3.7.2 フロンティア解析による地球の内部構造と内部過程の解明

 海底火山活動監視技術の改善のため,遠地海底地震計の波形データを適切に解析することにより,詳細な震央位置を推定する手法を開発した.複雑なP波波形の立ち上がりを正確に読み取り,適切な相対走時をデータとし,信頼できるデータのみを選択的に使用することにより,正確な震央推定を可能にした.地震研究所の広帯域海底地震計アレイが展開されていた時に発生した,火山活動と関連すると思われる顕著な地震活動の解析に応用することにより,活動の時間発展や海底地形との相関を明らかにした.この成果をまとめ,国際誌で発表した.

上記手法をさらに発展させ,遠地海底地震計のP波・S波の同時解析を行うことにより,深さを含めた正確な震源を推定する手法も開発した.上記地震活動の解析に応用した結果、本震発生から7.5時間の前後で,震源分布が顕著に変化したことが検出された.7.5時間以降の震源の深さは様々である一方,震央位置はリフトゾーンの直下に位置し,ダイクの貫入があったことが示唆された.

海底地震計アレイで取得された地震波形から,海底堆積層の詳細な構造を解析する手法を応用し,太平洋の様々な地域における海底堆積層の構造を推定した.構造特性や機器特性は様々であるが,本手法を用いれば正確な構造推定が可能であることを,海底掘削データの結果との比較等を通じて確認した.得られた結果をまとめ,海洋堆積物のVp及びVp/Vsのスケーリング則は従来考えられていたものとは異なることを示した.Vp/Vs値は,従来のスケーリング則から期待されるよりも大きい値を取っていることが明らかになった.これらの成果をまとめ,国際誌で発表した.