石川県能登地方で2024年1月1日に発生したM7.6の地震にともなう地震活動の時空間変化について解析をおこなった.珠洲地域に稠密に展開されていた地震計と震源域を取り囲む広域の定常地震観測網で取得された連続波形記録を同時に用いて,深層学習モデルを用いた地震波の読み取り,イベント同定,波形相関法に基づく震源再決定をおこなった.さらに,再決定震源を用いてテンプレートマッチング手法を適用することで,多数の地震の検出に成功した.その結果,M7.6の直前に発生した前震活動は,2024年5月に発生したM6.5の震源断層深部に位置し,M7.6の主要な断層面よりも数㎞深い場所で起きていたことが明らかになった.また,M7.6の余震活動は,主に南東傾斜の並びを示し,観測点密度の高い珠洲地域においては,断層の傾斜角が浅部ほど急になるリストリックな形状を呈することがわかった.このことは,日本海拡大時に形成された正断層が今回の地震により再活動した可能性を意味する.さらに,震源域北東部では逆傾斜の北西傾斜の震源分布が卓越し,震源域南西端では震源分布が南北走行に近くなるなど,複雑な震源分布を示すことが明瞭になった.