3.10.3 2024年能登半島地震震源域北東部海域下の余震分布

能登半島では,2018年から地震発生回数が増加し,2020年12月から地震活動のさらなる活発化がみられていた.この一連の地殻活動のなかで,2024年1月1日にM7.6の地震が発生し,地震活動の範囲が能登半島の広い領域と北東側の海域を中心とした北東-南西方向に伸びる150km程度の範囲に拡大した.これを受け,北東側の海域において,全国の大学と研究機関の共同で,緊急海底地震観測を実施した.このうち2024年1月22日から2月22日までの海底地震計25台と近接する陸上地震観測点4点のデータを用いて,地震活動と海底活断層との関係を調査した.はじめに,気象庁一元化震源に基づき,観測期間内で観測網近傍に震央がある地震について,各観測点までの到達時の読み取りを行った.この領域ではOBSとエアガンを用いた構造探査が行われている.その結果から一次元速度構造を作成するとともに,変換波を用いて各観測点直下の堆積層の効果を補正し,初期震源を決定した.次にDouble Difference法を用いて再決定を行い,1,472個の精度の良い震源を求めた.得られた震源は上部地殻内に分布しており,能登半島に近い領域では12kmより浅いところで発生している.一方,陸から離れた北東部ではより深いところでも地震が発生していることが明らかになった.日本海地震・津波プロジェクトで得られている海底活断層モデルのうち,本解析領域に存在するNT2~NT5は,NT2とNT3は北東方向,NT4とNT5は南西方向に傾斜している.本研究で得られた震源分布も同様の結果を示しており,整合的な結果が得られた.一方,NT2とNT3の下端と,震源の深さ下限は概ね一致しているが,NT4とNT5の下部領域では明瞭な地震活動はみられなかった.また,NT2の北半分についても地震活動がみられず,活動域の拡大は,NT2の途中で停止しているようにみえる.なお,この観測研究は,北海道大学,東北大学,千葉大学,東京海洋大学,東海大学,京都大学,鹿児島大学,海洋研究開発機構との共同研究である.