平成14年度地震研究所職員研修会報告

研修運営委員会   

職員研修実行委員会

 平成14年度地震研究所職員研修会が,73日(水),4日(木),5日(金)の3日間にわたり開催された.その内容を報告する.

1.職員研修会の概要

 地震研究所の技術職員を中心に,日常的な業務報告や技術発表を行う「技術発表会」と,昨年から始めた各分野の技術習得や技能向上を目指した「実技講習会」を組み合わせた内容により3日間の日程で開催された.初日の午後と3日目の午前に行われた技術発表会では合計11名の技術職員(うち他大学2名)による発表があった.また,地震研究所を今年度で定年退官される助手3名の方々の講演と,平田直教授による「地震予知研究の現状と今後の展望」と題した特別講演も行われた.今回の職員研修会では所内研修コースに加え,所外研修コースを設けるなどの新たな試みも取り入れた.

3日間の参加者の内訳は,初日の技術発表会54名,懇親会に約70名,2日目の実技講習会の所外研修コース7名,所内研修コース(地震観測)午前午後延べ15名,(測地観測)同13名,(情報処理)同15名,(機械工作)同10名,3日目の技術発表会42名であった.また,他大学など所外の研究機関からの参加者は3名であった.

 全日程に参加し,最終日に研修報告書を提出した30名の技術職員(地震研究所27名,京都大学2名,東北大学1名)に対し,山下所長より修了証書が手渡された.

2.技術発表会  技術発表会では以下のような発表があった

(a)業務成果及び研究報告:

GISを用いた地震データ利用」,「平成13年度3月に実施した都市部(足柄平野・平塚)での地下構造探査の企画」,「小電力型VSATの設置と試験運用」,「地磁気連続観測点近傍の磁場傾度の違いによる問題点(伊豆における全磁力の年周変化の検証)」,「最近の飛騨山脈周辺の極微小地震活動」

(b)技術を応用した報告:「地震計ケースの製作について」,「地震地殻変動観測におけるIT 〜観測点のIP接続環境と応用技術〜」,「XY磁気センサーを用いた傾斜計の改良について(序報)」,「地震計の転倒防止対策」

(c)その他の報告:「災難は忘れた頃にやってくる」,「個人研修報告」,「地震研究所HP管理運営の支援」

(d)教官(助手)による講演:「山脈を伝搬する中・長周期レイリー波の挙動について」,「西太平洋GPS連続観測データの解析について」,「人工地震に携わって(主に爆破を震源とする)」

(e)特別講演:「地震予知の現状と今後の展望」

3.実技講習会     

実技講習会は以下の内容で,研修会2日目に実施された.

  

実習風景:衛星テレメータ(左),測地実習(右)

(1) 所外研修コース 講師:坂上 実,小山

 都市部の地震観測点(強震)のうち,川崎市内のほぼ東西側線に位置する高津,浮島の2観測点と,浮島の延長上にある東京湾「海ほたる」の防災システム(避難路)などを見学した.このような観測点の多くは,人口的なノイズを避けるために限られた条件下に設置されている.これらの現状視察は,今後の新たな観測計画や機器開発などに生かされるものと期待する.

(2) 所内研修コース

A 地震観測 講師:荻野 泉,小林

衛星テレメータ装置(Nanometricsシステム)を使用したUAT(アップリンクアクセステスト)を地震研究所屋上において実習した.スペクトラムアナライザで衛星波形を確認しながら目的の衛星を捕捉する方法と操作手順を,パソコンを用いて実際にUATを行いながら学んだ. 

B 測地観測 講師:竹田豊太郎,小山悦郎,平田安廣

 火山噴火や地震活動に伴う地殻変動を観測する一方法である水準測量を実習した.水準測量の測量原理や水準儀の操作を学んだ後,昨年の実習で使った基準点3個所のある地震研究所正門横から北側非常口までの間を,実際に測量した.

C 情報処理 講師:萩原弘子,羽田敏夫 

winシステムの概略を簡単に学んだ後,地震予知情報センターのマシンを使って地震波形の読み取りを実習した.winの起動に必要なパラメータファイルの設定などを学び,必要なコマンドを覚えながら実際に地震記録を読み取った.

D 機械工作 講師:内田正之,肥田野一夫

 マシニングセンタを使って機械工作を実習した.使用する前に必要な準備と操作の心得を学び,実際に真鍮プレート(厚さ3mm)の四隅に5mm径のネジを切る工作を実習した.

 実技講習の後,上記A,B,C,Dの各講習内容について,夫々の受講者代表が総括報告を行った.所外研修コースについては,3日目に受講者代表により総括報告が行われた.

4.反省点と次回への要望

 毎年開催される職員研修会で発表を希望する参加者の数が,年々減少してきている.技術職員数が削減されているのに対し仕事量は減少していないことなどにより,多忙な毎日となっていることも一因とされるが,グループ研修や個人研修の結果が技術発表会の内容に反映されることが大いに望まれる.技術職員の皆様には,これらの研修に対する研修運営委員会による支援措置を活用し,積極的に様々な研修を企画し実践していただきたい.

 昨年に引き続き実施した実技講習会では,今年度は受講希望をそのまま受理し,参加者を振り分けるなどの調整を行わなかったが,結果的には適度に受講者が分散されていた. 所外研修コースと機械工作は午前−午後を通した実習を行ったが,所内研修コースは同じ講習内容で午前と午後の2回実施し,受講者の選択幅が広がるように配慮した.

 職員研修会は毎年7月第一週に開催されているが,例年その頃は各種の観測計画が実施に移される多忙な時期でもあるので,開催時期の再検討が関係方面から望まれていた.この件について,研修運営委員会は研修会参加者各自にとって不都合な開催時期を,職員研修会受講報告書に記入するよう求め,このアンケートの結果や関係者の意見なども参考にして,平成15年度職員研修会の日程を決めることとした.

5.最後に

 職員研修会の実施にあたり,各大学や関連機関等の施設長には所属の技術職員に地震研究所職員研修会への参加を奨励していただき,有り難うございました.

3日間にわたる開催期間中,所長を始め各部門の主任,各センターのセンター長や多数の教官および学生の皆様にも出席していただき,発表者や参加者に大きな励みとなった.また,事務長はじめ事務部の皆様には,運営や懇親会の設営などで様々なご支援をいただきました.ここに記して,深く感謝申し上げます.


修了証書授与