平成30年度地震研究所職員研修会報告

研修運営委員会

平成30年度地震研究所職員研修会を平成31年1月23日(水)?25日(金)の3日間にわたり開催しましたので,ここに報告いたします.

1.研修会の概要

 本研修会は主に「技術発表」・「所外研修」・「特別講演」の3つから成っており,技術発表を1日目と3日目に,所外研修を2日目に,そして特別講演を3日目に開催しました.

 <1日目> 開会式に引き続き,技術発表(口頭発表4件とポスター発表11件)を行いました.その後に,地震火山災害予防賞の表彰式(受賞者:内田正之氏)と受賞記念講演が行われました.初日の研修終了後には参加者全員で記念撮影を行い.その後で懇親会を催しました.

 <2日目> 所外研修として国立情報学研究所(東京)を訪問しました.そこでは,職員の方から最初に研究所の概要をご説明いただき,午前中は研究員の方によるSINET,広域データ収集基盤,クラウド,オープンサイエンスに関する講演をして頂きました.午後は,事前に要望を出した「センシングに関する技術」および「観測データから生み出される新たな技術」について,それぞれ研究者の方から特別講演をして頂きました.最後に3班に分かれ,SINET検証室の見学および紹介をして頂きました.

 <3日目> 初めに,技術発表(口頭発表3件)と研修報告(口頭発表1件)を行いました.次に,アウトリーチ室による火山研究の広報用動画について,撮影にまつわる紹介を行いました.続いて,岩崎貴哉教授(東京大学地震研究所)による特別講演を行いました.最後に,東北大学の佐藤真樹子さんと地震研究所の芹澤正人さんに,それぞれ所内外を代表して修了証書を授与させていただき,研修会を終了しました.

 本研修会への事前参加申込者,つまり所外研修を含む3日間全ての研修に参加をご希望された方々は37名でした.内訳は,所内からが19名で,他大学からが18名でした.しかし,体調不良により途中不参加となられた方も数名いらっしゃいました.この他にも,所内外の多くの方々が懇親会に参加され,また特別講演を聴講されるなど,3日間の延べ参加人数は120名以上となりました.

2.アンケート回答概要

 研修会では更なる改善を目指して毎年参加者にアンケートをお願いしています.今回は33通の回答をいただきました.アンケートにお答えいただいた皆様に感謝申し上げます.集計結果を文末に添付し,ここでは要約してご紹介いたします.

 問1では,研修会の内容を項目別に4段階で評価していただきました.全ての項目(「口頭発表」・「ポスター発表」・「所外研修」・「特別講演」・「全体」)で概ね高評価をいただきました.その中でも特にポスター発表と特別講演の評判が良かったようです.ゆとりあるプログラム構成とスムースな運営にお褒めのお言葉もいただきました.一方で,所外研修が座学中心だったこと,講義内容が専門的だったことで,興味を持ち辛かった方も少なからずいらっしゃったようです.

 問2-3では,次回の参加予定と開催時期の要望をお伺いしました.大多数の方々が次回も参加していただけると回答して下さいました.また開催時期についても例年同様に1月下旬の水-金曜日(3日間)の日程をご希望されました.ここ数年,この時期に開催するのが慣例となっております.地震火山に関わる大半の技術系職員にとって1月は比較的,野外活動の少ない閑散期にあたり,3日間の長期にわたって開催される本研修会にも参加されやすいのだと思います.その他の意見として,春開催を希望するご意見もありました.

 問4-6では,2日目の研修のあり方,および希望される所外研修の訪問先や所内研修の研修内容をお伺いしました.大多数の方は,例年同様の所外研修を望んでおられるようです.一方で,所内研修(講習・実習)を望む回答も一定数ありました.また,具体的な訪問先と研修内容についても多くの候補を挙げていただきました.これは皆様の業務の幅や興味の方向性が多岐にわたるが故だと思われます.興味深いのは,過去の訪問先や研修内容をアンケート用紙に示しているにも拘らず,それらを再び希望されるケースがあることです.おそらく,ここ数年の間に新規でご参加いただいた方々がご希望されているのだろうと推測されます.そして過去の所外研修・所内研修が好評であった証拠でもあると捉えています.

 問7では,ご希望される特別講演の講師や内容についてお伺いしました.安全管理に関するもの,キャリアパスに関するもの,過去の観測研究を通した技術継承などを挙げていただきました.

 問8では,その他のご意見等をお伺いしました.感謝のお言葉や有益なご提案をいただきました.これらのご意見を参考に,更に充実した研修会を目指していきたいと考えております.

3.研修会を終えて

 今回の研修会への参加者内訳を見ると,昨年度に比べ所外からの参加者が少し増えました.今年度は,他の技術発表会や研究会の開催年次では無かったため,所外参加者の方々にとっては旅費の問題や発表準備の調整がつきやすかったと思われます.その一方で,研修会における口頭およびポスター発表の申込件数は減少しました.専門部会や学会とは違い,本会は自由に技術や情報共有,問題提起の出来る場です.参加者の皆様には,気負わず積極的に発表していただきたいと思います.

 逆説的ではありますが,発表件数が減ったため,今回のプログラムおよび研修会の運営は,例年に比べゆとりあるものとなりました.頂いたアンケートには,発表への質疑応答や休憩時間に十分な時間が取れたことをお褒めいただく意見もありましたが,発表件数が少ないとのご指摘もあり,もっと積極的に発表を募るべきだったと反省しています.毎年状況が変化する中で,最適なプログラムを編成するのは難しいことですが,多くの皆様にとって有意義な研修となるよう,運営側が努力をしていく必要があると思っています.今後は他の会と重なる年次についても,皆様に参加しやすい環境や,発表に関してより自由な形式で行える方法を模索していくべきだと思いました.

 技術発表に関して,今年度は3Dプリンターによる制作物やVR・ドローン撮影技術の展示や技術紹介など,最先端技術を取り込んだ発表が複数件ありました.皆様が日々の業務の傍で,積極的に最新の技術を吸収し業務に反映されている事に,多いに奮起しました.運営側としましては,今後も新しい形の発表や展示等の試みに,柔軟に対応・企画していきたいと考えております.

4.謝辞

 本研修会への職員参加につきましてご賛同及び格別のご配慮をいただきました各施設長の皆様,開催期間中の業務につきましてご配慮いただいた所内教員の皆様,特別講演の依頼を快くお引き受けいただいた岩崎貴哉教授,事務手続きや受付・修了証の発行等でご協力いただいた事務部・事務支援室の皆様,所外研修でご対応いただいた各施設ご担当者の皆様に,この場をお借りしてお礼申し上げます.また,今回ご参加の皆様につきましては,次回以降も積極的にご参加・ご発表をしていただきますよう重ねてお願い申し上げます.地震や火山に関わる全国の技術系職員が普段の業務活動で得られた知識や経験を共有する場として本研修会が活用されれば幸いです.

5.参考資料

  • <アンケートと集計結果>
    *総回答数33件
    (理由・ご意見など似た内容は集約し,また,記述間違いと思われる箇所は修正しています)

    問1.今回の研修会を4段階で評価してください.
    ・口頭発表
    A:非常に良い13,B:良い20,C:悪い0,D:非常に悪い0,無回答0
    ・ポスター発表
    A:非常に良い14,B:良い19,C:悪い,D:非常に悪い0,無回答0
    ・所外研修
    A:非常に良い12,B:良い19,C:悪い1,D:非常に悪い0,無回答0
    ・特別講演
    A:非常に良い19,B:良い12,C:悪い0,D:非常に悪い0,無回答2
    ・全体(プログラム構成や会場設営など)
    A:非常に良い13,B:良い17,C:悪い0,D:非常に悪い1,無回答2

    問2.来年度も職員研修会が開催される場合には,参加されますか.
    A:参加を考えている28(口頭2 ポスター3 参加だけ1 未定23,複数回答あり)
    B:参加を考えていない0
    C:まだわからない4
    無回答0

    問3.来年度の職員研修会の開催日程は,いつ頃の開催を希望されますか.
    A:例年通りで良い(2020年1月下旬の水曜午後から金曜午前の正味2日間)29
    B:それ以外が良い3(例:4~6月,毎年所外研修は必要か?)
    C:まだわからない0
    無回答1

    問4.職員研修会では,他機関の見学などを行う所外研修と,講習・実習などを行う所内研修のどちらを希望されますか.
    A:所外研修25
    B:所内研修5
    無回答0
    その他:どちらでもよい3

    問5.職員研修会の際に,地震研究所外で研修に行ってみたい施設や場所などがあれば,お教えください.(複数回答可)
    官庁管轄
    ・気象庁 (3) ・気象研究所・東京航空地方気象台・消防庁・情報通信政策研究所
    ・日本海洋データセンター
    研究所・法人等
    ・国立極地研究所 (2) ・宇宙航空研究開発機構 (3) ・防災科学技術研究所
    ・情報通信研究機構・統計数理研究所・海上技術安全研究所・産業技術総合研究所
    ・国立天文台・日本地図センター・銚子ジオパーク(チバニアン)
    東大内
    ・東大牧場・カミオカンデ
    民間
    ・企業の研究所etc・免震ダンパーを作っている会社・航空整備場(JAL,ANA)
    ・携帯キャリア会社(近年モバイル通信を使った観測が増えており,懸案事項を聞きたい.また,インフラのノウハウを観測で活かしたい)
    その他
    > 現業を担っている部所の研修だと,より身近にまた役に立つと思う
    体験型の研修が良い

    問6.職員研修会の際に,所内研修で受けたい講習や実習などがあれば,お教えください.(複数回答可)
    ・機械工作 (3) ・雷対策 (3) ・ノイズ対策 (3) ・電子回路
    ・情報処理 (2) ・ネットワーク ・情報処理・ネットワーク ・ネットワーク・セキュリティ
    ・Python,Raspberry PI入門
    ・スマホアプリ開発(事始めくらいの内容)
    ・運転技術 ・山岳地図の読み方講習会 ・地震観測

    問7.職員研修会の際に,特別講演として聴講してみたい講師や講演内容があれば,お教えください.(複数回答可)
    ・安全管理に関する内容 ・総長,理事(人事)・森田先生
    ・昔の観測(1980?90年代)を知る退職された先生方に,観測のノウハウ等を聞きたい

    問8.その他,ご意見ご要望などありましたら,お教えください.
    ・何か,手を動かす研修
    ・名簿は機関別になっていると良い
    ・研修委員会および地震研職員への労いのお言葉(多数)

  • 研修会の様子
 
写真1.技術発表(口頭)

写真2.技術発表(ポスター)
 
写真3.地震火山災害予防賞表彰式

写真4.集合写真(地震研究所)
 
写真5.所外研修(国立情報学研究所)

写真6.所外研修(国立情報学研究所)
 
写真7.特別講演(岩崎貴哉教授)

写真8.修了証授与式

※ 平成30年度 研修運営委員 ※

上嶋 誠(運営委員長)・平賀 岳彦(運営副委員長)・外西 奈津美(実行委員長)・田中 伸一(実行副委員長)・池澤 賢志・佐伯 綾香・阿部 英二・大塚 宏徳