3.12.6 巨大地震・津波の研究

(1) 世界の巨大地震・津波の研究

津波データや測地データ,地震データを用いて,世界の巨大地震の断層運動の詳細や津波の発生過程について調査している.2013年パキスタンの内陸で発生した地震の際に津波が記録されているが,これは地震に伴う地すべりによって発生した可能性が高いことを示した.2014年チリイキケ沖地震について,遠地地震波と津波・GPSデータから断層面上のすべり分布と破壊伝播速度の推定を行った.地震波からは震源時間関数が,津波・GPSデータからはすべりの空間分布が安定して推定できることがわかった(図3.12.6).1900年以降に千島海溝沿いで発生した巨大地震 及び大地震について,本震と余震の震源決定と震源過程の解析を行い,約 110年間にわたる時空間分布を明らかにした.また,日本海東縁部で発生する地震による津波について,沖合と沿岸域での波高分布関係について検討を行った.

(2) 東北地方太平洋沖地震・津波に関連した調査・研究

2011年3月11日に発生した東北地方太平洋沖地震による津波高調査の結果を整理し,1896年明治三陸地震,1933年昭和三陸地震,1960年ならびに2010年チリ地震による津波高と比較することで,東北地方から関東地方に至る太平洋沿岸域において津波高を支配する要因を明らかにした.また,環太平洋で記録された津波波形を解析し,太平洋全体の振動よりも波源や大陸棚での振動が卓越していることを明らかにした.2011年東北地方太平洋沖地震や2010年チリ地震による津波は,太平洋を横断すると,線形長波から計算されるよりも津波の到達が遅れ,初動が反転することについて,弾性変形する海洋底の弾性,海水の圧縮性,質量移動に伴う重力場の変化の影響が原因であることを明らかにした.また,これらの影響を考慮する手法を開発し,観測と計算波形の伝播時間差を解消し,初期反転位相を含む津波波形も再現することができた.

 東北地方太平洋沖地震の断層モデルから,実際に発生した地震のメカニズム解を受け手側の断層としてクーロン応力変化を計算し,茨城県南西部・千葉県北部のやや深発地震や伊豆・箱根の浅い地震等,東北地方太平沖地震後に関東地方において活発化した地震活動の多くが本震による応力変化で説明できることを統計的に示した.