3.5.9 変動地形・活断層

 内陸地震や海溝型地震の長期予測やメカニズムを実現・解明するためには,地震による長期的・永久的な地殻変動と地球表層プロセスによって形成される変動地形の形成過程・メカニズムを理解することが必要不可欠である.そのため,本センターでは日本列島および世界の変動帯の活断層・変動地形を対象に分布・形態・活動性を解明するとともに,最新の観測技術・手法開発の推進に取り組んでいる.また,「災害の軽減に貢献するための地震火山観測研究計画(第3次)」を通じて,全国の研究者と共同し,航空LiDAR等を用いた詳細地形データの生成やこれらに基づく地殻変動解析,宇宙線生成核種による年代測定等の,活断層の位置・形状・活動性の解明に向けた新しい観測技術の確立・適用に向けた取り組みや,古地震活動・断層構造の複雑性を考慮した内陸地震長期予測モデルの構築を目的とした調査・研究を進めている.

 2024年度は,元旦に発生した2024年能登半島地震に伴う地殻変動について緊急調査を実施し,沿岸部で認められた地震時海岸隆起量や内陸部の地表変状の分布を明らかにした.また,活断層の活動性や位置・形状の解明を目的とした調査を,森本・富樫断層帯(3.5.10),三浦半島断層群(3.5.11)や,長期評価のための活動性データが不明な津軽山地西縁断層帯(南部)・筒賀断層・宮古島断層帯(「活断層評価の高度化・効率化のための調査手法の検証」事業),Huaytapallana断層を対象として行った.津軽山地西縁断層帯(南部)では,反射法地震探査及びボーリング調査を行い,活動性を明らかにした.筒賀断層・宮古島断層帯では,新手法である宇宙線生成核種年代測定を試み,活動性解明に資する結果が得られた.また,ペルー向けSATREPS「地震直後におけるリマ首都圏インフラ被災程度の予測・観測のための統合型エキスパートシステムの開発」の中で,1969年の地震とともに地表地震断層が現れたHuaytapallana断層を対象としたトレンチ調査を実施し,その活動性について調査を行った.災害軽減計画では,糸魚川―静岡構造線断層帯,阿寺断層帯において変動地形・古地震・構造地質調査を行ったほか,能登半島や十日町断層帯において変動地形調査・航空レーザー測量データ解析等を行った.