3.3.3 揮発性元素にもとづく地球惑星進化史の研究

⽕成岩や地球外物質(特に分化天体を起源とする隕⽯)に含まれる希ガス同位体組成をもとに,太陽系や惑星の形成・進化史,惑星内部からの脱ガスや⼤気形成過程,⽕成活動の特性などを解明する⽬的で研究を⾏っている.希ガスは不活性であり物理的プロセスを探求するのに有⽤なトレーサーであるとともに,4He, 40Ar, 129Xe といった年代測定に応⽤できる放射起源同位体を有する.従来の分類から外れるような分化隕⽯や始原的隕⽯(コンドライト)との関連性が⽰唆されるような分化隕⽯に着目し,それらに含まれる希ガス同位体や年代学的情報などから,経験した熱史や⺟天体像などに関する考察を進めた.

また,将来の惑星探査機への搭載やその場観測での運⽤を⽬指し,⼩型K-Ar年代測定装置の開発,および分離膜を⽤いるネオン同位体分析⼿法の開発を進めている(理学系研究科の研究者らとの共同研究).前者の装置では,岩⽯試料にレーザーを照射しカリウムを分光分析で,アルゴンを質量分析計で測定を⾏う.火星の地質年代マップをもとに,⽕星上でK-Ar年代測定を⾏うことに適した地域の検討を行った.後者については,希ガスの⼀元素であるネオンは,同位体分別の指標として有用であり⼤気進化過程を考える上で重要な元素であるが,地球以外の惑星の大気ネオン同位体組成はわかっていない.質量分析計でのネオン同位体測定ではアルゴンが干渉するため両者を分離する必要があり,室内実験では液体窒素や冷凍機を使⽤してネオンとアルゴンを分離するが,その場測定では難しい.そこで,膜の透過性質を利⽤してネオンとアルゴンを分離する⽅法の実証実験を行いその有効性を示した.さらに探査機搭載に向けて (i) 温度による分離特性の違い,(ii) 分離膜固定法の確立やその強度試験,(iii) 火星大気ネオンを測定する場合の分離膜サイズや透過条件の検討,を行った.