見られた分化の進んだフェルシックなマグマが存在していると考えられる.
今回得られた比抵抗構造解析は,地下深部構造の詳細を明らかにしたのに加え,これまで他項目でそれぞれ得られていた観測結果を統合・整合する結果であり,伊豆大島火山下の構造の理解が大きく進んだ.
図3.10.1 伊豆大島比抵抗構造断面図