１．授業の目的と実施項目
地球物理学では各種の観測を行い，その観測事実から“地球の中で何が起こっているか”を推定し，地球の動きを捉えることが大切です．この授業ではフィールドでの実習や講義を通して地球物理観測・計測に必要な基礎知識，測定方法，測定原理について学習します．更に，自らの観測で得たデータの解析をおこない，処理法についても学習します．各種地球物理観測の原理や方法を学ぶことは勿論ですが，観測の限界や観測につきものの各種ノイズについて理解されることも望みます．
２．地球観測論と地球観測実習
地球観測論と地球観測実習の違いについてです。
地球観測論は，
１）各種地球物理観測の原理
２）その観測から何が判るのか
３）その観測の限界（精度，測定誤差の要因等）
を講義で教える科目です．
地球観測実習は，フィールドでの観測を体験し，その観測データの解析を通して，観測論で学習した内容を演習する科目です．
原則として，両方の単位を取得する学生を対象にしますが，観測論だけを履修することも可能です．しかし，実習を履修する学生には，観測論の履修を強く薦めます．
平成18年度の観測実習実施項目
（１）構造探査実験
（２）GPS観測
（３）電磁気観測
地球観測実習は８月４日〜８月６日の２泊３日の日程で行います．９月中に発表会を予定しており単位の認定には実習の参加，実習発表会の両方の出席が不可欠です．
３．地球観測論の講義の日程
講義につきましては，以下のような予定ですが，変更もありえますことをご承知置きください。
第０回 【ガイダンス】４月14日 13時〜14時30分
地球観測論と地球観測実習全体のガイダンスを行う．
観測論・観測実習の目的（１５分） 平田
観測実習の実施要綱（１０分） 飯高
昨年度までの観測実習の内容と結果
地震構造探査 篠原又は塩原
電磁気観測 上嶋
GPS観測 宮崎
固体地球物理学の発展に観測が果たした役割
固体地球物理学の科学史を説明：いくつかのパラダイム（例：プレートテクトニクスと地磁気縞模様，モホ面の発見，地球自由振動の発見，流体核の発見など．．）に観測が果たした役割を説明する．
第２回 【観測共通−フィールドからコンピュータまで】４月28日 担当：森田
観測データ取得と伝送の原理
�．▲淵蹈偉未侶彗�とデジタル変換（AD変換器の原理と特性、標本化定理：SARとΔΣ）
��検波回路による計測（GPS，プロトン磁力計等）
�Ｅ纏匆麩�の基礎（アナログ増幅）
�ぅ侫�ルター処理（アナログファイルター・ディジタルフィルター）
�ゥ如璽薪疏�方式の進化とデータの流れ（フィールドからコンピューター・ディスクまで）
第３回 【地震観測−計測原理】５月12日 担当：森田
�．札鵐機次�seismometer, geophone)と記録装置(seismograph)
��地震観測(点)と地震観測網
�４兮�の対象と地動ノイズ（時間変化，周波数成分、振幅等）
�っ脇扱彗�の原理（機械式振子）
�ヅ甜Ъ庵録矛�
�Ε侫�ードバック地震計・強震計
�Ч�帯域地震計
第４回【地震観測−ネットワーク観測】５月19日 担当：平田
地震観測 − ネットワーク観測の解析 −
(ア)自然地震観測
(イ)震源の決定
(ウ)自然地震による地下構造の推定（１）走時曲線から地下構造の推定
(エ)自然地震による地下構造の推定（２）トモグラフィー法、震源と構造の同時推定
(オ)発震機構解の推定と地殻応力の推定
(カ)震源過程の推定
第５回【地震観測−反射法探査】５月26日 担当：平田
�｜録銘戯困量榲�
（ア）構造探査の目的
（イ）構造探査法の実際
（ウ）制御震源探査
��屈折法地震探査
�Ｈ深曜｜録銘戯�
第６回 【測地観測(1)】６月２日 担当：加藤
測地観測概論 − 古典的な(地面)測地から現代(宇宙)測地まで
�‖�地学の目的
��測地座標系および地表における位置の表現
�Ｂ�地における測定量
�ぢ�定量の測定原理及び方法 − 古典測地学
�ゴ兮�網 − 三角網、水準網
�Χ�間測地技術 − 現代測地学
��地球変形／地殻変動の決定 − 変位・傾斜・歪・SAR・GPS観測
��地球質量及び再分布の決定 − 地上重力・衛星重力ミッション
第７回 【測地観測(２)】６月９日 担当：加藤
GPS観測−基礎：GPSのシステムと測位原理−
��GPSシステム
��GPS時系
��GPS信号の構造
�た�号の変調と復調
�セ�計あわせとレンヂ測定
�γ影搬�位の原理
�О盟蠡�定と干渉測位の観測方程式
�┫馨賃�位による高精度基線測定の原理
��誤差因について
第８回 【測地観測(３)】６月１６日：加藤
GPS観測−応用−
�｜影搬�位の応用
�∩蠡仟�位の応用
�４馨賃�位の地球科学への応用の歴史
�ぅ哀蹇璽丱襪�GPS観測とプレート運動
�ダ沼席人痢船▲献△砲�けるGPS観測とテクトニクス研究
�ζ�本列島GPS観測網とひずみ場
��GPS観測に基づく地震発生メカニズム
��GPS観測に基づく余効変動とスローイベント
��その他の応用
第９回 【電磁気観測（１）】６月２３日 担当：上嶋
電磁気観測概観
�ヾ兮�項目および観測対象の概観
��対象とする時間，空間スケール
地球の電場・地電位差の観測
�‥填砲亮鑪燹癖森嫖填法と麒森嫖填法�
��直流成分のマッピング
�Ｊ册粟�分の計測
�ね諭垢淵好院璽襪任隆兮�
�セ�系列，空間分布例
第１０回 【電磁気観測（２）】６月３０日 担当：上嶋
地球の磁場観測
�｜麓Уぢ�定の歴史
�⊆Уぅ札鵐機�
（ア）全磁力センサー
（イ）成分センサー
��絶対磁気測量
�つ称�成分のマッピング
�ナ册粟�分の計測
�ν諭垢淵好院璽襪任隆兮�
�Щ�系列，空間分布例
第１１回 【電磁気観測（３）】７月７日 担当：上嶋
電磁気観測の目的
�｜狼綟睇�起源電磁場変動の検出
（ア）コア起源の電磁場変動
（イ）地殻活動に関連した電磁場変動
��外部（人工）起源電磁場変動を用いた電気伝導度構造解明
（ア）受動的観測（MT法，GDS法）
（イ）能動的観測（DC法，CSEM法，注水実験）
第１２回 【観測実習準備】７月１４日 担当：塩原，宮崎，上嶋
観測実習の説明・他
講義時間・場所の変更等の情報はこの講義のホームページに載せますので，各自注意して見て下さい．この講義のホームページのURLは以下のとおり．また，各観測項目で複数の教員の場合，講義に関する質問は講義の担当教員へ，実習に関する質問は飯高へ尋ねてください．
http://www.eri.u-tokyo.ac.jp/jisyuu/index.htm
４. 地球観測実習について
地球物理学的に興味深いフィールドで実際に観測を行い，そこで得られたデータの解析を行います．また，地震研究所の観測施設を見学して最先端の観測を知ると共に，フィールド見学と特別講義を通して火山地質学についての初歩的な知識の習得も行います．日程は以下のとおりです．
８月４日（金）- ８月６日（日） ２泊３日でおこないます。★地球観測実習に要する交通費と宿泊費の実費は各自で負担していただきます．宿泊費用は２泊６食で約6000円-10000円程度です．集合時刻，集合場所等の詳細な事項は７月上旬に上記ホームページに掲載いたします．
詳細は｢地球観測実習スケジュール｣をご覧ください。
５．地球観測実習発表会
後日，地震研究所において，観測実習の発表会を行います．班ごとに観測の概要，解析方法，解析結果，考察，今後の課題などについてOHP等を用いて発表して頂きます．
６．その他
地球観測実習は野外実習を行いますので，教室で講義を受けるだけの授業よりも相対的には交通事故等の危険度が高いといえます．
受講者は学生傷害保険（生協で取り扱い）への加入は必須です．
詳細は
地球惑星物理専攻のHP
http://www.eps.s.u-tokyo.ac.jp/index.html
のお知らせの中の保険加入の義務「大学院生が加入できる保険のリスト」
から以下へ飛ぶか，直接
http://www.eps.s.u-tokyo.ac.jp/jp/students/insurance/insurance_table.html
を参考にしてください。