2022年トンガのフンガ火山噴火時に発生した海洋外部重力波

Ocean Surface Gravity Waves Excited by the 2022 Eruption of Hunga Tonga-Hunga Ha’apai Volcano, 2024, Nishida, K., M. Ichihara, T. Kubota, T. Tonegawa, Geophysical Research Letters, 51, e2024GL111983, 2024, https://doi.org/10.1029/2024GL111983 .

トンガの噴火後に水圧計 (S-net, DONET) のスペクトログラム(図1)を見たところ、周波数に比例して数日のタイムスケールで到達が遅れる様子が見て取れました。余りに直線的だったので、最初は何かのバグかと思いました。落ち着いて考えると、典型的な海洋重力波でした。図の傾きから、観測点から励起源までの距離も見積もることが出来、火山の位置とぴったり一致します。津波と比較して、水深による影響が少ないために伝播の特性が単純となり、噴火の情報を直接的に記録していました。噴火時に周期100秒付近の成分が欠落していて、この周波数帯だけしばらく経ってから海洋重力波が励起されていました。噴火時に海水を吹き飛ばし、外向きに広がることによって津波を励起し、短周期の海洋重力波は、表層付近の擾乱起源ではないかと考えています。津波の励起は、初期波高を与えるよりは、初期fluxを与える方が物理的に自然ではないかと考えています (遠地では区別出来ませんが)。位相速度が遅すぎて、大気の波とのカップリングが弱い (大気重力波の周波数帯域よりは短周期です)点も、モデリングが単純となった理由だと考えています。

図1S-net の観測点S2N03で観測された水圧計記録のスペクトログラム。

海洋重力波はフンガハアパイ火山の噴火時 (4:00 UTC)に励起され、半日ほどつづきました。観測結果から、噴火時に火口直上の海水が吹き飛ばされその状態がしばらく維持され(図中(ii)の期間)、二時間ほど時間が経ってから火口に海水が流入し、短周期の津波が励起されたと考えられます(図中(iii))。

図2(a) S-netのデータから推定した震源時間関数のスペクトログラム。(b) 噴火の模式図。(i), (ii), (iii)はスペクトログラムで示した期間と対応する。Nishida et al. 2024のFigure 4 から引用。