近年,鉄筋コンクリート造建物の設計においては,建物を詳細にモデル化し,その⾮線形挙動を解析的に追跡してその性能を評価することが主流となっている。建物の⾮線形特性においては,⾮線形化による減衰効果の評価が極めて重要であり,その主要なパラメータは降伏時変形である。⼀⽅,鉄筋コンクリート造部材の降伏時変形の推定式は40年以上前に実験結果の統計処理により求められた経験式を現在も⽤いているのが現状である。近年では,高強度の鉄筋を主筋に用いる建物も多く建設されているが,高強度鉄筋コンクリート造部材の降伏点変形は前述の経験式では精度良く評価できない場合があることが指摘されている。そこで,高強度鉄筋コンクリート造部材に適合する降伏点変形評価式を提案した。まず,高強度鉄筋コンクリート造部材の曲げせん断実験を行い,降伏点変形を把握した。また,過去に国内で発表された高強度鉄筋コンクリート造部材の実験結果に関する論⽂を収集し,そこに⽰されている荷重―変形関係をデジタル化することにより,高強度鉄筋コンクリート造部材の降伏時変形に関するデータベースを構築した。実験データベースを用いて,提案式の精度を検証し,提案式では降伏点変形を精度よく評価できることを確認した。