(1)三次元グリーン関数を⽤いた震源過程解析
震源過程解析の精度にはいろいろ要因が影響しているが,中でもグリーン関数の精度が⼤きな影響を与える.グリーン関数は地下構造モデル内の単位震源に対して理論的に計算されるので,地下構造モデルは通常⽤いられる⼀次元構造モデル(⽔平成層構造モデル)より現実に近い三次元構造モデルを⽤いる⽅がグリーン関数の精度を⼤きく⾼める.こうした三次元グリーン関数の計算⼿法の研究を進めるとともに,1923年関東地震,1952年と2003年の⼗勝沖地震,1995年兵庫県南部地震などに対して,三次元グリーン関数を⽤いた震源過程解析を⾏った.
(2)国内外の被害地震の震源モデル
強震動(災害につながる強い揺れ)の研究とは,地震の震源の破壊過程・地震波が地球を伝わる現象(波動伝 播)・地⾯が揺れる現象(地震動)といった⼀連の現象を理解することである.強震動をともなう地震は,他の⾃然災害に⽐べて稀にしか起こらないため,起こった地震の詳細な震源モデルを着実に蓄積することに格別の重要性がある.これらの震源モデル群からは海溝型地震のスケーリング則などが⾒出された.また,2018年北海道胆振東部地震をはじめとする被害地震の震源過程を検討した.
(3)ネパールヒマラヤ巨⼤地震とその災害軽減の総合研究
プレート衝突帯に位置することにより巨⼤地震の発⽣と⼭岳地形の形成という危険にさらされているネパールにおいて,ヒマラヤ前⾯における地震発⽣シナリオの作成,カトマンズ盆地の地下構造モデル構築や表層地質の影響評価などを⾏い,その巨⼤地震によるカトマンズ盆地のハザードを2016年度から約5年間,総合的に研究し た.地震観測システムや,地震学の⾼等教育,耐震政策への提⾔などを検討し,それらを通した研究成果の社会実装を⽬的とした.