1999年度職員研修(技術発表会)実施について

研修運営委員会  


本研究所では,咋年度より技術系職員による技術発表を主とする「全体研修」が行われるようになりました.本年度もこの「全体研修」が,6月30日(水),7月1日(木),2日(金)の3日間開催されました.ここにその慨要を報告いたします.

1. 全体研修への参加者

3日間の全体研修に40名が参加し,研修報告書を提出した38名の技術職員(地震研30名,北海道大学1名,東北大学1名,名古屋大学2名,京都大学3名,高知大学1名)に,藤井所長より研修修了証書が手渡された.この他,大部分出席したものの,所用,体調不良などで一部欠席した技術職員が2名であった.「全体研修」では18名の技術系職員(咋年は11名)が,技術発表を行った.そのうち他大学の技術職員は5名(咋年は0名)である.この他に図書掛と助手各1名(咋年は3名)に,システムの紹介と技術発表をして項いた.
「全体研修」の出席者内訳は,初日の所外研修(気象庁)参加者は44名,2日目の技術発表会は67名,3日目は56名,懇親会の参加者は56名(プラス事務職員)であった.

2. 全体研修の概要

初日の気象庁における所外研修は「地震・火山活動監視の最前線を見る」という位置付けで,森地震火山部長が快く引き受けて下さった.土井調査官をはじめとする地震火山部職員の案内で,気象博物館,地震・火山・津波監視現業室,判定会室を3班に分かれて見学した.最後に浜田地震予知情報課長から,気象庁地震火山部の業務内容と,大学等との連携とデータ交換について講演して頂いた.
技術発表会当日には,20件の報告があった.各々の内容をA4用紙1,2枚にまとめたアブストラクト集が配布された.発表の内容は多岐に渡っている.

  1. 高度な技術的達成を報告したもの:「UNIXの2000年間題対応とサーバー再構築」,「携帯電話を利用したデータ収集システム」,「超音波を利用した海中精密音響測距装置」,「浅間火山における水準測量の工夫とその成果」,「軽量小型の強震計の開発」.
  2. 専門的な研究業務内容の紹介:「活断層判定のための空中写真利用」,「50年間の筑波観測所のデータ処理」,「東北大学における地殼変動連続観測」,「桜島火山観測所の紹介」,「有珠山での水位観測」.
  3. 他部局にまたがるビッグブロジェクトの研究支援:「海半球プロジェクトの慨要と経費管理,スケジュール管理」.
  4. 観測方式の工夫:「磁力計センサーと太陽電池の工夫」,「富士山観測点の据え置き型密封蓄電池」,「東北合同観測における衛星可搬局の設置例」.
  5. 図書掛からの紹介:「WEBによる図書・雑誌の検索」.
  6. グループ研修報告:「伊豆半島・富士川観測所周辺の地震観測点現地研修」,「地震データ処理の高度化を目指したWINシステム講習」,「風化層での地震計台テスト」,「緊急時連絡システム」,「融雪装置の開発および実験」.


「緊急時達絡システム」の報告では,実際にパソコン,携帯電話,デジタルカメラなどを使用して,会場風景を直ちにWEBサイトに送ってスライドで見せるデモが行われた.

3. 技術発表会の反省点

咋年に比べて発表時間が短く,質疑応答が十分行われなかった.ポスターセッションを設けるなどして,口頭発表の時間を十分とれるようにする工夫が必要である.これと関連するが,アブストラクト集は発表当日より前に,配布すべきである.
何人か大学院生が発表を聞きにきてくれた.地震研は観測を主体とした研究が多い.若手研究者や大学院生にこそ,技術職員の経験やノウハウを伝えたい.彼らに興味を持たれるような発表を工夫し,宣伝にも努めたい.

4.グループ研修について

グループ研修は地震研の技術職員の技能レベルを全体として向上させるために,標準的技術や特殊知識の習得を目指して咋年度から開始されたもので,技術発表会での報告が義務付けられている.グループ研修の性格から,今年度もグループのメンバーを変えて,継続されるものがある.なお研修運営委員会では,今年度のグループ研修,個人研修を募集している.積極的に応募してください.

5.平成12年度「技術研究会」について

東北大学の立花憲司氏より,平成12年度に東北大が実施大学となって開催が予定されている「技術研究会」について説明があった.この技術研究会は大学,高専,大学共同利用研究機関などで教育,研究に関わっている技術者相互の技術の向上を図り,幅広く交流を深めることを目的に,約20年前から開催されている.
平成8年度に国立天文台,電気通信大学,大阪大学,名古屋大学で,計測・制御技術,装置・回路技術,計算機・データ処理技術,化学分析技術などの分科会が開かれ,300名以上が参加した.平成12年度の「技術研究会」では,地球物理関係の分科会追加が検討され,実現する可能性が高い.以下に主な情報を紹介する.


研修運営委員会では,積極的に参加する方向で検討している.

6.来年の全体研修

平成12年は6月28日(水),29日(木),30日(金)に全体研修を予定している,年度始めの諸観測に忙しい時期ではあるが,この日程を考慮に入れて,他大学の技術職員が多数参加されることを期待する.今回の全体研修は研修運営委員(笹井,工藤(和),大久保,武尾,橋本,平田(安),長田,大竹)の他に,実行委員として井本,望月が加わった.
新しい研修制度が発足して2年目となる今年の全体研修は,初めて他大学の技術職員も技術発表を行ったこと,発表数が増えたこと,準備から発表会の運営に至るまで技術職員が白立的に実行したことが特徴である.今後も技術発表会の充実に努めたい.
最後になりましたが,今回の全体研修実施にあたっては,地震研究所内外の多くの方々にお世話になりました.気象庁地震火山部では職員研修の意義を理解されて,所外研修に多大のご協力を頂きました.また新年度の様々な観測が開始されて多忙なこの時期に,各大学の関連する機関の施設長は所属の技術職員に対し,地震研の全体研修に参加するよう奨励して頂きました.2日間の技術発表会には,所長,事務長,主任,センター長を始め,教官や大学院生にも出席して頂き,発表者と参加者に大きな激励となりました.とりわけ事務部には運営や懇親会設営などで大変お世話になりました.以上の方々に深く感謝いたします.

1999年 職員研修風景 (所外研修:気象庁 気象博物館・判定会室での研修風景)


平成11年度地震研究所技術官全体研修報告