3.10.5 インドネシアLUSI泥火山噴火にともなう地殻変動

活火山地下における物質輸送は地殻変動の観測によって検知することができるが,観測される地殻変動の空間スケールが小さいために,マグマ輸送の全貌をつかむためには空間的に密な観測が必要である.そのような背景から,合成開口レーダーを用いた地殻変動の観測は,火山活動の全貌をつかむのに有力な手法である.本研究では,2006年から2012年ごろまで継続したインドネシアLUSI泥火山噴火にともなう地殻変動をALOS衛星に搭載された合成開口レーダーの干渉解析によって観測し,噴火にともなう堆積物の輸送についての知見を得た(図3.10.4).合成開口レーダーによる観測からは,噴火にともない噴火口周辺での最大数10センチメートルの沈降と同時に,西側に隣接したガス田においても最大数10センチメートルの沈降を観測した.両地域とも噴火活動後期においては約2年ほどの時定数で沈降速度が減衰していたこと,西側地域の沈降は噴火開始の数ヶ月後に開始したこと,から,西側のガス田における沈降は泥火山噴火に誘発されて発生したものであると考えられる.また,簡単なモデリングにより,地下1500メートルにある泥だまりと地表をつなぐ泥の通路は直径1メートル以下である必要があり,地表で見られる火口の直径(30メートル程度)よりはるかに細いことが示唆された.