大規模シミュレーションモデルのためのデータ同化法の開発

データ同化は、限られた観測データと数値シミュレーションモデルをベイズ統計学で組み合わせることで、観測や数値モデルを改善したり、 観測できない状態の推定や将来予測の高度化を可能にする計算技術です。 主に気象・海洋分野で発展してきた技術で、今の気象予報にはなくてはならないものとなっていますが、 データ同化自体は一般的な数学の理論であり、気象予報に限らず、さまざまな分野の問題に適用が可能です。

データ同化の目的は端的に言うと、モデルパラメータやモデル変数の「事後分布」を評価することです。 事後分布を評価することで、最適な系の状態やモデルパラメータを調べたり、 それらを使って予測等に役立てることができます。 しかしながら、事後分布の評価は結構大変です。 なぜなら、モデルパラメータやモデル変数の数が増えると、 「次元の呪い」により、評価に必要な計算量が指数関数的に増えるためです。

このような背景から、我々はモデルが大規模になった場合でも少ない計算量で実行可能なデータ同化の手法開発の研究を行なっています。 そして、開発した手法をさまざまな問題に応用することで、データ同化の適用可能性を模索しています。

関連論文
  • S. Ito, H. Nagao, A. Yamanaka, Y. Tsukada, T. Koyama, M. Kano and J. Inoue, Physical Review E 94, 043307 (2016)
  • S. Ito, H. Nagao, T. Kasuya, and J. Inoue, Science and Technology of Advanced Materials 18:1, 857-869 (2017)
  • S. Ito, T. Matsuda, and Y. Miyatake, BIT Numerical Mathematics, (2021)