平成12年度地震研究所技術官全体研修報告

研修運営委員会  

 平成12年度地震研究所技術官全体研修報告 研修運営委員会 技術官の全体研修が,7月5日(水),6日(木),7日(金)の3日間開催された.こ こ にその概要を報告する.

1. 全体研修への参加者

3日間の全体研修に38名の技術職員が参加し,研修報告書を提出した37名の技術職員 (地 震研30名,東北大学2名,名古屋大学2名,京都大学3名)に,藤井所長より研修 終了 証書が手渡された.この他に所用などで一部欠席した技術職員が1名あった. 「技術発 表会」では17名の技術系職員(昨年度は18名)による技術発表が行われた. また,研 究支援推進員による技術発表と,「有珠山噴火に対する地震研の対応」と題 して,中田教 授に特別講演をして頂いた.他大学の技術職員の発表は4名(昨年度は 5名)であった.
 「全体研修」3日間の出席者内訳は,初日の所外研修(国土地理院)参加者39名,2日 目の技術発表会64名,3日目58名,懇親会の参加者54名(プラス事務職員)であった.

2. 全体研修の概要

(1)所外研修
 初日の国土地理院における所外研修は「建設省国土地理院地殻変動監視業務の最前線 を見る」という位置づけで,つくば市にある国土地理院を見学した.見学に先立ち, 松村正一測地部測地技術調整官から「測地成果2000について」,小沢慎三郎地殻変動 研究室主任研究員から「宇宙測地技術を用いた地殻変動検出」について講演して頂い た.
 講演終了後,2班に分かれて宇宙測地館のGPS,VLBI等の測地技術,地図と測量の科学 館の見学をした.
(2)技術発表会
 技術発表会には,23件の報告があった. 今年度は個人研修の報告も簡単に行った.
 昨年の反省を踏まえ,今回は講演の内容をA4用紙1,2枚にまとめたアブストラクト集 を, 全体研修の約一週間前に参加者に配布することができた.
 また,やむを得ないことではあ るが,講演予定の名古屋大学技術職員の方が,6月末 から始まった三宅島噴火観測業務の ため本研修会に参加できなくなったことは残念で ある.

 発表の内容は多岐にわたっている.
(a)専門的な業務内容・研究成果の紹介:「名古屋大学の地電位観測」,「歴史地震 記象記録のリスト化について」,「歴史地震記象にある一橋・本郷・筑波各観測点の 地震計について」,「有珠山周辺に緊急配置した衛星通信テレメータ観測点」,「技 術開発室の工作依頼の現状について」,「和歌山地震観測所の観測記録の変遷」「跡 津川断層沿いに発生する地震活動の特徴-30年間の成果-」,「東北日本のS波反射 面」,「信越地域で観測された低周波地震」
(b)高度な技術的達成の報告:「大容量ハードディスクとDAT再生ソフトの組み込 み,およびデータ解析」,「超深度ボーリング孔における初期応力測定のためのオー バーコアリングシステムの開発」
(c)グループ研修報告:「緊急時における連絡システムの実用化」,「三宅島の現 地観測点研修」,「1999年度研修“ホームページ作成支援”を依頼されて」, 「DATレコーダーによる地震観測データの再生処理を学ぶ」 1999年度のグループ研修は,緊急時を想定したものが多かった.「緊急時における 連絡シ ステムの実用化」,「三宅島の現地観測点研修」,「ホームページ作成支援」 と,タイムリー な企画が有珠山噴火,三宅島噴火と続く緊急時に大いに役に立った.
(d)個人研修報告:「オペアンプ講習会」,「装置技術研修」,「ネットワーク管 理担当研修者」,「コンピュータネットワーク基礎講座」
(e)緊急時に関する報告:「有珠山噴火に対する地震研の対応」,「緊急時におけ るホームページの立ち上げ(有珠山HP経過報告と今後の課題について)」,「9.21集 集地震余震観測報告」
(f)その他:「平成12年度東北大学技術発表会について」

 三宅島の活動が始まった直後の「全体研修」で開催が危ぶまれたが,なんとか研修を 終了 することが出来たことは幸いであった.中田教授による特別講演「有珠山噴火に 対する地 震研の対応」で緊急時の対応の問題点が指摘され,そのことがすぐに三宅島 の噴火に際し 役立っていった.

3. 全体研修(技術発表会)の反省点

 今回,アブストラクトを一週間前に配布したのは大変好評だった.
 講演発表会の席上に残 り講演時間を知らせるベルを用意すべきであった.
 新しい研修制度が発足して3年目とな る今年の全体研修で発表者がほぼ一巡し,次回 から発表者が減少するのではとの懸念があ る.参加者が提出した研修報告書の中に も,同様の意見があった.
 技術発表会と銘打つよ り,技術・業務発表会としたほうが発表しやすいとの意見も傾 聴に値するものと思われた. 今回の国土地理院見学は大変好評で,現業官庁の圧倒的な設備や,展示内容の充実ぶ りに 学ぶべき点が多かった.
 修了証授与対象者については,従来は曖昧な部分があった.次回 からは,全日程に参 加した者のみに授与することとした.すなわち,健康上や冠婚葬祭等 の事情で一部欠 席した場合はもちろんのこと,地震火山活動の緊急事態による一部欠席で あっても, 次年度から一切例外は認められない.
 今回の全体研修は,三宅島火山活動が終 息にむかうとの火山噴火予知連の見解にした がって,予定どおりに開催したものである. 今後も類似の事態が,所の公式行事とし ての技術発表会の前に発生することがありうる. そのような緊急時に全体研修を実施 するか否かについては,次の手順で研修運営委員会で 判断することとした.


(T)緊急時対策本部ができたときは,全体研 修は延期もしくは中止.
(U)連絡本部ができたときは,所長・主任会 議の意向を尋ねた上で,研修運営委員会 で判断.  


 今回の全体研修は研修運営委員,大久保,森田,笹井,工藤(和),長田,渡辺 茂,望月 の他に,オブザーバーとして大竹が加わった.
 最後になったが,今回の全体研修実施にあたっては,地震研究所内外の多くの方々 にお世 話になった.国土地理院では職員研修の意義を理解して頂き,所外研修に多大 のご協力を 頂いた.また各大学関連機関の施設長には,所属の技術職員に対し,地震 研究所の全体研 修に参加するよう奨励して頂いた.また2日間の技術発表会には,所 長,事務長,主任, センター長を始め,教官や大学院生にも出席して頂き,発表者と 参加者に大きな励みとな った.とりわけ事務部には運営や懇親会設営など大変お世話 になった.以上の方々に深く 感謝いたします.

4. 平成12年度「技術研究会」について  (主管:東北大学)

  東北大学の立花憲司氏より,平成12年度に東北大学が主管となって開催される「技術 研 究会」について技術発表会の中で説明があった.以下に要旨を記す.

1.趣旨
 全国の大学、研究機関の技術職員が中心になった技術研究会は、これまで高エネルギ ―加 速器研究機構、核融合科学研究所、岡崎国立共同研究機構分子科学研究所が輪番 で開催し てきた。標記技術研究会は、平成11年3月に高エネルギー加速器研究機構で 行われた技 術研究会運営協議会での「平成12年度の技術研究会は東北大学で開催す る」との確認に 基づき実施されるものである。この技術研究会の目的は大学、高等専 門学校、大学共同利 用機関等で教育、研究に関わっている技術職員が日常業務で携わ っている実験設備・装置 の開発、維持管理の話題から改善、改良に及ぶ広範囲な技術 活動についての発表を通して 相互の技術の向上を図り、幅広く交流を深めることであ る。

2.開催期日と場所
 平成13年3月1日午後1時〜2日午後3時 東北大学川内記念講堂および川内キャンパス  講義棟

3.実施内容
 ・全体会 開会午後1時  ・ 東北大学総長挨拶(予定)
 ・特別講演:90分  講師:西澤潤一  東北大学前総長
   演題:「21世紀を目指す技術集団の役割」
 (案) 分科会 :一日目15時〜18時  二日目9時〜12時、13時〜15時
    発表時間は討論を含めて20分 ポスター:一日目17時〜18時 懇親会 :一日目18時30分より

4.分科会
 第1分科会(工作技術):科研 第2分科会(装置技術):理学部 第3分科会(回路技術):工学部 第4分科会(情報・ネットワーク技術) :理学部 第5分科会(極低温技術):金研 第6分科会(材料・物性開発技術):工学部 第7分科会(地球物理観測技術):理学部 第8分科会 生物関係の分科会開催を検討中

5.参加費等について
 参加費 : 1,000円 懇親会費 : 3,000円
 研修運営委員会では,参加希望者の内,発表する所内の技術職員に対して支援を行 う方針 である.

5. 平成13年の全体研修

平成13年は7月4日,7月5日,7月6日に全体研修を予定している.この日程を 考慮 に入れて,多数の技術官が参加されることを期待する.

地理院 国土地理院での講演

 国土地理院研修参加者