技術職員からのメッセージ(応募を考えている皆様へ)

日本列島は世界で最も地震・火山活動が活発な地域の一つです.2011年1月には霧島山が294年ぶりにマグマ噴火し, 3月11日には千年に一度といわれる東北地方太平洋沖地震が発生しました.このような中で,地震研究所は「観測固体地球科学分野を中心とする最先端研究を推進し,地震・火山現象について新たな理解への道を切り拓いて,災害軽減に貢献すること」を使命として活動しており,更に研究機関に向けた情報発信や,社会に向けての教育普及・啓発活動も行っています.技術職員も研究者達と共に,上記の使命を担うべく業務に従事しています.具体的には,地震や火山活動に伴った様々な現象の観測や,観測・実験研究に必要な機器の開発や情報流通基盤整備などです.このような多様な業務の中から,我々の主な仕事について以下にご紹介します.

2022/04/20 更新
2011/12/13 作成

目次(役職は2021年4月時点)

橋本 匡  総合観測室  一般技術職員( 2020年04月入所 ; 2022年04月寄稿 )
秋山 峻ェ  総合観測室  一般技術職員( 2020年04月入所 ; 2022年03月寄稿 )
上原 美貴  技術開発室 ( 観測情報系 )  技術専門職員( 2017年10月入所 ; 2018年05月寄稿 )
佐伯 綾香  総合観測室  一般技術職員( 2016年04月入所 ; 2022年03月更新 )
竹内 昭洋  技術開発室 ( 実験系 )  技術専門職員( 2014年04月入所 ; 2015年04月寄稿 )
田中 伸一  総合観測室  技術専門職員( 2013年04月入所 ; 2020年04月寄稿 )
西本 太郎  総合観測室  技術専門職員( 2013年04月入所 ; 2014年04月寄稿 )
浦野 幸子  技術開発室 ( 開発系 )  技術専門職員( 2011年04月入所 ; 2022年03月更新 )
外西 奈津美 技術開発室 ( 分析系 )  技術専門職員( 2009年04月入所 ; 2022年02月更新 )
宮川 幸治  総合観測室  技術専門職員( 2007年04月入所 ; 2022年02月更新 )
渡邉 篤志  総合観測室  技術専門職員( 2007年04月入所 ; 2011年12月寄稿 )


橋本 匡  総合観測室 一般技術職員( 2020年04月入所 ; 2022年04月寄稿 )

入所前はどのような仕事・研究をされていましたか?

 九州大学地震火山観測研究センターに在籍して,火山の観測・研究で修士号を取得しました.修士号取得後,新卒で地震研に入所しました.

あなたの業務内容を教えてください

 現在は主に,海域での地球物理観測業務と,高精度広帯域MT(MagnetoTelluric)観測装置の維持・管理及び観測支援を行う業務に携わっています.
 海域業務では,海底に一定期間設置して観測する自己浮上式海底地震計(OBS)・圧力計(OBP)の運用と,海底ケーブルに繋げられた地震計・津波計のデータを陸上局舎で収録するケーブル式海底地震・津波観測システム(OBCS)の維持・管理を担当しています.OBS,OBPでは,機材の動作試験・組立・乗船航海・設置回収・解体・データ吸い上げの一連の作業を担当職員などと協力して行っています.OBCSでは,日常業務としてデータ伝送や設備に異常がないかなどを遠隔で監視し,必要に応じて現地にて保守を行い,また海底ケーブルを用いた先駆的な研究が実施される場合は適宜対応しています.
 MT業務では,共同利用機材 であるMT観測装置を,動作確認をした上で研究所内外の様々な研究者に貸し出す作業を,担当職員などと協力して行っています.また,観測地域に同行して設置・保守・撤収といった観測支援もしています.

  

 
 
左:自己浮上式海底地震計(OBS)の組立風景.OBS観測では,直径50cmの耐圧チタン球の中に地震計,電池,収録装置等を収納し,海底に投入して一定期間観測する.写真はチタン球の下半球に地震計(写真中央)やリチウム電池(24本)を収納している所.
右:船上におけるOBS投入直前の作業風景.
 


電磁気MT観測装置の動作試験.黒い細長い棒状の物は、磁場を測定するコイル.
 

これまでの業務で印象に残ったことを教えてください

 全部です.地震研究所は地震・火山現象をターゲットにしていますが,そのアプローチは非常に多種多様です.観測地点は水深数千メートルの海底や火山の山頂付近,都内の片隅や樹海の中など,測るものは地震波や電磁波や素粒子など,様々です.機材は最先端でありながら,その運用には研究者や先輩職員の知恵と工夫が詰まっていてどの業務も印象的です.

応募を考えられている皆様へ

 総合観測室は「よりよいもの」を目指す風土があり,議論が活発な印象があります.技術開発室の職員とも距離が近く,技術部としてまとまっていると感じます.資格取得の支援も充実しており,フィールドや実験室での作業などで資格を実際に使う場面も多いです.休暇も取得しやすく,現地休暇を利用してダイビングでリフレッシュといったことも可能です.


秋山 峻ェ  総合観測室 一般技術職員( 2020年04月入所 ; 2022年03月寄稿 )

入所前はどのような仕事・研究をされていましたか?

 GNSSデータを用いた地殻変動の研究で修士号を取得し,新卒で入所しました.室内でデータ処理や計算ばかりしていたので,今の仕事に直接役に立つような,観測に参加したり機器を扱ったりする経験はありませんでした.

あなたの業務内容を教えてください

 主なものは陸域地震観測と火山観測,強震観測です.日々のルーティンとして,地震波形データが来ているか,波形を見て地震計に異常がないか,地震活動に変化はないか,ということをチェックしています.異常があれば機器や地震計の交換,その他設備の保守のため,北は福島や新潟,西は九州の霧島山まで行きます.1人で行くことも複数名で行くこともあり,教員が同行する場合もあります.また,毎週どこかに出張に行っていることも,1ヶ月ずっと東京にいることもあります.
 陸域地震観測では揺れを感じる地震はもちろん,揺れを感じない小規模の地震,震源深さ300kmを超えるような深発地震,海外の大規模な地震など幅広い揺れを観測しています.地震波形記録のノイズ低減のため,観測点が人里離れた場所や山中にあることが多く,日常生活ではあまり行かないようなところに行きます.火山観測では文字通り主要な火山の活動監視のための観測をしており,山頂火口まで行くこともあります.陸域地震観測と比べて電気や通信の安定した供給が難しいですが,噴火に備えるため観測設備を維持するのは重要だと感じています.強震観測では人的被害をもたらす規模の揺れを観測しています.寄稿日時点ではまだ本格的には関わっていませんが,これから経験を積み重ねていく予定です.このように様々な経験ができるのが魅力です.
 2020年4月初旬,新型コロナウイルス感染症拡大により緊急事態宣言が発出され,入所から1週間しないうちに在宅勤務になりました.例年なら地震計などの観測機材に触れて使い方を学び,フィールドに出かけて経験を積むところでしたが,3ヶ月以上,自宅で地震波形の読取りなどをしていました.出遅れた感はありましたが先輩職員や教員にサポートしていただいて順調に業務を進めることができました.

陸域地震観測点の保守の様子.この箱の中に波形データの記録や地震研究所への伝送をする機器などがあります.
 

これまでの業務で印象に残ったことを教えてください

 まず,出張が多いことが今でも印象的で,ユニークだと思います.その中でも特に印象に残ったのは長野県大町市での臨時地震観測です.2020年3月下旬より大町ダム周辺で群発地震が発生し,教員から臨時観測に行けないかと依頼がありました.行くことが決まってからは地震計を置くエリアや使用する機材などをその教員と相談しながら決めました.当然ですが初めて行く場所なので現地の状況は行ってみないと分かりません.落石で車が通れなかったり地震計の置き場所に悩んだりしました.3ヶ月後に保守で訪れた際,一部の地震計がこけており,置き場所の良い悪いがあることを目の当たりにしました.回収した波形データを定常観測点のデータに加えて震源決定を行い精度が上がったことを確認しました.これらは,初めて「地震観測をやっている」「自分の頭と足を使ってデータを取りに行く」という実感が湧いた良い経験です.


臨時観測中に見た長野県大町市内の眺望.
景色の良い場所に行くこともあります.
 

応募を考えられている皆様へ

 本当に様々な種類,規模のしごとがありますが,この仕事の根幹は火山や地震などの観測,研究を支えたり発展させたりすることだと思っています.仕事で使う知識や技能は学校で学ぶ分野で言えば,地球科学や電気,情報,工学などたくさんあります.なにか一つでも学んだ経験や興味があれば―得意不得意に関わらず―きっと活躍の場があるでしょう.また,機械を触ったりフィールドワークに出かけたり,色々なことを行います.あちこちに出かけたり仕事を通してあらゆる分野への知識が増えたりするので,好奇心旺盛な人には魅力的な仕事だと思います.あなたのご応募をお待ちしております.


上原 美貴  技術開発室 ( 観測情報系 ) 技術専門職員( 2017年10月入所 ; 2018年05月寄稿 )

入所前はどのような仕事・研究をされていましたか?

 計算化学分野で修士号を取得後,IT業界に就職し,検索・ポータルサイトのサーバ管理や,企業の情報システム部門で社内システムの管理に携わっていました.2008年からは地震研究所の非常勤職員として,所内の基幹ネットワーク保守等を担当してきました.

あなたの業務内容を教えてください

 所内ネットワークのほか,大規模高速並列計算機システムの維持管理,また,地震研究所が保有する古い地震記録を整理し,データベースを構築することもミッションです.

これまでの業務で印象に残ったことを教えてください

 見えないトラブルの原因を探して,ときには床下や配管スペースを覗いてほこりまみれになったり,所内を走り回って聞き込みしたりと泥臭いこともします.その分,集めた証拠を元に推論を重ね,問題解決に至ったときの達成感は一入です.

応募を考えられている皆様へ

 ネットワークの仕事は「問題なく動いてあたりまえ」とされ,評価につながりにくいと言われますが,地震研究所はその「あたりまえ」も正しく評価される「ありがたい」職場です.誰かの役に立つことが好きな人,縁の下の力持ちになれる人をお待ちしています.


佐伯 綾香  総合観測室 一般技術職員( 2016年04月入所 ; 2022年03月更新 )

入所前はどのような仕事・研究をされていましたか?

 大学院理学系研究科の修士課程に在籍し,沈み込みプレート境界地震発生帯物質科学の研究を行っていました.修士号取得後,新卒で地震研に入所しました.

あなたの業務内容を教えてください

 現在担当している業務は,陸域の自然地震観測・共同利用機材の管理・地震波形の読み取り・データ流通のサーバー管理などです.こちらの業務に加えて,先生方の科研費などで行われるプロジェクト業務や巨大地震が発生した際の緊急観測などに参加することもあります.

 入所後約1年間は,OJTとして先生方や先輩技術職員の観測業務について行き,現場作業や所内作業を教わります.その後,上記のように担当業務が決まります.この中で共同利用機材の管理とプロジェクト業務として参加した業務を紹介します.

 地震研究所は共同利用拠点として文部科学省に認定されており,全国の関連研究者に機材などの提供を行っています.申請に対して貸出を行うかの判断は担当教員が行いますが,その際に機材の在庫が何台あるか,申請内容に対してどの機材を手配するのが良いか進言することも技術職員の仕事です.また,所外の人に機材をお貸しするので,その機材のメンテナンスを行い,いつでもリクエストに応えられように管理しています.特に大きな地震や火山噴火があった場合は緊急で機材を準備する必要があります.常に在庫数を把握し,機材を素早く準備することは大変重要です.

 次に,数年前にプロジェクト業務として参加した,先島諸島で行われたサンゴの試料採取業務を紹介します.この研究はパリ物理学研究所(IPGP)の研究者と合同で行われた調査です.石垣島や宮古島などの離島へ行き,チェーンソーを用いてのサンゴの試料採取や測量,またドローンを用いた調査を行いました.
 このように,プロジェクト業務では普段は行わない作業を担当することがあり,さまざまな現場へ赴くことができます.


観測点を設置するための予備調査として臨時の観測点を設置している様子です.
 
サンゴ試料採取作業をドローンで撮影した写真です.先輩技術職員が撮影しました.

これまでの業務で印象に残ったことを教えてください

 出張業務の印象が良く残っています.上記の沖縄はもちろん,普段は入れない第2海保や,黒部ダムの中に入ったことも印象に残っています.出張先では,色々な方と出会い,地元のおいしい食べ物を食べ,時には温泉に入ることもできます.

応募を考えられている皆様へ

 業務ではそれぞれの担当者が責任を持って従事しますが,その分各自にある程度の裁量があり,自分次第で新たな技術の習得や新たな現場での作業が行えます.さまざまな人や土地に出会えることは日々の刺激になります.このホームページで紹介されているように,多種多様な業務があり,技術職員も多種多様なバックグラウンドを持っています.技術職と聞くと身構えてしまう方もいらっしゃると思いますが,1年間のOJTがあり,分からないことは先輩技術職員が親切に教えてくれます.ご興味を持たれた方は,応募してみてはいかかでしょうか.


竹内 昭洋  技術開発室 ( 実験系 ) 技術専門職員( 2014年04月入所 ; 2015年04月寄稿 )

入所前はどのような仕事・研究をされていましたか?

 大学の研究員として,地震や火山噴火といった地殻活動と関連する電磁気的現象の研究をしていました.そのメカニズムを解明するために室内で岩石試料を変形させた際の電気的振る舞いを計測したり,実際に野外で地磁気や地電流を観測したりしていました.

あなたの業務内容を教えてください

 本所には,その目的に応じた大小様々な室内実験装置があります.教員からの要請に応じて実験室や実験装置のメンテナンスを行なうことが,時間的に最も大きな業務になっています.それら装置を使った実験を行なう際には,その準備・装置の操作・後片付けといった技術的な支援もします.また,既存の実験装置を改良するために,新しい治具をデザインしたり,最近バージョンのソフトウェアで制御プログラムを組み直したりしもしています.


岩石試料を上下方向と左右方向から押し,挟み込んだ岩石ブロックをゆっくりと滑らせる実験装置.新しい制御用PCとLabVIEWプログラムを導入し,長期間検証しようとしているところ.

これまでの業務で印象に残ったことを教えてください

 本所の実験装置は,最新鋭のものから私より年寄りなのではと思えるものまで様々です.古い論文で概念図を見たことがある装置がまだ現役でいるのを見ると,「おお,これがあの装置か」と何だか感慨深くなる気がします.また,何年も使われなくなっている状態の装置を見ると,何とか復活させてやりたいと思ってしまいます.


地下10-20kmの高温高圧環境を模擬した条件で岩石試料を圧縮破壊させる実験装置.年に一度の法定検査が欠かせない.写真右に見える丸い圧力容器は,外径が約50cmで肉厚が約15cm.それに対して,中に入れる岩石試料のサイズは直径が20mmで長さが40mm.

応募を考えられている皆様へ

 応募を考えられてこのサイトをご覧になっている貴方は,既に本所の技術職員として重要な「何か」を持っておられるのではないでしょうか.それは,地球科学全般に関する知的好奇心であったり,観測や実験をするのにあるとチョット便利な何かの技術的知識や経験であったり,ひょっとすると業務を遂行する上での仲間とのコミュニケーション能力や何かもっと漠然とした人柄の良さのようなものであったりするかもしれません.貴方のその「何か」を本所で活かせる場面が必ずあります.仕事ですから楽しいことばかりではありませんが,業務で関わる研究に進展のあるのを目の当たりにすると,自分自身の技術的貢献に大きな充実感を覚えること間違いありません.


田中 伸一  総合観測室 技術専門職員( 2013年04月入所 ; 2020年04月寄稿 )

入所前はどのような仕事・研究をされていましたか?

 北海道大学大学院地球環境科学研究科に在籍して,大気・海洋の物質循環に関する研究で博士号を取得しました.その後,海洋の物質循環を研究するため,研究船による観測航海に数多く参加しました.

あなたの業務内容を教えてください

 総合観測室は,主に2つのカテゴリーの業務があります.1つは,長期の観測によって理解することができる地球現象を捉える目的で地震研究所が長期・継続的に実施している陸域地震観測,海域地震観測,火山観測,強震観測,地殻変動観測,地磁気観測やそれに用いる機材管理です.もう1つは,地震研究所の研究者が実施している多数の研究プロジェクト観測の支援です.そのため,技術職員は複数の業務を担当することになります.

 現在の主な業務内容である海域地震観測では,大きく分けて2種類の手法があります.1つは長期型海底地震計(LTOBS)を用いた観測です.LTOBSは,耐圧チタン球,地震計,データ収録装置,電池,音響通信装置,錘などで構成されており,技術職員の手で組み立てられます.観測船を用いて,多数のLTOBSを目標とする海域に設置し,1〜2年間地震の観測を行います.その後,観測船でLTOBSを回収し,解体してデータを取り出します.これらの一連の観測業務を担当しています.

 もう1つの手法は,海底ケーブルを用いた地震・津波の観測です.耐圧容器に地震計,圧力計,通信装置を組み込み,海底ケーブルで繋げ,連続的に観測します.岩手県沖には2系統の海底ケーブル式地震・津波観測システムが設置されており,これらの設備の維持管理業務も担当しています.


LTOBSの海底設置前の風景(観測船デッキにて)
 
海底ケーブル式地震・津波観測システム局舎

これまでの業務で印象に残ったことを教えてください

 新型の機動地震観測装置の導入と,それを利用した観測に主体的に携わったことです.この新型装置は,もともと地下構造探査用に開発されたものでしたが,カタログからは自然地震観測にも使える可能性がありました.そこで,従来型の観測装置との比較実験を行って利点と欠点を検討し,徹底的に評価しました.その結果,従来型とそん色ない波形が得られ,観測の機動力が格段に上がることがわかり合格となりました.その後,合計で350式の新型装置を導入され,多くの教員・技術職員と協力して,多数の観測に利用されました.2014年長野県神城断層地震(M6.7)や2015年ネパール・ゴルカ地震(Mw7.8),2016年の熊本地震(Mj7.3)や鳥取県中部地震(M6.6)の稠密緊急余震観測に利用され大きな成果を上げました.また,和歌山県や愛媛県,ニュージーランドにおける自然地震観測にも利用されました.これらの観測業務に携わったことで,地震観測装置に対する理解が深まり,地震観測も自信をもって実施できるようになりました.


共同研究者への新型装置の設置指導風景(ニュージーランド)
 
新型装置からのデータダウンロード風景

応募を考えられている皆様へ

 地震研究所は,国内のみならず海外においても精力的に多種多様な研究を行っており,総合観測室員は様々な形でこれらの観測に関わることになります.予め,豊富な経験や知識が必要なのではと心配されるかもしれませんが,安心してください.地震研究所の技術職員は,入所後に多彩な教育カリキュラムを受講したり,先輩諸氏の指導を受けたりすることで,着実に観測を実施する力を獲得できます.能力の向上にあわせて,徐々に実施できる業務の幅も増えるでしょう.また,日々進化する研究に対応するべく,地震研究所のみならず,全国の大学からも関連する技術職員が一同に集まって技術研修を行い,研鑽し,交流を深めています.フィールドワークが好きな方なら,今までの専門分野にとらわれず,是非応募を検討してみてください!

 最後に,この原稿の執筆は2020年4月27日で,新型コロナウイルスの蔓延により緊急事態宣言が出された後です.東京大学も総長の指示のもと,多くの教職員が在宅勤務になり.我々総合観測室員も在宅でデスクワークを行っています.例えば,多くの観測点のデータはインターネット回線を通じてリアルタイムに流通しており,自宅からでもデータをチェックできたり,地震の震源決定を行ったりすることができます.また,多数ある機材の帳簿管理や,過去に行った観測の情報をまとめて文章化したり,観測を補助するためのプログラミングを作成したりと,制限のある中でも活動を止めず業務を遂行しています.自然災害に立ち向かう地震研究所は,このような有事の際にも柔軟に対応できる体制であることも付け加えておきます.


西本 太郎  総合観測室 技術専門職員( 2013年04月入所 ; 2014年04月寄稿 )

入所前はどのような仕事・研究をされていましたか?

 大学院修士課程で地球惑星物性学分野の研究室に所属しており,地球内部のマグマ物質に関する研究を行っていました.大学院修士課程修了後,地震研究所の技術職員として入所しました.

あなたの業務内容を教えてください

 私は2015年4月時点で入所3年目であり,様々な分野の業務に携わることが出来ています.入所初年度では主に地震計の原理やデータ収録の仕組み,観測点からのデータ送信の方法など地震観測に関する基礎の部分を学ぶことが出来ました.入所2年目からは海域の地震観測や地磁気観測が主な業務内容となり,その他に陸域の観測や火山観測で少しずつ経験を積んでいます.


八ヶ岳地球電磁気観測所における地磁気絶対観測の様子.磁気儀という精密な装置を使用して地磁気の構成データの観測を行っています.雪の降る寒い時期でも行っており,毎月の観測の積み重ねが重要です.

これまでの業務で印象に残ったことを教えてください

 入所して1年目は観測とは何かを把握するのが大変でした.ひとえに観測といっても皆様はどのようなことを想像されるでしょうか?観測とは正しく「測定」し,正しく「記録」し,正しく「伝送」することです.何か1つでも分からないことがあれば正しく「観測」出来ているか分かりません.また,トラブルがあった時どこが悪いのかを見つけることが出来ません.そういった意味でも入所してすぐは右も左も分からない状態でした.

 入所して2年目になり,先輩職員と観測点のメンテナンスに行き,別々で作業をする機会がありました.入所したての頃は聞かなければ分からなかったことが,少しずつ知識と経験を積み理解が深まってきたことにより,ようやく1人で作業が出来るようになりました.また,観測は自分の思い通りにならないことが多々あります.それは地球を相手に仕事をしているからです.雷や台風で機器が故障することもありますし,原因不明の機器トラブルもあります.しかし重要な観測を「途絶えることなく続けていく」ために,持っている知識で解決出来るよう努力します.何も分からない状態で入所しましたが,自分の力で問題を解決した時の達成感は非常に大きなものでした.


衛星回線を使用した地震観測データの伝送のため,機材の調整を行っている様子.携帯電話が通じにくい場所やインターネット回線がない場所でも重要な観測が行われており,地震観測データは地球を飛び出て宇宙にある衛星経由で東京まで送られてきます.

応募を考えられている皆様へ

 私はこれまで観測に関わる作業をほとんどしてきませんでした.ただ大学院の研究時代,新規の実験装置を組み立てたり調整したりすることが非常に楽しかったのを覚えています.皆様の中には「こんなものを作ってみたい」,「あんなものがあったらいいな」と考えている方もいるのではないでしょうか.頭の中では想像出来ても,いざそれを実現しようとすると1から10まで全てを知っていなくてはいけません.技術職員という仕事は観測の1から10までを知っている必要があり,そんな好奇心,向上心のある方には非常にやりがいを感じる職場だと思います.


浦野 幸子  技術開発室 ( 開発系 ) 技術専門職員( 2011年04月入所 ; 2022年03月更新 )

入所前はどのような仕事・研究をされていましたか?

 機械工学専攻(生産加工分野)で修士課程修了後,印刷機械メーカーの研究開発部門で印刷資材に関する基礎開発に携わりました.実験装置も自前で作る必要があり,電子回路製作はこのときの上司から学びました.

あなたの業務内容を教えてください

 技術開発室(開発系)では地震研究所の研究者が観測・実験で使用する機器を製作しています.観測・実験で使用する装置は,もちろん市販されているものがたくさんありますが,今まで調べられていない事象を調べたいと研究者が考えたときに新しい装置が必要になることがあります.(装置開発が研究対象の研究者もいます.)こういった時に研究者の求めるものを製作するのが私たちの仕事です.機械工作部門と電気工作部門があり,私は主に電子工作を担当しています.きちんとした設計図を持って「これを作ってください」という依頼もあれば,「こういうことがしたいのだけれど,どういう形にすれば良いかな?」という相談から始まることもあります.後者の場合は機械/電気の垣根なくより良い形になるようアイデアを話し合います.


惑星探査用の重力加速度計ユニット:
電子回路部分もアルミ部品も技術開発室製

これまでの業務で印象に残ったことを教えてください

 依頼者との距離が近いので,自分たちが作り上げたものがどのように使われたのかを知ることができます.中には深海や宇宙といった特殊な環境で使う想定の機器もあり,すごいことに関わらせていただいているなと感じます.最近では南極観測隊員となった依頼者が,製作した装置が南極で使用されている様子を教えてくださり,こんな場所で使われているのだなと感慨深かったです.


南極氷床上での傾斜・温度・地面振動の測定
 
測定が行われたテント

応募を考えられている皆様へ

 手を動かしてものを作ることが好きで,工夫を重ねて改良することに喜びを感じる人に向いている仕事です.工作室の設備の維持管理や工作室を利用する方への指導といった業務もありますので,整理整頓が得意,面倒見がよいといった特性をお持ちの方は重用されると思います.また,私は産休・育休を経て現在は育児短縮勤務制度や在宅勤務制度を利用させていただいており,ワークアンドライフバランスの取りやすい職場でもあります.今までの経歴が地震や火山に関わるものでなくても大丈夫です.(興味があれば教えてくれる人・機会はたくさんあります.)技術者として,研究者とは別の視点で研究上の問題を解決する仕事をしてみませんか.


外西 奈津美  技術開発室 ( 分析系 ) 技術専門職員( 2009年04月入所 ; 2022年02月更新 )

入所前はどのような仕事・研究をされていましたか?

 大学では古海洋学に関する修士号を取得しました.その後,産業技術総合研究所の地質調査総合センターにおいて契約職員として働いていました.そこでは,安定同位体比質量分析装置・走査型電子顕微鏡・蛍光X線分析装置などを用いて,海洋底堆積物の各種化学分析業務に携わりました.

あなたの業務内容を教えてください.

 地震研究所においては,主に岩石試料の化学分析業務に取り組んでいます.研究者からの依頼に応じ,試料調製から分析まで一貫して請負うことが多いです.


クリーンルームにおける作業風景:
岩石資料を溶液化し,分析に必要な元素のみ分離・抽出している

 分析を依頼される試料はその形状・性質ともに多岐にわたりますが,そのサンプルの状態を見極め,適切に前処理や分析を行うことが重要になります.また,依頼者の求める分析精度の結果を提供する為に,分析手法の最適化や分析装置の保守管理なども行います.その他,所内外の研究者及び学生への分析サポートも業務の一つです.

 私が担当している分析装置は,
  • XRF(蛍光X線分析装置)
  • EPMA(走査型電子顕微鏡)
  • ICP-MS(誘導結合プラズマ質量分析装置)
 等です.


電子プローブエックス線マイクロアナライザ
JEOL社製 JXA-8800

 もう一つの業務として,所内における薬品管理や環境安全の向上に関わる業務も担当しています.

これまでの業務で印象に残ったことを教えてください

 2011年の霧島山新燃岳,2016年以降の西之島および2021年の福徳岡ノ場の噴火活動が特に印象に残っている出来事です.火山噴出物試料の化学分析の結果は,噴火活動の推移を検討する上で重要な指標の1つとなります.そのため,出来る限り迅速な分析が求められる一方で,同時にミスなく分析を終えられるよう,常に心掛けて業務にあたっています.これらの経験を通じ,自分の業務が火山の研究だけでなく社会生活にも深く関係していることを改めて実感しました.

応募を考えられている皆様へ

 地震研究所に入所する前までは地震・火山といった自然現象に一般的な興味以上のものは持っていませんでしたが,地球科学分野で化学分析に関わる仕事がしたいと思い私は応募しました.海から陸へと研究対象は変わりましたが,分析装置を用いて化学分析を行うアプローチの方法は同じです.仕事を通じて,社会とつながる実感や研究活動に携われるやりがいもあります.貴方も自分の持つ技術を活かし,研究の一翼を担う仕事に挑戦しませんか.


宮川 幸治  総合観測室 技術専門職員( 2007年04月入所 ; 2022年02月更新 )

入所前はどのような仕事・研究をされていましたか?

 大学院で,精密な人工震源を用いた研究をして修士号を取得しました.その後,つくばにある研究所にて,海外に展開されていた地震観測網(主にインドネシアや南太平洋の国々など)の運用などを行う,フィールドエンジニアをしていました.

あなたの業務内容を教えてください

 現在は主に,海域観測,強震観測,地磁気観測,海外観測,臨時地震観測などを担当し,他の技術職員や教員と協力しながら業務に取り組んでいます.「○○観測」と名前の付く業務が多いのが総合観測室の特徴です.観測業務では,まず観測機材を準備・点検し,その後観測現場に機材を持ち込んで設置・調整し,質の高いデータを継続して取得するべく保守・運用を行います.観測現場の場所決め(サイト選定)から始まる業務もあれば,遂行するのは業者さんでその監督に徹する業務もあります.このような観測業務を,さまざまな研究分野,さまざまなフィールドで実施しています.大きな地震が発生したり,火山活動が活発化したりした時には,現地に急行して緊急観測を実施することもあります.

携わった業務については,年に1度開催される 職員研修(全体研修) や,技術研究報告 などで報告しています.自分が報告したものについては 個人ページ に纏めていますので,ご参照下さい.


2016年熊本地震で設置した緊急地震観測点の保守作業.本地震では,前震の翌日から緊急地震観測点の設置作業が行われ,本震2日後までに10点が設置されました(2016/6/22)
 
ネパールにおける地震観測点の設置作業.ソーラー発電による観測点で,携帯電話通信を用いて地震データを準リアルタイムで首都カトマンズに送信しています(2018/03/14)

これまでの業務で印象に残ったことを教えてください

 これまで海外での技術支援に比較的多く携わっており,南アフリカ・中国・ネパールなどで地震観測を,タイ・ミクロネシア連邦・トンガなどで地磁気観測を支援して来ました.普通の観光では行けないような奥地まで行き,さまざまな文化や異なる価値観を持つ現地の人々や海外の研究者・技術者・学生と一緒に作業をすることは大変刺激的で,印象深いです.

 また,我々が実施した技術支援や取得したデータを用いて,新たな知見が得られるような研究・論文が発表されたり,学生らが研究に利用して成果を挙げたりすると,地道にコツコツと観測をして来て良かったなと思います.

応募を考えられている皆様へ

 地震研究所は研究教育機関であり,その研究教育に必要な観測や技術開発を,技術の面からサポートするのが技術職員のお仕事になります.総合観測室の技術職員は主に観測業務に携わることになりますが,さまざまな人と出会い,さまざまな場所に行き,さまざまな種類の観測業務に携わりたい方にはやりがいのある職場だと思います.また,大学ですので,ある意味「自由闊達」な風土が企業や官庁に比べてあると思います.学生と一緒に作業するのも楽しいです.勤務先は地震研究所本所であり,転勤の心配がないことも安心材料と思います.

 また,地震研究所技術部の長所として,「技術職の仲間がいる」ことも個人的には大きいと思っています.技術部は現在19名の技術職員で構成されていますが,これだけの数の技術職員が,毎日顔を合わせられる距離で一緒に働いている職場はなかなか無いと思います.自分の前職の職場では,近くにいる技術職の仲間は1人しかおらず,さまざまな技術的な問題に直面した時に,どう解決したら良いか凄く悩みました.同じ分野の技術を持つ仲間が多くいると,さまざまな相談が出来て自分の成長にも繋がると思います.

 フィールドでの観測業務に興味をお持ちの方は,是非御検討下さい。


渡邉 篤志  総合観測室 技術専門職員( 2007年04月入所 ; 2011年12月寄稿 )

入所前はどのような仕事・研究をされていましたか?

 九州大学地震火山観測研究センターに在籍して,火山の観測・研究で博士号を取得しました.その後,同センターの非常勤研究員として火山や地震の観測を精力的に行っていました.

あなたの業務内容を教えてください.


平成新山溶岩ドーム山頂での火山ガス観測
 火山での地球物理観測が主な業務内容です.地震研究所は浅間山,伊豆大島,富士山,霧島山に火山観測網を展開しているので,これらが主なフィールドになります.

 火山では地震計の他にもGPS受信機,傾斜計,磁力計,空振計,可視・赤外カメラや各種測量器などの多種多様な機器を使用しています.山頂部では電力線や通信線が引けないので,太陽電池パネルによる発電や無線LANやデータ通信端末を使った通信手段を採用しています.

 各観測点には計測機器と通信機器が設置されていて,それらの保守作業や観測点の新設,機材の管理などに携わります.観測点の中には車輌では近付けない所も多数あり,機材を背負っての山歩きもしばしばで,体力もそれなりに必要です.その他,ガス観測や岩石試料採取などの物質科学的な調査のサポートをすることもあります.先に挙げた4つの火山に限らず,火山噴火が発生すると必要な機材を持って出掛け,全国の大学,研究機関,気象庁などと協力しながら臨時観測に従事します.

これまでの業務で印象に残ったことを教えて下さい

 2011年1月に始まった霧島山新燃岳の噴火です.日常的に噴火している桜島を除けば,本格的な火山噴火の現場に赴くのは2000年の有珠山以来でした.日々変化する活動状況に生きている地球を感じると同時に,観測データは研究だけでなく火山防災にも利用されるので,身の引き締まる思いでした.また,地震研究所の業務ではありませんが,他機関からの要請で南極での地震観測に参加したことは,特に印象深い仕事の一つです.

応募を考えられている皆様へ

 火山は地球の活動を肌で感じられる場であり,多くは風光明媚な所でもあります.そのような都会の喧噪を離れた場所での野外作業はとても気持ちが良く,準備や後片付けといった長く地味な苦労が報われます.また,火山の周りには温泉が多く,夏には作業の汗を流し,冬には冷えた体を温める…こともあります.さぁ,一緒にフィールドへ出掛けましょう.


浅間山火口縁にて火口内を観察・撮影する技術職員