平成16年度地球観測実習

 

1.授業の目的と実施項目

地球物理学では各種の観測を行い,その観測事実から“地球の中で何が起こっているか”を推定し,地球の動きを捉えることが大切です.この授業ではフィールドでの実習や講義を通して地球物理観測・計測に必要な基礎知識,測定方法,測定原理について学習します.更に,自らの観測で得たデータの解析をおこない,処理法についても学習します.各種地球物理観測の原理や方法を学ぶことは勿論ですが,観測の限界や観測につきものの各種ノイズについて理解されることも望みます.

7月末に全員参加の野外実習を行います.その際,現在第一線でデータを収集している観測所の見学も行い,最新の地球物理学観測についての知識を高めることもねらっています.

尚,この授業では実習への参加を特に重んじています.実習に参加することが履修の最低条件です.

 

平成15年度の観測実習実施項目

(1)地震観測

(2)GPS観測

(3)構造探査実験

(4)電磁気観測

    (5) 重力観測

 

2.授業の形式

         授業は観測項目ごとに「講義」と「実習」があります.また,共通で実施する「野外実習・施設見学」があります.実習終了後にデータを解析し,「実習発表会」で観測内容と解析結果について発表して頂きます.

         実習は上記の今年度開講する観測項目のうちから1つを選択して下さい.講義実習を選択した観測項目については必修とし,それ以外に他の観測項目から1つ以上を選択して受講することを必須とします.

         実習を円滑に運営するため,実習については観測項目ごとに定員を設けます.受講者の実習観測項目の振り分けは受講生の希望を参考にして行います.講義は誰でも受講できます.

         実習は観測項目ごとに別々に実施します.日程や実施方法は各項目の担当教官が受講生と相談して決めます.

         共通で実施する野外実習・施設見学は7月21日〜7月23日の日程で行います.原則として全員参加して頂きます.

         単位の認定には実習の参加,講義の出席,野外実習・施設見学の参加,実習発表会の出席の全てが不可欠です.

 

3.講義の日程

講義は原則として 毎週火曜日の 14時45分 から16時15分  地震研究所講義室 で行います.観測項目によっては,他の時間・場所で行われることがあります.担当教官の指示に従って下さい.以下に講義の日程を掲げます.

 

4/20, 4/27  地震観測                 5/18  重力観測       

5/25, 6/1  電磁気観測                6/8, 6/15 構造探査観測

6/22,6/29    GPS観測

 

講義時間・場所の変更等の情報はこの講義のホームページに載せますので,各自注意して見て下さい.この講義のホームページのURLは以下のとおり.また,各観測項目で複数の教員の場合,講義に関する質問は(講義),実習に関する質問は(実習)の教員へ尋ねてください.

http://www.eri.u-tokyo.ac.jp/jisyuu/index.htm 

 

. 野外実習・施設見学

地球物理学的に興味深いフィールドで実際に観測を行い,そこで得られたデータの解析を行います.また,地震研究所の観測施設を見学して最先端の観測を知ると共に,フィールド見学と特別講義を通して火山地質学についての初歩的な知識の習得も行います.日程は以下のとおりです.

 

7月21日(水)- 7月23日(金) 詳細は後日掲載 

 

★野外実習に要する交通費と宿泊費の実費は各自で負担していただきます.宿泊費用は2泊6食で約6000円-10000円程度です.集合時刻,集合場所等の詳細な事項は7月上旬に上記ホームページに掲載いたします.

 

5.観測実習発表会

後日,地震研究所において,観測実習の発表会を行います.班ごとに観測の概要,解析方法,解析結果,考察,今後の課題などについてOHP等を用いて発表して頂きます.

 

6.その他

この授業は野外実習を行いますので,教室で講義を受けるだけの授業よりも相対的には交通事故等の危険度が高いといえます.万一に備えて,受講者は学生傷害保険(生協で取り扱い)への加入を強く勧めます

 


観測項目の説明

 

(1)地震観測            担当:飯高隆(講義)・卜部卓(実習)

講義:

(1)地震計の原理:  地震計の原理について学び,実際に取り扱い,その特性を検定する.

(2)地震観測機器の原理:  地震観測実習に使用する観測機器の原理について学び,その使用法を習熟する.

 

実習:

野外実習の宿泊地に近い浅間火山又草津白根火山地域において,衛星通信を利用した地震観測装置およびデータ受信装置を設置して地震観測を行う予定である(実習場所は変更する可能性もある).この観測を通して,地震計の設置方法,データ収録方法などの地震観測法を学ぶ.更に,ここで取得した観測データと地震研究所の定常観測点のデータを併合処理し,この地域で発生している地震の解析を行う.

 

★地震の解析には解析ソフトウエア「win」を利用する.このソフトウエアの利用法を学ぶため,「情報処理実習」(担当:鷹野・卜部)を受講するか,同講義の該当部分(2〜3回分の講義)を受講することが望ましい.

 

(2)GPS観測           担当:加藤 照之

講義:

割り当てられている2回の講義時間帯で以下のことを学ぶ

(1)GPSの原理  GPSの原理について学び,特に干渉測位による高精度の位置決定 について理解する.

(2)GPSの応用 GPSの様々な応用事例を学ぶ.

(3)GPS観測の基礎  GPS観測実習に使用する機器の操作について学び,地震研周辺で実際にGPS観測機器を使ってその使用法に習熟する.

 

実習:

GPS観測と基線解析: 7月に草津白根付近において実施される合同の現地実習に参加し,実際にGPS観測を1日程度実施してデータ取得する.得られたデータを用いて基線解析を実施する.得られた解析結果を過去の結果と比較し,測位精度や誤差因あるいはこの地域の地殻変動を論じる.なお,この実習に参加できない場合は,話し合いの上,特別に観測の機会を設定することを考えても良い.

 


(3)構造探査実験 (海底地震を含む)  担当:森田 裕一(実習)・篠原 雅尚(講義)・塩原 肇

講義:

(1)地震波を用いる構造探査実験全般についての説明を行う.特に海底地震探査に関する基礎的な理解を図る.加えて,本項目を選択した人が実際に行う演習項目を説明する.データは,実習で取得し,地震波速度構造解析を行う予定である.

(2)実際に観測に使用されている海底地震計及び人工震源(エアガン)を見学する.また,実習で得られるデータの解析処理について説明する.

 

 

★本演習に用いるデータは,陸上において小規模な地震波構造探査を行い,取得する.地震波構造探査の原理,データ解析の方法については,陸域・海域の区別はほとんどない.

 

実習:

野外実習宿泊地にちかい地域で,測線長100m以下の小規模な地震波構造探査実験を行う予定である.この実験を通して,構造探査実験の基本的な方法を学ぶ.得られたデータを用いて,構造解析を行い,実際に探査域浅部の地震波速度構造を求める予定である.

 

 

(4)電磁気観測   担当:上嶋 誠  

講義:

 マグマや熱水の活動を理解するために適用されることの多い熱・電磁気学的手法のうち,自然電位測定,比抵抗測定,赤外映像観測を習得する.講義では測定の原理,手法を解説し,キャンパスにおいて実際に測定を行ってみる.

 

実習:

授業の中で,学生の希望を聞いて,自然電位マッピング+VLF-MT観測かDC-DC法比抵抗構造マッピングを行う.前者は,水の流動に伴う界面動電現象をとらえようとするもので,白根山東斜面から湯釜へ至るルートを往復する(3年前に実施した測線).後者は,水の存在やそのつながり方を検知しようとするもので,地震構造探査が行われる場所と同じ場所で観測を実施する予定である.

 

 

(5)重力観測           担当:孫 文科

講義:

(1)重力計測の原理:絶対・相対重力計の原理について学ぶ。

(2)相対重力計の原理:観測実習に使用するラコステ重力計に触れながら,その使用法に習熟する.

(3)重力データ処理:実習において取得した生データに施すべき、各種補正(潮汐・器械高・ドリフト)について,解説する

 

実習:

野外実習の宿泊地に近い草津白根火山地域に設置済の,重力・GPS基準点において,2台のラコステ重力計を用いて重力観測を行う予定である(実習場所は変更する可能性もある).この観測を通して,重力計の使用方法,データ処理方法などの重力観測の実際について学ぶ.更に,ここで取得した観測データを過去の結果と比較し,GPSデータとも照合して、この地域の火山活動を論じる.実習は7月下旬の全体で行う野外実習を予定している(官用車を利用するため,交通費は不要の見込み).