3.2.3 地震,地殻変動等の最先端観測や新しい観測の試み

(a)南アフリカ鉱山における半制御地震発生実験

南アフリカの金鉱山の地下深部の採掘域周辺に多数の高感度微小破壊センサを設置し,半径100m以上の範囲にわたってM-4以下という数cm程度の微小破壊までを検出・位置標定する,世界でも例をみない試みは,自然地震では観測されたことのない,既存弱面への極端な地震活動の集中や,プレート境界のそれにくらべて極端に高い効率で発生するリピーター活動など様々な発見をしてきた.観測は既に終了したが,東北大・立命館大と協力して,センサ設置孔から採取されたコアを用いた応力測定によるサイトの応力場の推定を行っている.採掘空洞から大きな偏差応力を受ける地下サイトで様々な方向に掘った14本のボアホールから採取した小径コア38個に対して,DCDA法(岩盤からコアが切り出される時の弾性変形によって断面が楕円になったコアの形状を測定して岩盤中で受けていた応力場を推定できる)を用いてボアホールに垂直な面内での偏差応力を求めた.このサイトの偏差応力場が一様であると仮定して38箇所のDCDAの結果と孔の角度から平均的な偏差応力場を最小二乗的に推定したところ、推定された一様偏差応力場でほとんどのDCDA結果が説明された.また,推定された平均的応力場は,採掘終了後におこなったオーバーコアリング法によるその場計測結果とも整合していた.さらに,断層面近くで残差が大きくなる傾向も見られ,断層による応力の擾乱を捉えた可能性がある.鉱山では探鉱のために大量の小径コアが日常的に取得されているので,特別な実験設備を要せず現地に機器を持ち込んで迅速に行えるDCDA法によって安全採掘のための日常的な応力管理ができる可能性がある.