(1) 八ヶ岳地球電磁気観測所における基準観測
八ヶ岳地球電磁気観測所では東海・伊豆地方における地球電磁気連続観測の参照となる基準連続観測を継続した.毎月の地磁気絶対観測により地磁気3成分測定値の基線値を同定するとともに,毎月約2週間の,絶対観測室磁気儀台上の全磁力の繰り返し連続計測を実施し,観測所全磁力連続観測測定値との全磁力差を同定した.加えて毎月,地磁気絶対観測の際に絶対観測室内の水平48点,鉛直5層の計240点における全磁力値を計測して同室内の全磁力勾配を評価し,全磁力差や基線値の季節変化・経年変化との関連を調査するための基礎資料を作成した.これらの参照資料とするための気温・地温連続測定を継続して実施した.記録計室内での気温・気圧・湿度計測のオンライン化,局舎敷地内のwebカメラによる画像での敷地内の状態の定時監視,庁舎のwebカメラによる気象条件の常時監視による,無人観測所の保守を継続した.
気象庁及び同地磁気観測所による,草津火山における火山活動監視を目的とした全磁力観測値の参照値として,前日分のデータを毎日自動で送付する仕組みの運用を継続した.
(2) 東海・伊豆地方における地球電磁気連続観測
東海地方の7観測点(河津,富士宮,奥山,俵峰,相良,舟ヶ久保,相良)における地球電磁気連続観測,伊豆地方の7観測点(大崎,新井,玖須美元和田,手石島,与望島,川奈,池)における全磁力観測を継続するとともに,機器の保守を実施した.富士宮観測点に続いて相良観測点の磁力計を更新し,3成分変化毎秒値の収録が実現した.
(3) 空中磁気探査用マルチコプターの対地高度推定の高精度化
空中磁気探査の際に地上とマルチコプター上の両方で同時に気圧計測を行うことにより,気圧差から対地高度を精度良く推定するための機器を技術開発室との協力で開発した.試験的に地震研究所の屋上にて,及び屋上と1階との間で計測を実施し,高度差を推定した結果,推定された高度差は約2.4mの精度が達成できることが判明した.
(4) 磁気嵐に伴う地磁気変化の特徴的成分の特定
2024年5月の太陽フレアに伴う磁気嵐の際に,磁気嵐の特徴的な地磁気変化である南北成分の変動とは別にアジアの地磁気観測地点で広域的に,100nTに及ぶ西向き成分のステップ的発生と約6時間の継続,緩和的消滅が見られたことを,グローバルに分布する地磁気観測地点の地磁気データの解析により示した.北半球の昼側でのみ見られたこの特徴的な地磁気変化の特定が,超高層領域において磁気嵐の際に生じる電流系の新たな解明に資することが期待される.