平成13年度地震研究所職員研修会報告

                                             研修運営委員会 

 平成13年度地震研究所職員研修会が,7月4日(水),5日(木),6日(金)の3日間にわたり開催された.その内容を報告する.

1.職員研修会の概要
 新しい職員研修制度が始まって4年が経過した.職員研修においては日常業務に関連した技能の向上が求められている昨今の状況を鑑み,今年度の職員研修では従来から行っていた「技術発表会」に加えて日常業務に関連した事項を実技によって学習する「実技講習」を初めて実施した.
 「技術発表会」では延べ15名の技術職員(昨年度17名)による技術発表が行われた.他大学から参加の技術職員による発表は3名(昨年度4名)であった.技術発表の内容は多岐にわたるものであった.講演のアブストラクト集は, 職員研修会の約一週間前に参加者に配布できた.また,大久保教授には「失敗学-実習付き」と題した特別講演をしていただいた.
 今年度の職員研修会の新機軸である「実技講習」では5コース(地震観測,測地観測,情報処理,機械工作,電気回路)を開設し実施した.「実技講習」の講師は普段から各コースに関係する業務に関わっている技術官が務めたが,一部のコースでは助手および技術推進支援員の方々にも講師を引き受けていただいた.
 職員研修会3日間の出席者内訳は,初日の技術発表会参加者51名,2日目の技術発表会参加者44名,実技講習参加者39名,3日目の技術発表会参加者34名,また懇親会の参加者60名(教官および事務官を含む.)であった.3日間の研修会に参加し,最終日に研修報告書を提出した34名の技術職員(地震研26名,北海道大学2名,名古屋大学1名,京都大学4名,高知大学1名)に対し,山下所長より修了証書が手渡された.

2.技術発表会

 技術発表会では以下のような発表があった.
 (a)専門的な業務内容・研究成果の報告:「茂住地電位臨時観測」,「伊豆半島の地磁気観測」,「東海地方における全磁力観測」,「浅間山火山性群発地震観測報告」,「台湾中央部水里〜合流坪測線における人工地震観測の報告」,「地下深部と坑内(鉱山内)ボーリング孔における初期応力測定のためのオーバーコアリングの失敗と原因および改良点について」,「富士川地殻変動観測所の31年」
 (b)高度な技術を用いた業務改善例の報告:「気象庁速報データを北海道大学地震データ処理(WIN)システムの自動処理検測データに変更するプログラムの開発」,「winシステムのトリガー漏れ地震の取り込みについて」,「風力発電機の実用例」,「パソコンを使ったDAT再生システム」
c)グループ研修報告:「三宅島を例とした緊急時におけるホームページ作成」
d)緊急時における研究支援に関する報告:「三宅島における傾斜計設置とデータ伝送について」,「2000年伊豆諸島における臨時強震観測点の設営およびその後の三宅島での強震観測」,「2001年6月現在の三宅島における各機関の観測状況および噴火災害復旧状況の紹介」
e)特別講演:「失敗学−実習付き」

3.実技講習

 実技講習は以下の内容で実施された.
a)地震観測   講師:羽田敏夫,井上義弘
   自然地震観測や地殻構造探査などに利用されている地震計と記録装置(DATレコーダー)の取り扱いを学び,実際の操作方法について練習した.
b)測地観測   講師:竹田豊太郎,小山悦郎
   火山噴火や地震活動に伴う地殻変動を観測する一方法である水準測量は,原理が簡単で広く実施されている.しかし,その精度を上げるには高度の技能が必要である.どの様にすれば高精度の測量ができるか実習を通して学習した.
c)情報処理   講師:望月裕峰,鶴岡弘(情報センター助手)
     この講習は前編と後編からなる.前編はTeX「超」入門とし,世界的に普及している組版システムの一つであるTeXがどのようなものかを学び,TeXによる文書作成の基本を修得することを目指した.後編は所内OA化講習とし,今までに地震研OA化委員会から配布されたファイルの整理・アップデートファイルをカスタマイズする方法を実習した.
d)機械工作   講師:内田正之,肥田野一夫(技術推進支援員)
   技術開発室に最近導入されたマシニングセンタ,滝沢旋盤,帯鋸盤などを用いて,丸型文鎮の製作を行った.この実習を通して,最新機器では高度な製作が容易にできることを知るとともに,その安全な使用法について学んだ.
e)電気回路   講師:大竹雄次(技術開発室助手),小山茂
      技術開発室にある基板加工機で製作したパターン配線済みの基板を用いて,地震観測用の増幅器を製作した.具体的には,部品を基板へ半田付けする作業と,完成した回路の動作試験を行う作業であった.また,技術開発室にあるNC回路基板加工機などの最新機器の紹介もされた.

実技講習の終了時に受講者用と講師用のアンケート用紙を配布して参加者の意見を集約した.この結果を,職員研修会の最終日に実習コース別に報告した.

4.職員研修会の反省点

 新しい研修制度が発足して4年目となる今年の職員研修会では,ほとんどの技術官が技術発表会での発表を既に行い,発表がほぼ一巡した.その為か,次第に発表希望者が減少する傾向にある.参加者が気軽に発表できる環境を作ることや,個別研修やグループ研修の充実をはかり,技術発表会の内容充実に努める必要がある.また,特別講演(大久保教授「失敗学」)は大変好評で,来年度も同様の企画を望む声が多かった.
 今回の実技講習は,日常業務の技能向上に役立った,来年度も実施して欲しいとの要望があるなどおおむね好評であった.一方,実習時間が短かった,希望した実技講習を受講できなかったとの不満や,その効果を疑うとの評価もあった.また,講師の負担が大きいなどいくつかの問題点も挙げられた.今後の検討課題としたい.
 技術研修会の中心である「技術発表会」の内容の充実が今後の検討課題として残った.その原動力となるグループ研修,個別研修の活性化を進める方策として研修運営委員が個々の技術官にグループ研修,個別研修の企画立案を働きかける,教官がグループ研修のテーマの提案を働きかける等の努力が必要である.

. 平成14年度の職員研修会

 平成14年の職員研修会は7月3日,7月4日,7月5日に開催予定であり,多数の技術官が参加して技術発表会で発表されることを期待する.

6.最後に

 職員研修会の実施にあたり,各大学関連機関等の施設長には所属の技術職員に対して地震研究所の職員研修会に参加するよう奨励していただき有難うございました.3日間にわたる技術発表会には,所長を始め事務長,各部門の主任,各センターのセンター長,他多数の教官や大学院生の皆さまに出席していただきました.また,事務部の方々には運営や懇親会設営などで様々な支援をしていただきました.ここに記して,深く感謝いたします.