3.6.4 霧島山

(1) 2011年噴火の噴出物分析とマグマ供給系

2011年1月の準プリニー式噴火に先立つ小規模噴火においてマグマ物質の出現を検知することに成功した.噴火発生後は,地質・岩石学データ,上空から観察した火口状況,地球物理データを融合することで,マグマ溜まりから地表に至る広範な現象を説明する統合的モデルの構築を試みた.すなわち,噴出量,噴煙高度と噴出率を推定し,ブルカノ式噴火の噴出条件を推定した.岩石学的研究では,斑晶メルト包有物の揮発性成分測定や相平衡実験を導入することで,浅部低温マグマの深度と,深部からの高温マグマ注入プロセスに関する描像を得た[図3.6.4].これらの研究は地殻変動をはじめとする地球物理観測データの解釈にも示唆を与えた.

(2) 電磁気構造探査による霧島山の比抵抗構造

 新燃岳および霧島火山群下の広域比抵抗構造を探査する目的で,平成22年7~8月および23年3月~4月に,計28点においてMT法測定を実施した.3次元構造解析の結果, 霧島火山群の北東側,深さ10kmあるいはそれ以深に低比抵抗領域が検出された.この低比抵抗体は,2011年新燃岳噴火に伴い地殻変動観測その他から検出された膨張収縮源に相当すると考えられる.また,そこから東上向きに霧島火山群中心部に向かって低比抵抗領域が伸びており,ここから今回の噴火に関連する火道が伸びていると考えられる.

(3) 地殻変動観測とマグマ蓄積過程

 2011年1月26日に爆発的噴火を行った霧島新燃岳の噴火前後の地殻変動を稠密なGPS観測網で捉え,噴火前の山体膨張時の圧力源,噴火時の減圧源,噴火後の再膨張時の圧力源の位置を,誤差も含めて推定した.この噴火に関与するマグマ溜りは新燃岳北西約8km,深さ約8kmで,2009年12月からほぼ同じ蓄積率でマグマが蓄積され,噴火時に蓄積量の約65%の13×106m3のマグマが噴出し,噴火後もほぼ同じ蓄積率で再蓄積し,噴火前の90%まで蓄積した時に再蓄積が終わった.このようなマグマ蓄積の履歴が観測より明らかになった.

(4) 火口近傍多項目観測による噴火過程の解明

 霧島山新燃岳の火口近傍で観測された広帯域地震計,傾斜計により,2011年噴火活動初期の準プリニー式噴火,マグマ湧出期,ブルカノ式噴火という異なる火山活動に伴う火道浅部に起因する傾斜変動を捉え,これらの火山活動に関連する火道浅部のプロセスに関する知見を得た.ブルカノ式噴火では,噴火に先行する傾斜の時系列の特徴を明らかにする事を通じて,噴火に先行する火道浅部でのプロセスを推定した.最初に発生した3つの準プリニー式噴火では,地震・空振の振幅を他の観測データと比較することにより,1番目と3番目の噴火は浅部での急激な減圧より,2番目の噴火は火道のより深部に起因するトリガー機構によって引き起こされたという知見が得られた.