第11回 地震波トモグラフィーとマントル・ダイナミクス
11.2 地球の断層撮影 - 地震波トモグラフィー
地球の構造と,我々が知っている海や大陸などの地表の横方向の構造の変化はどのような関係があるのでしょうか.陸と海の違いはどの深さまで続くのでしょうか?プレートテクトニクス理論では、海洋底はマントルに潜り込むといいますが,マントルに潜り込んでその先どうなるのでしょう?ハワイ諸島やアイスランドのような海の真ん中にある火山島はなぜ出来るのでしょう?このような疑問に答えるためには地球の中をもっと細かく見なければなりません.医療で使う断層撮影(CTスキャン)と同じ方法を使い,地震学者は地球の断層撮影を行う方法を開発しつつあります.断層撮影によって医学が格段に進んだのと同様に,今地球科学は急速に進歩しています.
地震波の観測から地球内部の断層撮影(医療のCTスキャンと同じ原理)が撮れる


地球の断層撮影のむずかしさ:
医療の場合と地球の場合ではいくつか違うところがあります。医療CTスキャンではX線を使いますが,地球の場合は地震波を使います.地震が起きるところ,地震計が置けるところは限られているので,地球の場合は良く見えるところと見えにくいところが出てきます.
(1) 地震波線は速度構造によって曲げられ,直線でない.
(2) 地震と観測点の分布に偏りがある.
(3) 地震の位置には不確定性があり,速度構造と trade-off がある.
(4) データの読み取り誤差が大きい.
表面波トモグラフィー:
浅い構造は表面波を使うと決めやすい.
表面波は,周期が長いほど深い構造を反映する.
周期35秒
この周期帯では,海の深さ・地殻の厚さを反映している.
周期90秒
この周期帯では,マントル200−300kmの深さまで反映.中央海嶺の下の低速度,古い大陸の下の高速度などが明瞭.中央海嶺は,太平洋と大西洋で遅さの度合いが異なる(拡大速度との関係?).
周期175秒
さらに深い構造を反映.速度変化の度合いが小さくなっていることに注意.
S波の速度構造(表面波,実体波,自由振動,全てを使ったモデル):


S波,P波,bulk sound の比較.
速度構造が温度の違いを表しているのなら,すべての構造は相関するはず.
相関しない場合は,物質の化学構成が異なることを示す可能性あり.
CMB(核マントル境界)近くの構造は相関が悪い.
