技術職員からのメッセージ(応募を考えている皆様へ)

日本列島は世界で最も地震・火山活動が活発な地域の一つです.2011年1月には霧島山が294年ぶりにマグマ噴火し, 3月11日には千年に一度といわれる東北地方太平洋沖地震が発生しました.このような中で,地震研究所は「観測固体地球科学分野を中心とする最先端研究を推進し,地震・火山現象について新たな理解への道を切り拓いて,災害軽減に貢献すること」を使命として活動しており,更に研究機関に向けた情報発信や,社会に向けての教育普及・啓発活動も行っています.技術職員も研究者達と共に,上記の使命を担うべく業務に従事しています.具体的には,地震や火山活動に伴った様々な現象の観測や,観測・実験研究に必要な機器の開発や情報流通基盤整備などです.このような多様な業務の中から,我々の主な仕事について以下にご紹介します.

2021/05/12 更新
2011/12/13 作成

目次(役職は2021年4月時点)

増田 正孝  総合観測室  技術専門職員( 2012年04月入所 ; 2020年05月寄稿 )
田中 伸一  総合観測室  技術専門職員( 2013年04月入所 ; 2020年04月寄稿 )
佐伯 綾香  総合観測室  一般技術職員( 2016年04月入所 ; 2019年05月寄稿 )
宮川 幸治  総合観測室  技術専門職員( 2007年04月入所 ; 2019年05月寄稿 )
上原 美貴  技術開発室 ( 観測情報系 )  技術専門職員( 2017年10月入所 ; 2018年05月寄稿 )
辻  浩  総合観測室  技術専門員 ( 1981年03月入所 ; 2018年04月寄稿 )
安藤 美和子 総合観測室  技術専門職員( 2014年06月入所 ; 2015年04月寄稿 )
竹内 昭洋  技術開発室 ( 実験系 )  技術専門職員( 2014年04月入所 ; 2015年04月寄稿 )
西本 太郎  総合観測室  一般技術職員( 2013年04月入所 ; 2014年04月寄稿 )
浦野 幸子  技術開発室 ( 開発系 )  技術専門職員( 2011年04月入所 ; 2011年12月寄稿 )
外西 奈津美 技術開発室 ( 分析系 )  技術専門職員( 2009年04月入所 ; 2011年12月寄稿 )
渡邉 篤志  総合観測室  技術専門職員( 2007年04月入所 ; 2011年12月寄稿 )


増田 正孝  総合観測室 技術専門職員( 2012年04月入所 ; 2020年05月寄稿 )

入所前はどのような仕事・研究をされていましたか?

 物理分野で博士号を取得後,研究員等として素粒子実験や宇宙線観測の研究をおこなっていました.

あなたの業務内容を教えてください

 現在は主に,地殻変動観測および海底地震観測を行っています.また,今年度は総合観測室職員の意見の取りまとめ役も行っています.他にも陸域地震観測,電磁気MT観測,宇宙線観測,データの流通に関する業務に携わりました.

これまでの業務で印象に残ったことを教えてください

 三宅島で2016年に行ったGNSSの観測です.この観測では,測地学を専門とする全国の大学・研究機関の教職員や学生(総勢40名弱)が集まり,各機関が所有するGNSS機材を持ち込んで,観測点30点を設置しました.従来の連続観測点10点と合わせて40点からなる稠密な地殻変動観測が行われました.観測点を立ち上げるところから,データを取得し,即時的な解析・解釈をおこなうところまでが行われ,とても勉強になりました.


北東側から写した三宅島2000年カルデラ

応募を考えられている皆様へ

 私は地球物理に関する観測については門外漢でしたが,教員や技術職員の先輩後輩に地震観測点の立ち上げ方から地殻変動データの解析方法まで教えていただきました.教職員間の距離が近く,技術的なことから最新の研究まで幅広く議論したり,相談したりできることも職場の魅力の一つだと思います.ご興味があれば,ぜひご応募ください.


田中 伸一  総合観測室 技術専門職員( 2013年04月入所 ; 2020年04月寄稿 )

入所前はどのような仕事・研究をされていましたか?

 北海道大学大学院地球環境科学研究科に在籍して,大気・海洋の物質循環に関する研究で博士号を取得しました.その後,海洋の物質循環を研究するため,研究船による観測航海に数多く参加しました.

あなたの業務内容を教えてください

 総合観測室は,主に2つのカテゴリーの業務があります.1つは,長期の観測によって理解することができる地球現象を捉える目的で地震研究所が長期・継続的に実施している陸域地震観測,海域地震観測,火山観測,強震観測,地殻変動観測,地磁気観測やそれに用いる機材管理です.もう1つは,地震研究所の研究者が実施している多数の研究プロジェクト観測の支援です.そのため,技術職員は複数の業務を担当することになります.

 現在の主な業務内容である海域地震観測では,大きく分けて2種類の手法があります.1つは長期型海底地震計(LTOBS)を用いた観測です.LTOBSは,耐圧チタン球,地震計,データ収録装置,電池,音響通信装置,錘などで構成されており,技術職員の手で組み立てられます.観測船を用いて,多数のLTOBSを目標とする海域に設置し,1〜2年間地震の観測を行います.その後,観測船でLTOBSを回収し,解体してデータを取り出します.これらの一連の観測業務を担当しています.

 もう1つの手法は,海底ケーブルを用いた地震・津波の観測です.耐圧容器に地震計,圧力計,通信装置を組み込み,海底ケーブルで繋げ,連続的に観測します.岩手県沖には2系統の海底ケーブル式地震・津波観測システムが設置されており,これらの設備の維持管理業務も担当しています.


LTOBSの海底設置前の風景(観測船デッキにて)
 
海底ケーブル式地震・津波観測システム局舎

これまでの業務で印象に残ったことを教えてください

 新型の機動地震観測装置の導入と,それを利用した観測に主体的に携わったことです.この新型装置は,もともと地下構造探査用に開発されたものでしたが,カタログからは自然地震観測にも使える可能性がありました.そこで,従来型の観測装置との比較実験を行って利点と欠点を検討し,徹底的に評価しました.その結果,従来型とそん色ない波形が得られ,観測の機動力が格段に上がることがわかり合格となりました.その後,合計で350式の新型装置を導入され,多くの教員・技術職員と協力して,多数の観測に利用されました.2014年長野県神城断層地震(M6.7)や2015年ネパール・ゴルカ地震(Mw7.8),2016年の熊本地震(Mj7.3)や鳥取県中部地震(M6.6)の稠密緊急余震観測に利用され大きな成果を上げました.また,和歌山県や愛媛県,ニュージーランドにおける自然地震観測にも利用されました.これらの観測業務に携わったことで,地震観測装置に対する理解が深まり,地震観測も自信をもって実施できるようになりました.


共同研究者への新型装置の設置指導風景(ニュージーランド)
 
新型装置からのデータダウンロード風景

応募を考えられている皆様へ

 地震研究所は,国内のみならず海外においても精力的に多種多様な研究を行っており,総合観測室員は様々な形でこれらの観測に関わることになります.予め,豊富な経験や知識が必要なのではと心配されるかもしれませんが,安心してください.地震研究所の技術職員は,入所後に多彩な教育カリキュラムを受講したり,先輩諸氏の指導を受けたりすることで,着実に観測を実施する力を獲得できます.能力の向上にあわせて,徐々に実施できる業務の幅も増えるでしょう.また,日々進化する研究に対応するべく,地震研究所のみならず,全国の大学からも関連する技術職員が一同に集まって技術研修を行い,研鑽し,交流を深めています.フィールドワークが好きな方なら,今までの専門分野にとらわれず,是非応募を検討してみてください!

 最後に,この原稿の執筆は2020年4月27日で,新型コロナウイルスの蔓延により緊急事態宣言が出された後です.東京大学も総長の指示のもと,多くの教職員が在宅勤務になり.我々総合観測室員も在宅でデスクワークを行っています.例えば,多くの観測点のデータはインターネット回線を通じてリアルタイムに流通しており,自宅からでもデータをチェックできたり,地震の震源決定を行ったりすることができます.また,多数ある機材の帳簿管理や,過去に行った観測の情報をまとめて文章化したり,観測を補助するためのプログラミングを作成したりと,制限のある中でも活動を止めず業務を遂行しています.自然災害に立ち向かう地震研究所は,このような有事の際にも柔軟に対応できる体制であることも付け加えておきます.


佐伯 綾香  総合観測室 技術職員( 2016年04月入所 ; 2019年05月寄稿 )

入所前はどのような仕事・研究をされていましたか?

 大学院理学系研究科の修士課程に在籍し,沈み込みプレート境界地震発生帯物質科学の研究を行っていました.修士号取得後,新卒で地震研に入所しました.

あなたの業務内容を教えてください

 現在担当している業務は,陸域の自然地震観測・共同利用機材の管理・地震波形の読み取り・データ流通のサーバー管理などです.こちらの業務に加えて,先生方の科研費などで行われるプロジェクト業務や,巨大地震が発生した際の緊急観測などに参加することもあります.

 入所後1年間は,OJTとして先生方や先輩技術職員の観測業務について行き,現場作業や所内作業を教わります.その後,上記のように担当業務が決まります.この中で地震波形の読み取り業務とプロジェクト業務として参加した業務を紹介します.

地震波形の読み取り業務は,地震研究所で収録している全国のデータを用いて地震波相を手動で読み取り震源決定を行う作業です.地震波相の読み取りは,自動処理技術もありますがエラーや読み間違いも多いため,手動処理も行っています.出張以外で所内にいる時は,毎日行っています.この作業を常時続けることにより,普段よりも地震が増えていないか・観測データ(地震計や収録機器)に異常が無いかなど,地震活動やデータの質の監視を行うことができます.活動を監視し,異常が見られた場合には,陸域の自然地震を研究されている先生に報告します.活動の推移によっては臨時観測が行われることもあり,とてもやりがいのある仕事です.

 次に,昨年プロジェクト業務として参加した,先島諸島で行われたサンゴの試料採取業務を紹介します.この研究はパリ物理学研究所(IPGP)の研究者と合同で行われた調査です.石垣島や宮古島などの離島へ行き,チェーンソーを用いてのサンゴの試料採取や測量を行いました.このように,プロジェクト業務では普段は行わない作業を担当することがあり,さまざまな現場へ赴くことができます.


定常地震観測点の場所を決めるための予備調査として,臨時の地震観測装置を設置している様子です
 
サンゴの試料採取作業をドローンで撮影した写真です.先輩技術職員が撮影しました

これまでの業務で印象に残ったことを教えてください

 やはり出張の印象が良く残っています.上記の沖縄はもちろん,普段は入れない第二海堡や,黒部ダムの中に入ったことも印象に残っています.出張先では,色々な方と出会い,地元のおいしい食べ物を食べ,時には温泉に入ることもできます.

応募を考えられている皆様へ

 業務ではそれぞれの担当者が責任を持って従事しますが,その分各自にある程度の裁量があり,自分次第で新たな技術の習得や新たな現場での作業が行えます.さまざまな人や土地に出会えることは日々の刺激になり,また自分が担当した業務の論文や学会発表を見ると,とてもやりがいを感じます.このホームページで紹介されているように,多種多様な業務があり,技術職員も多種多様なバックグラウンドを持っています.技術職と聞くと身構えてしまう方もいらっしゃると思いますが,1年間のOJTがあり,分からないことは先輩技術職員が親切に教えてくれます.地震研の技術職員は自分の強みを生かし,また新たな技術を習得することができる職種です.ご興味を持たれた方は,応募してみてはいかかでしょうか.


宮川 幸治  総合観測室 技術専門職員( 2007年04月入所 ; 2019年05月寄稿 )

入所前はどのような仕事・研究をされていましたか?

 名古屋大学大学院で,精密な人工震源を用いた研究をして修士号を取得しました.その後,(独)防災科学技術研究所の国際地震観測管理室にて特別技術員として勤務し,防災科研が展開する海外の地震観測網(主にインドネシアや南太平洋の国々など)の運用を行う,フィールドエンジニアをしていました.

あなたの業務内容を教えてください

 現在は主に,強震観測,地磁気観測,海底ケーブル保守,海外観測,臨時地震観測,海域観測など,複数の業務を教員や他の技術職員と協力しながら行っています.ずっと同じ業務をする訳では無く,業務の入れ替えをしつつさまざまな業務に携わることになりますが,「○○観測」と名前の付く業務が多いのが総合観測室の特徴です.観測業務では,まず観測機材を準備・点検し,その後観測現場に機材を持ち込んで設置・調整し,質の高いデータを継続して取得するべく保守・運用を行います.観測現場の場所決め(サイト選定)から始まる業務もあれば,遂行するのは業者でその監督に徹する業務もあります.このような観測業務を,さまざまな研究分野,さまざまなフィールドで実施しています.大きな地震が発生したり,火山活動が活発化したりした時には,現地に急行して緊急観測を実施することもあります.

携わった業務については,年に1度開催される 職員研修(全体研修) や,技術研究報告 などで報告しています.自分が報告したものについては 個人ページ に纏めていますので,ご参照下さい.


2016年熊本地震で設置した緊急地震観測点の保守作業.本地震では,前震の翌日から緊急地震観測点の設置作業が行われ,本震2日後までに10点が設置されました(2016/6/22)
 
ネパールにおける地震観測点の設置作業.ソーラー発電による観測点で,携帯電話通信を用いて地震データを準リアルタイムで首都カトマンズに送信しています(2018/03/14)

これまでの業務で印象に残ったことを教えてください

 これまで海外での技術支援に比較的多く携わっており,南アフリカ・中国・ネパールなどで地震観測を,タイ・ミクロネシア連邦・トンガなどで地磁気観測を支援して来ました.普通の観光では行けないような奥地まで行き,さまざまな文化や異なる価値観を持つ海外の研究者・技術者・学生と一緒に作業をすることは大変刺激的で,印象深いです.

 また,我々が実施した技術支援や取得したデータを用いて,新たな知見が得られるような研究・論文が発表されたり,学生らが研究に利用して成果を挙げたりすると,地道にコツコツと観測をして来て良かったなと思います.

応募を考えられている皆様へ

 地震研究所は研究教育機関であり,その研究教育に必要な観測や技術開発を,技術の面からサポートするのが技術職員のお仕事になります.総合観測室の技術職員は主に観測業務に携わることになりますが,さまざまな人と出会い,さまざまな場所に行き,さまざまな種類の観測業務に携わりたい方にはやりがいのある職場だと思います.また,大学ですので,ある意味「自由闊達」な風土が企業や官庁に比べてあると思います.学生と一緒に作業するのも楽しいです.勤務先は地震研究所本所であり,転勤の心配がないことも安心材料と思います.

 また,地震研究所技術部の長所として,「技術職の仲間がいる」ことも個人的には大きいと思っています.技術部は現在19名の技術職員で構成されていますが,これだけの数の技術職員が,毎日顔を合わせられる距離で一緒に働いている職場はなかなか無いと思います.自分の前職の職場では,近くにいる技術職の仲間は1人しかおらず,さまざまな技術的な問題に直面した時に,どう解決したら良いか凄く悩みました.同じ分野の技術を持つ仲間が多くいると,さまざまな相談が出来て自分の成長にも繋がると思います.

 フィールドでの観測業務に興味をお持ちの方は,是非御検討下さい。


上原 美貴  技術開発室 ( 観測情報系 ) 技術専門職員( 2017年10月入所 ; 2018年05月寄稿 )

入所前はどのような仕事・研究をされていましたか?

 計算化学分野で修士号を取得後,IT業界に就職し,検索・ポータルサイトのサーバ管理や,企業の情報システム部門で社内システムの管理に携わっていました.2008年からは地震研究所の非常勤職員として,所内の基幹ネットワーク保守等を担当してきました.

あなたの業務内容を教えてください

 所内ネットワークのほか,大規模高速並列計算機システムの維持管理,また,地震研究所が保有する古い地震記録を整理し,データベースを構築することもミッションです.

これまでの業務で印象に残ったことを教えてください

 見えないトラブルの原因を探して,ときには床下や配管スペースを覗いてほこりまみれになったり,所内を走り回って聞き込みしたりと泥臭いこともします.その分,集めた証拠を元に推論を重ね,問題解決に至ったときの達成感は一入です.

応募を考えられている皆様へ

 ネットワークの仕事は「問題なく動いてあたりまえ」とされ,評価につながりにくいと言われますが,地震研究所はその「あたりまえ」も正しく評価される「ありがたい」職場です.誰かの役に立つことが好きな人,縁の下の力持ちになれる人をお待ちしています.


辻  浩  総合観測室 技術専門員( 1981年03月入所 ; 2018年04月寄稿 )

入所前はどのような仕事・研究をされていましたか?

 高校卒業後,地元に近い地震研究所浅間火山観測所に入所しました.専門知識も教養もまったく無い真っ白な状態でした.雄大な浅間山を北方に望む場所で育ったのですが,当時小学生だった1973年の浅間山噴火で火山の脅威を実感しました.

あなたの業務内容を教えてください

 私の現在の勤務地は長野県小諸市にある小諸地震火山観測所です( 注 : 新たに採用する技術職員の勤務地は東京になります ).主に浅間山の観測業務に携わっており,火口を取り囲む28観測点の保守を行っています.その中でも火口縁にある観測点には地震計の他にも多岐にわたる観測機器が設置されています.他には,小諸市に近い八ヶ岳麓での地磁気観測や,信越地域における地震観測の支援を行っています.


浅間山火口西観測点の保守(2017/11/21).

これまでの業務で印象に残ったことを教えてください

 1986年11月の伊豆大島噴火の観測です.三原山が噴火したので数日前から主にカルデラ内で水準測量をしていたのですが,21日にそのカルデラ床で割目噴火が発生しました.噴火に伴うこれまでの有感地震とは違う,地面が回転するような地震が発生して間もなく,背後でシューッという音と共に水蒸気が立ち上り,続いて灰色の噴煙が吹き出しました.取りあえず,より安全な場所に避難して噴火の様子を観察したのですが,噴泉のごとく高く吹き上がった真っ赤な溶岩はこの世の物とは思えないほど感動的でした.と同時に,連続する地響きと驚きで膝が震えていたのを覚えています.その日の夜,全島民が避難するという事態となりましたが,私は数名の教職員と共に伊豆大島火山観測所に残り業務を継続しました.この時ほど強い責任と使命を感じたことはありませんでした.

応募を考えられている皆様へ

 地震研究所に入所し30年以上経って思うのは,この仕事は人知れず地道であるということです.時には精神的にも肉体的にも辛いと思うことがあるかもしれません.観測系技術職員の業務は主に研究に必要な観測データを研究者に提供することを目的とします.そして,その成果がやがて人命や財産を守り,防災・減災に役立つものと信じています.


安藤 美和子  総合観測室 技術職員( 2014年06月入所 ; 2015年04月寄稿 )

入所前はどのような仕事・研究をされていましたか?

 大学院工学系研究科にて大気化学分野で修士号を取得後,研究員として産業技術総合研究所の計測標準研究部門に勤務しておりました.産総研では大気観測に用いる二酸化炭素標準ガスの開発に携わっており,ガスクロマトグラフィー,フーリエ変換赤外分光光度計,磁気式酸素計,キャビティリングダウン吸収分光器を用いた微量ガスの成分分析や,大質量精密天秤を用いた質量比混合法による標準ガスの調製に従事しておりました.

あなたの業務内容を教えてください

 観測業務は,おおよそ陸域・海域・火山の3つの分野に分けることができます.入所1年目は教育期間ということで,どの分野の業務も一通り経験することになります.私の場合,入所後の10か月間で以下の業務に携わりました.
  • 定常地震観測点の点検・保守(栃木県,福島県)
  • 地殻構造探査(石川県,富山県)
  • 臨時地震観測(栃木県,長野県)
  • 海底地震計の設置と回収,海底の構造探査(東北沖,房総沖)
  • 定常地震観測点の新設(高知県)
 入所後1〜3か月は,栃木県や福島県の定常地震観測点の点検・保守業務にて,先輩職員から現地で観測データの伝送方法や地震観測点の構成,使用している地震計について教えて頂きました.

 2か月目には石川県および富山県で行われた地殻構造探査に携わり,沿道の決められたポイントへの地震計の設置作業に従事しました.その後,栃木県と長野県にて,地震の余震活動を観測することを目的とした臨時の地震観測に携わりました.臨時観測では,地震発生直後に臨時の観測点設置に必要な地震計やデータ収録装置などを準備して現地に赴き,車で現地を移動しながら地震計の設置に適した場所を探します.設置に適した場所を見つけたら土地所有者と土地貸借の交渉を行い,土地貸借の許可が下りたら臨時の観測点を設置します.臨時観測が数か月に及ぶ場合は,バッテリーの交換やデータの吸い上げなどの保守作業のために,臨時観測点の設置から撤収までの間に数回現地に出張することもあります.


設置した臨時地震観測点.写真中央の岩のくぼみに地震計を固定し,浸水を避けるため,岩の上にデータ収録装置を収めた箱を設置してあります.

 5か月目には初めて海域の業務を経験し,約10日間の航海で房総沖および東北沖における海底地震計の設置と回収作業に携わりました.船上での業務は,その独特の勤務体制や美しい海の風景や船上生活など,陸上の業務とはまた異なる刺激があり,飽きることはありませんでした.

 9か月目からは,高知県における定常観測点の新設業務に携わっております.設置場所を決めるところから始まり,地震計台の構造をどのようにするか考え,工事の見積もりを依頼し,役所への各種申請手続きを行うなど,業務は多岐に亘りますが,経験豊富な先輩職員からのフォローがあり,また気軽に相談できる環境なので,不安に感じることはありません.

 この他には,所外研修として気象庁で開催された地震火山業務処理技術研修に参加したり,業務に必要な資格(フォークリフト,クレーン,玉掛け)を取得するために教習所に通うなどしておりました.

これまでの業務で印象に残ったことを教えてください

 入所後4か月目に初めて臨時地震観測に行ったときのことです.住宅地から離れた山の中で,「熊に注意!」の看板に内心ビクビクしながら熊鈴を鳴らしつつ観測点を設置したのは,忘れられない思い出です(幸いにも熊と直接対面することはありませんでした).その後,回収した観測データを利用して余震の震源決定を行い,その結果を8か月目の職員研修で発表しましたが,何気なく利用されている観測データには,技術職員の汗と涙が詰まっているのだなと実感しました.

応募を考えられている皆様へ

 私のように,入所するまで地震観測と全く接点がなかった職員も多く在籍しております.観測に関する経験や知識は入所後に身につけることが可能です.少しでも技術職員の業務内容に興味がありましたら,ぜひ応募をご検討ください.


竹内 昭洋  技術開発室 ( 実験系 ) 技術専門職員( 2014年04月入所 ; 2015年04月寄稿 )

入所前はどのような仕事・研究をされていましたか?

 大学の研究員として,地震や火山噴火といった地殻活動と関連する電磁気的現象の研究をしていました.そのメカニズムを解明するために室内で岩石試料を変形させた際の電気的振る舞いを計測したり,実際に野外で地磁気や地電流を観測したりしていました.

あなたの業務内容を教えてください

 本所には,その目的に応じた大小様々な室内実験装置があります.教員からの要請に応じて実験室や実験装置のメンテナンスを行なうことが,時間的に最も大きな業務になっています.それら装置を使った実験を行なう際には,その準備・装置の操作・後片付けといった技術的な支援もします.また,既存の実験装置を改良するために,新しい治具をデザインしたり,最近バージョンのソフトウェアで制御プログラムを組み直したりしもしています.


岩石試料を上下方向と左右方向から押し,挟み込んだ岩石ブロックをゆっくりと滑らせる実験装置.新しい制御用PCとLabVIEWプログラムを導入し,長期間検証しようとしているところ.

これまでの業務で印象に残ったことを教えてください

 本所の実験装置は,最新鋭のものから私より年寄りなのではと思えるものまで様々です.古い論文で概念図を見たことがある装置がまだ現役でいるのを見ると,「おお,これがあの装置か」と何だか感慨深くなる気がします.また,何年も使われなくなっている状態の装置を見ると,何とか復活させてやりたいと思ってしまいます.


地下10-20kmの高温高圧環境を模擬した条件で岩石試料を圧縮破壊させる実験装置.年に一度の法定検査が欠かせない.写真右に見える丸い圧力容器は,外径が約50cmで肉厚が約15cm.それに対して,中に入れる岩石試料のサイズは直径が20mmで長さが40mm.

応募を考えられている皆様へ

 応募を考えられてこのサイトをご覧になっている貴方は,既に本所の技術職員として重要な「何か」を持っておられるのではないでしょうか.それは,地球科学全般に関する知的好奇心であったり,観測や実験をするのにあるとチョット便利な何かの技術的知識や経験であったり,ひょっとすると業務を遂行する上での仲間とのコミュニケーション能力や何かもっと漠然とした人柄の良さのようなものであったりするかもしれません.貴方のその「何か」を本所で活かせる場面が必ずあります.仕事ですから楽しいことばかりではありませんが,業務で関わる研究に進展のあるのを目の当たりにすると,自分自身の技術的貢献に大きな充実感を覚えること間違いありません.


西本 太郎  総合観測室 技術職員( 2013年04月入所 ; 2014年04月寄稿 )

入所前はどのような仕事・研究をされていましたか?

 大学院修士課程で地球惑星物性学分野の研究室に所属しており,地球内部のマグマ物質に関する研究を行っていました.大学院修士課程修了後,地震研究所の技術職員として入所しました.

あなたの業務内容を教えてください

 私は2015年4月時点で入所3年目であり,様々な分野の業務に携わることが出来ています.入所初年度では主に地震計の原理やデータ収録の仕組み,観測点からのデータ送信の方法など地震観測に関する基礎の部分を学ぶことが出来ました.入所2年目からは海域の地震観測や地磁気観測が主な業務内容となり,その他に陸域の観測や火山観測で少しずつ経験を積んでいます.


八ヶ岳地球電磁気観測所における地磁気絶対観測の様子.磁気儀という精密な装置を使用して地磁気の構成データの観測を行っています.雪の降る寒い時期でも行っており,毎月の観測の積み重ねが重要です.

これまでの業務で印象に残ったことを教えてください

 入所して1年目は観測とは何かを把握するのが大変でした.ひとえに観測といっても皆様はどのようなことを想像されるでしょうか?観測とは正しく「測定」し,正しく「記録」し,正しく「伝送」することです.何か1つでも分からないことがあれば正しく「観測」出来ているか分かりません.また,トラブルがあった時どこが悪いのかを見つけることが出来ません.そういった意味でも入所してすぐは右も左も分からない状態でした.

 入所して2年目になり,先輩職員と観測点のメンテナンスに行き,別々で作業をする機会がありました.入所したての頃は聞かなければ分からなかったことが,少しずつ知識と経験を積み理解が深まってきたことにより,ようやく1人で作業が出来るようになりました.また,観測は自分の思い通りにならないことが多々あります.それは地球を相手に仕事をしているからです.雷や台風で機器が故障することもありますし,原因不明の機器トラブルもあります.しかし重要な観測を「途絶えることなく続けていく」ために,持っている知識で解決出来るよう努力します.何も分からない状態で入所しましたが,自分の力で問題を解決した時の達成感は非常に大きなものでした.


衛星回線を使用した地震観測データの伝送のため,機材の調整を行っている様子.携帯電話が通じにくい場所やインターネット回線がない場所でも重要な観測が行われており,地震観測データは地球を飛び出て宇宙にある衛星経由で東京まで送られてきます.

応募を考えられている皆様へ

 私はこれまで観測に関わる作業をほとんどしてきませんでした.ただ大学院の研究時代,新規の実験装置を組み立てたり調整したりすることが非常に楽しかったのを覚えています.皆様の中には「こんなものを作ってみたい」,「あんなものがあったらいいな」と考えている方もいるのではないでしょうか.頭の中では想像出来ても,いざそれを実現しようとすると1から10まで全てを知っていなくてはいけません.技術職員という仕事は観測の1から10までを知っている必要があり,そんな好奇心,向上心のある方には非常にやりがいを感じる職場だと思います.


浦野 幸子  技術開発室 ( 開発系 ) 技術専門職員( 2011年04月入所 ; 2011年12月寄稿 )

入所前はどのような仕事・研究をされていましたか?

 印刷機械メーカーの研究開発部門で,印刷資材に関する基礎開発や,機械の挙動解析などを行っていました.

あなたの業務内容を教えてください

 地震研究所の研究者が観測・実験で使用する機器を製作しています.観測・実験で使用する装置は,もちろん市販のものもたくさんありますが,「今までに例のない新しいことをしたい」「既存のものではちょっと使い勝手が…」というときに研究者の求めるものを提供するのが私たちの仕事です.機械工作部門と電気工作部門があり,私は主に電気関連を担当しています.


観測に便利なように,センサ,バッテリー,ロガーをひとつに組み込んだ装置. 充電回路,放電制御回路も装置内に収まるように製作した

これまでの業務で印象に残ったことを教えてください

 製作した機器を使用する観測に同行する機会があります.自分たちが考え,作り上げたものが,どのように使用され,どのような結果をもたらしたか,その全てに関わり見届けることができる職場は一般的な企業では中々ないと思います.

応募を考えられている皆様へ

 今までの経歴が地震や火山に関わるものでなくても,興味があるならばためらうことはありません.技術者として,研究者とは別の視点で研究上の問題を解決する仕事をしてみませんか.


装置を使用して,実際に観測している様子



外西 奈津美  技術開発室 ( 分析系 ) 技術専門職員( 2009年04月入所 ; 2011年12月寄稿 )

入所前はどのような仕事・研究をされていましたか?

 高知大学で古海洋学に関する修士号を取得後,産業技術総合研究所の地質情報研究部門において契約職員として働いていました.そこでは,安定同位体比質量分析装置・走査型電子顕微鏡・蛍光X線分析装置などを用いて,海洋底堆積物の各種化学分析業務に携わりました.

あなたの業務内容を教えてください.

 地震研究所においては,主に岩石試料の化学分析業務に取り組んでおり,研究者からの依頼に応じて試料を調整して,最適な分析装置を用いた化学組成の解析を行っています.


クリーンルームにて溶液化した岩石試料から必要な元素のみ分離・採取している作業風景

 預かる試料はその形状・性質ともに多岐にわたりますが,そのサンプルの状態を見極め,要求される分析精度の結果を提供する為に,分析手法の最適化や分析装置の保守管理なども行います.また,所内外の研究者及び学生への分析サポートも業務の一つです.

 私が担当している分析装置は,
  • XRF(蛍光X線分析)
  • EPMA(電子プローブエックス線マイクロアナライザ)
  • SEM(走査型電子顕微鏡)
  • ICP-MASS(誘導結合プラズマ質量分析法)
  • ICP-AES(高周波プラズマ発光分析装置)
 等です.


電子プローブエックス線マイクロアナライザ
GEOL社製 JXA-8800

 その他,所内における薬品管理や環境安全に関わる業務にも携わっています.

これまでの業務で印象に残ったことを教えてください

 2011年1月に始まった霧島山新燃岳の噴火活動に関する業務が印象に残っています.噴火直後に現地へ赴いた研究者から毎日のように試料が送られてきました.それらの試料の分析結果は,噴火活動の推移を検討する上での重要な指標の1つとなります.出来る限り迅速な分析が求められる一方で,分析結果にミスのないよう心掛けた連日の業務は大変なことでした.しかしながら,噴火という自然現象はもちろんのこと,火山の足下で暮らす人々の生活と自分の業務が深く関係していることを実感した出来事でした.

応募を考えられている皆様へ

 地震研究所に入所する前までは地震・火山といった自然現象に一般的な興味以上のものは持っていませんでしたが,研究分野で化学分析に関わる仕事がしたいと思い私は応募しました.海から陸へと研究対象は変わりましたが,分析装置を用いて化学分析を行うという未知の物へのアプローチの仕方では同じだといえます.貴方も自分の持つ技術を活かし,研究の一翼を担う仕事に挑戦しませんか.


渡邉 篤志  総合観測室 技術専門職員( 2007年04月入所 ; 2011年12月寄稿 )

入所前はどのような仕事・研究をされていましたか?

 九州大学地震火山観測研究センターに在籍して,火山の観測・研究で博士号を取得しました.その後,同センターの非常勤研究員として火山や地震の観測を精力的に行っていました.

あなたの業務内容を教えてください.


平成新山溶岩ドーム山頂での火山ガス観測
 火山での地球物理観測が主な業務内容です.地震研究所は浅間山,伊豆大島,富士山,霧島山に火山観測網を展開しているので,これらが主なフィールドになります.

 火山では地震計の他にもGPS受信機,傾斜計,磁力計,空振計,可視・赤外カメラや各種測量器などの多種多様な機器を使用しています.山頂部では電力線や通信線が引けないので,太陽電池パネルによる発電や無線LANやデータ通信端末を使った通信手段を採用しています.

 各観測点には計測機器と通信機器が設置されていて,それらの保守作業や観測点の新設,機材の管理などに携わります.観測点の中には車輌では近付けない所も多数あり,機材を背負っての山歩きもしばしばで,体力もそれなりに必要です.その他,ガス観測や岩石試料採取などの物質科学的な調査のサポートをすることもあります.先に挙げた4つの火山に限らず,火山噴火が発生すると必要な機材を持って出掛け,全国の大学,研究機関,気象庁などと協力しながら臨時観測に従事します.

これまでの業務で印象に残ったことを教えて下さい

 2011年1月に始まった霧島山新燃岳の噴火です.日常的に噴火している桜島を除けば,本格的な火山噴火の現場に赴くのは2000年の有珠山以来でした.日々変化する活動状況に生きている地球を感じると同時に,観測データは研究だけでなく火山防災にも利用されるので,身の引き締まる思いでした.また,地震研究所の業務ではありませんが,他機関からの要請で南極での地震観測に参加したことは,特に印象深い仕事の一つです.

応募を考えられている皆様へ

 火山は地球の活動を肌で感じられる場であり,多くは風光明媚な所でもあります.そのような都会の喧噪を離れた場所での野外作業はとても気持ちが良く,準備や後片付けといった長く地味な苦労が報われます.また,火山の周りには温泉が多く,夏には作業の汗を流し,冬には冷えた体を温める…こともあります.さぁ,一緒にフィールドへ出掛けましょう.


浅間山火口縁にて火口内を観察・撮影する技術職員