平成26年度地震研究所職員研修会報告
研修運営委員会
平成26年度地震研究所職員研修会が平成27年1月28日から30日の三日間に亘り開催されましたので,ここに報告します.
1.
研修会の概要
研修会は,昨年度と同様に「技術発表」,「所外研修」,「特別講演」を主な研修内容として開催されました.
1日目は,開会挨拶に続き,5件の口頭による技術発表と11件のポスターによる技術発表が行われました.その後,地震火山災害予防賞表彰式が執り行われ,地震研究所の渡辺茂さんが受賞されました.続いて,渡辺さんには受賞記念講演を行って頂きました.講演終了後,渡辺さんを囲んでの記念撮影,参加者と交流を深めるための懇親会が催されました.
2日目は,海洋研究開発機構で所外研修が実施されました.午前は,機構全体の概要紹介を受けた後,荒木英一郎氏による講演「海底地震・津波観測網の開発とこれから」が行われました.午後は,月岡哲氏による講演「深海探査技術」が行われた後,深海巡航探査機「うらしま」,深海と同等の環境下で観測測器を試験するための「環境シミュレータ」などを見学していただきました.
3日目は,4件の口頭による技術発表と2件のグループ研修報告,そして,元NHK解説委員である柳川喜郎氏による特別講演「百年前の桜島噴火,そして御嶽山−災害予知と対応」が行われました.最後に,安藤美和子さんと京都大学の小松信太郎さんが,所内と他機関をそれぞれ代表して修了証書を授与されて,研修会は終了しました.
研修会参加者は56名で,内訳は所内から34名,他大学・機関から22名(北大3名,東北大5名,東大生産研2名,名古屋大2名,京大6名,高知大1名,九大1名,気象庁1名,国立科学博物館1名)でした.3日間の全日程参加者は40名で,その内訳は所内が22名,他大学・機関が18名でした.昨年度に引き続き,所外から多くの参加を頂きました.
2.
アンケート集計結果
研修会では更なる改善を目指して,毎年参加者にアンケートの協力をお願いしております.今年度で研修会は22回目を迎え,所内で実施するプログラム内容は成熟してきていますが,2日目の研修内容・実施方法については,参加者に広くご意見を頂きたいと考えていました.そこで,例年以上に多くの質問を用意しまして,回答者の方々にはご面倒をおかけしましたが,26名の方から数多くの意見を頂くことができました.これらの意見を参考に,さらに充実した研修会を目指して準備を進めていきたいと考えています.以下に,寄せられた意見のいくつかを紹介します.
² 「技術発表(口頭発表とポスター発表)」について
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発表件数,時間ともにちょうど良かった.
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様々な分野,方々と意見交換ができ,貴重な経験となった.
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ポスター発表は発表者が他の発表を見聞きする時間がなかった.
² 「所外研修(海洋研究開発機構)」について
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講義内容,見学コースとも,技術開発要素が強く興味深く見ることができた.
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他機関の研究や業務内容を知ることができ,大変刺激になった.
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現地集合ではなく,地震研集合にして,バス移動がよかった.
² 「特別講演(百年前の桜島噴火,そして御嶽山)」について
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報道関係者の話を聞く機会がなく,貴重な話をきくことができ有益であった.
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情報を伝達する難しさを改めて思った.
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勉強になった.改めて,現場に行く重要性を感じた.
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古文書を読むことの大切さを学んだ.
² 「プログラム構成,運営,会場,予稿集,懇親会,等々」について
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全体的に良く構成がとれていたと思う.
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初日と3日目は同じ会場が望ましいと思う.
² 「所外研修」で行ってみたい機関・施設
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宇宙航空研究開発機構
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科学未来館
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情報通信研究機構
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東京航空地方気象台
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防災科学技術研究所
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アウトリーチ活動に資するところ
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地震研究所の観測所,観測点
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海上保安庁
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産業技術総合研究所
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鉄道総合技術研究所
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東京大学駒場キャンパス
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理化学研究所
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地震計メーカー,測器メーカー等の観測機器関連企業
(敬称略)
² 「所外研修」の代わりとして「所内研修(座学,実習等)」で受講してみたい内容
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地震計の検定,メンテナンス
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重力計の取り扱い方.
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WINのデータ流通実習.WINの読みとり実習.
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サーバ管理(ネットワーク攻撃対策等)
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避雷,ノイズ対策
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アンプ・フィルターなどのアナログ回路実習.
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コーチング研修.語学研修.
² 「特別講演」で聴講してみたい内容
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火山・雪山における活動時の安全確保など
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気象庁,国土地理院などの官庁の観測点維持,設営されている方による実際作業等について
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気象庁の火山監視システム
² その他,ご意見・ご要望
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研修が大変充実して来てよかった.
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次々年度は全国技術大会が東京で開催されるので,次年度に次々年度の研修会のありかたについて,他大学の人に意向を聞いてはいかがか.
3. おわりに
今年度の研修会は,従前どおり,地球物理観測の繁忙期を避けて1月に開催されました.前年11月に発生した長野県北部地震の対応でお忙しい方も多いなか,多数の皆様の参加を頂きました.技術発表件数は20件でほぼ例年通りの件数を頂きました.
技術発表では,地球物理観測を行った成果や経験談を数多く頂いた他,新しい製造加工技術の活用に関する発表なども頂きました.口頭発表では数多くの質疑が行われ,参加者の熱意と真摯さに感銘しました.今年度は,毎年好評であるポスター発表の実施はそのままに,実施時間は短縮させていただき,技術発表以外のプログラムを多く盛り込みましたが,アンケートでも概ね肯定的な意見をいただきまして安堵しております.
地震火山災害予防賞の表彰式・記念講演については,今年度も研修会の一環として実施させて頂き,渡辺さんには職員研修の場に相応しい記念講演を行って頂きました.近年,多くの熟練職員の定年退職に伴い,世代交代がすすみ,新規に採用された職員が熟練の職員から技術指導を受ける機会が年々減少しております.そのような状況の中で,今回の記念講演は,長年地球物理観測に携わってきた渡辺さんから直接お話しを聴くことができた貴重な機会になったのではないかと思っております.
所外研修については,参加者の移動時間をできるだけ抑え,研修内容を充実させたいとの思いから,丸一日費やして海洋研究開発機構で研修を実施しました.日頃の業務内容に近い地球物理観測に関する講義や,間近で見る機会が少ない深海探査ロボットの見学など,さまざま内容を盛り込みました.この所外研修については,参加者から高い評価を頂きました.来年度の研修会2日目につきましても,意義の高い内容になるよう,アンケートに寄せられた意見を参考にさせて頂きながら,運営委員会で議論を進めていきたいと考えています.
今年度も三日間の開催期間中に多くのプログラムを実施しましたが,皆様のご協力に支えられまして,盛会裏のうちに終了させることができました.アンケートでは,研修会の充実ぶりを評価する意見を数多く頂き,ありがたく思っております.
近年,観測技術に関する技術職員への要望は,年々高度化してきているように思われます.その要望に対して高い次元で応えていくためには,観測経験で培われた知識や知恵を蓄積し活用していくことは勿論,新しい情報通信技術・半導体技術・製造加工技術などを活用していくことも重要であると考えています.加えて,習得された知識や知恵,活用された技術などを発表会などで積極的に紹介していただき,情報を共有して,お互いの技術を高めあうこともまた重要であると考えています.今年度の研修会が,情報や技術を共有するための情報交換や議論の場として,あるいはそのきっかけと成り得たのであれば,望外の喜びであります.地震研究所職員研修会が,来年度以降,皆様にとってより良い場となるよう,研修運営委員一同,真摯に取り組んでいきたいと思います.今回参加された皆様におかれましても,所属されている大学・機関におきまして観測や開発でご活躍いただき,是非来年度の研修会で,その成果や技術研鑽の様子などを紹介いただきますようにご期待申し上げます.
最後になりましたが,各大学や関連機関の施設長には,所属の職員に研修会への参加を奨励していただきまして誠にありがとうございました.また,研修会の開催期間中は,所長,事務長をはじめ各センター長,各部門主任,事務部の皆様にさまざまなご支援とご協力を頂きました.研修運営委員一同,心よりお礼申し上げます.
4.
参考資料
研修会プログラム
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※平成26年度
研修運営委員会
安田 敦(運営委員長),市原美恵(運営副委員長),八木健夫(実行委員長),増田正孝(実行副委員長)
井本良子,浦野幸子,芹澤正人、西本太郎