3.1.4 火山現象の数理的研究

爆発的噴火から溶岩ドーム噴火まで多岐に亘る火山噴火現象の統一的理解と,観測データから噴火条件の推定方法の確立を目指し,数値実験と理論モデル開発を平行して研究している.具体的な研究課題としては,火山噴煙・火砕流のダイナミックスを対象とした大規模シミュレーション研究,および,火道におけるマグマ上昇に関する理論研究を進めている.

 火山噴煙については,近年,気象レーダーや人工衛星を用いた観測によって噴煙高度やその拡大が高精度で測定されるようになってきた.そこで,これらの観測データから火口での噴出条件や噴火強度を推定するモデルの開発と,鍵となる物理過程を表すパラメータの決定を目的とし,3次元噴煙モデルを用いて様々な噴火条件・大気条件に関する数値実験を行った.また,野外調査で得られる火山灰分布から噴煙ダイナミクスと噴火条件を再構築するために,流体計算と粒子計算を組み合わせた火山灰輸送・堆積の高精度モデルの開発とそれによる大規模シミュレーションを進めている.更に,実際の噴火で多項目的に得られた観測データ・野外調査データを整合的に説明することを目的として,大規模噴火のフィリピン・ピナツボ火山の1991年噴火事例,中規模噴火のインドネシア・ケルート火山の2014年噴火事例,小規模噴火の霧島山新燃岳の2011年噴火事例,水蒸気噴火の御嶽山2014年噴火事例といった幅広い代表的噴火事例に関する再現シミュレーション研究を進めている.

 火道流については,1次元火道流モデルを用いて,爆発的噴火における噴火様式の推移に対する火口形状の影響,および溶岩ドーム噴火から爆発的噴火への遷移に対するマグマの脱ガスや結晶化の影響を系統的に評価した.また,火山周辺の地殻変動観測や噴出率観測と1次元火道流モデルを組み合わせることによって噴火の推移予測を行う理論的枠組みの構築を進めている.