2001年1月5日(金) 東京消防庁ヘリ 「つばめ」 JA9980号機 (東ヘリ発着、クル−3名 清水敏幸機長) 新世紀初フライト。珍しく同乗者なく観測主目的。 後部4人がけベンチシートの左右両端に着席。 両側大窓視界よし、ただし開かない。 * 出発前、いつもの2階ではなく1階事務室奥の室で待機、清水機長と事前に打 ちあわせの機会あり、こちらの要望をあらかじめ飲み込んでもらうことができた。    観測者: 大島 治、須藤 茂(地質調査所) 冬型気圧配置で東京は快晴、都心のビル群・富士山がくっきり見え視程良好。 洋上は雲わき、強い西風。伊豆大島以南の海は一面の白波。 三宅島も強い西風(機長によれば30〜40ノット!)。晴。 ただし高度約1500mに雲、他に点々とちぎれ雲あり、斜面に大きく影を落とす。 (即ち晴時々曇。)西風で噴煙は東にたなびく。 搭乗時間 9時02分 〜 11時30分 (物資輸送のため帰路神津島経由) 観測時刻 9時47分 〜 10時15分 (上空観察28分)  9:02 東京ヘリポート搭乗   9:04 移動開始  9:06 離陸(いつもの離発着場に据置型ライトとコードが仮設されている。夜 間も使用か?) 北に向かって発進後右旋回、東京湾中央を南下(海ほたる通過)。高度200m、時速2 40kmとのアナウンス 〜 浦賀水道 〜  9:22 城ケ島東方、徐々に高度を上げる(右前方に伊豆大島・利島・新島)    〜 伊豆大島東方までは快晴、  9:36 伊豆大島南端(波浮)東方通過。点々と雲、前方三宅島方面はべったり 雲で直前まで島影見えず。西の風強く海は一面の白波。  9:47 伊豆岬北西より三宅島接近。高度800m程度(目測)。 当初の予定では高度6000ftくらいで進入、高空から山頂カルデラを俯瞰した後 徐々に低空の細部観察に入るつもりだったが、雲多く高空からの観察は不可能、高度 下げつつ山頂程度の高さで進入となった。 到着直前までかなり雲が出ていたが島は洋上より少なめ、左前方の雲の切れ間から突 然北海岸線があらわれた感じ。北斜面全体が上空の雲の蔭で暗い。山頂南半から上が る白色噴煙は強い西風で低角に倒れ、カルデラ東縁をかすめるようにして東方へたな びいている。 山頂上空にかかる雲は高度1500mくらい(目測)、西斜面は比較的明るい。これなら 西側低空からカルデラ内が覗けるかも、と雲の底まで再度高度を上げてもらいつつ西 斜面へ接近。ところが何と、カルデラ内は白色噴煙が充満、中は何も見えない。まさ にお鍋一杯に溢れたよう。充満した白煙は西側はカルデラ縁の高さが上限、強風の通 らない内部でよどんでいると見える。 カルデラを左に見つつ縁沿いにゆるく左旋回しながら南下。火口からの噴煙は南縁を 覆って東へたなびいている。島の南半分は晴! 南から島全体が見渡せ噴煙の全体状 況もつかめそうなので、高度をとりながら一旦南海上へ出る。5300ftまで上昇。 噴煙は西からの強風で東にたなびき、東カルデラ縁上でせいぜい高度900m、東海 上で最高1700m弱(5500ft)。カルデラ内に充満した白煙も、西端こそカ ルデラ縁の高さだが東側ほど高く高度900mくらいまでは浮上している。 山頂を右に見、噴煙状況を観察しつつ海岸線沿いを西に進む。阿古まで移動後、高度 下げつつレストハウス上空付近を通過、カルデラ南縁に接近、時計回りでカルデラ縁 観察に入る。縁を右に見つつ北東側まで。 カルデラ内はシャボンで泡だったバスタブというべきか。スオウ穴は茶〜土色の水を たたえて変化なし。その切れ目から中(カルデラ内)を覗こうとしてもやはり白一色 、何も見えない。 その先、風下側に当たる南東側のカルデラ縁切れ目(東側で最も深い部分)が見もの 。カルデラ内を満たした白煙が勢いよく横に(東に)噴き出している。まさにビーカ ー・お鍋の注ぎ口。下部には青白ガスを伴っている。ガスを避けここで左旋回、昭和 15・37年割れ目上空を回って再びスオウ穴に接近。 カルデラ縁外周を反時計回りに、北〜西〜南へ。坪田で右旋回。 再びカルデラ縁外周を時計回りに南〜西〜北へ。北東で左旋回。 神着〜伊豆地区を左下に見ながら北海岸沿いを西進、      (以上、主にカルデラ縁西半を2往復、4回見たことになる。) 10:15 伊豆岬沖から離脱、神津島へ。 10:30〜10:37 神津島空港(酸素ボンベ?4本現地消防へ)ローター回し たままの受け渡し 〜 神津島西側 〜 式根島西側 〜 新島西側 〜 鵜渡根島西側 〜 利島西側  〜 伊豆大島西側 〜 城ケ島 〜 小原台 〜 海ほたる 〜  11:28 東京ヘリポート着陸、 11:30 降機。 (1)噴煙の状態 噴煙は白色、灰を交えず。強い西北西風(30〜40ノット)で東側へたなびく。 高さはカルデラ東縁で約900m、東方最高位で約1700m。 白煙はカルデラ内全面にも充満、カルデラ東縁から溢れ出ている。 噴煙は強風にあおられカルデラ外に出るとそのまま上昇せずに一旦下降、 東斜面を這うように重く垂れ下がった後、海岸近くの斜面下半部に達してから 上昇している。(気流のせいだろう。)下部には明瞭に青白ガスが付随。 上記の「東方最高位」は洋上で上昇後の高さ。 噴煙分布は東海岸線上で空港南端〜三池の範囲。火口から30度弱の極めて 狭い範囲に当り、強い「西北西の風」の影響を示している。これにカルデラ 東縁から溢れ出た噴煙が北側に若干付け加わっている。 噴煙発生地点は従来どおり、カルデラ内南〜南西部。カルデラ南縁からも溢れ るかたちで東方へ向かっている。 噴煙は従来パルス状に排出され、たなびく噴煙の断面は山谷の繰り返しだった。 今回強風のため飛行中はっきりしなかったものの、同じパターンが写真では読 み取れる。 (2)カルデラ内全く見えず。 (3)カルデラ南西縁の地割れ健在。  延長約200m?の主地割れはまだ残っている。前回12月27日に新たに見出さ れた内側(カルデラ側)の小地割れも残っている。だがそれによって境された内側ブ ロックの一部(西側)は薄くなり欠けたようにも見える(欠け落ちたとしても延長1 0m未満で大勢に影響なし)。  西端の、旧雄山登山道に最も近い幅薄の地割れブロックは依然崩落せずに残ってい るが、以前より目立つようになった。低角度でも目につきやすくなっており、地割れ が以前より若干開いたのかもしれない。 (4)南西斜面上部に降灰の跡 南西斜面が広い範囲にわたって白っぽくなっている。12月13日などにも南斜面上 部に見られたが、今回は範囲が広い。(といって7月9日のような一目瞭然のもので ないため、実は確認作業に手間取った。) 降灰分布は、南西方向を主軸として火口から約900m(カルデラ縁から約500m )、登山道の東端ヘアピン(標高580m)のやや上、即ち標高約600mまで、 西南西方向に向かっては、登山道の上から2番目の東端ヘアピン(かつてのガードレ ール付き見晴らしカーブ、標高650m)のやや上、即ち標高約660mまで、 カルデラ縁ではほぼ南〜南西〜西の範囲、 少なくとも以上の範囲がうっすらと白くなっており、一瞬雪や霜の見間違えかとわが 目を疑ったが、分布その他からやはり降灰らしい。 目につく特徴は斜面の尾根・谷のわずかな地形高低によって斑模様ができていること 。特に南西斜面では東向き斜面がはっきりと白く、西向き斜面では蔭になったように 白みが薄いか殆どなく、平坦地形では一様に白みがかっている傾向がある。(南斜面 寄りではむしろ逆センス、西向き斜面の方が白く見える。)明らかに上空から一様に 降った普通の規模の降下火山灰ではない。 サージと言える程のものでもなさそうだが、火口から(南よりに?)立ち上がった灰 混じり噴煙が南西に流れる際残したものには違いない。(低い小規模噴煙からの降灰 なら、軸の両側で軸側斜面にたまりやすい?) なお、この新たな白色分布は12月27日午前の飛行時には認められなかった。12 月27日観察後〜本日1月5日朝の間に起きたことになるが、風向データ等で、発生 時点をある程度絞り込めるのではないか? <注意> 南西斜面の尾根の東向き斜面はもともと8月29日のサージ状側方移動の 灰で堆積物が厚いと見られ、普段でも黒味弱くやや淡色に見える。その分を差し引い ても、今回の地形による灰分布の斑模様は明かと見える。 (5)未確認 怪しい縞模様 まだ書くべきではない事かもしれないが、南斜面上部にカルデラ縁に平行するセンス の水平の縞模様のようなものが見えて(見えるような気がして)気になっている。尾 根・谷を横切る濃淡のバンドがいくつもあるようにも見えるが実体がつかめない。( ひょっとして降灰によるトリックか?) 印象としては、有珠の3月31日噴火直前の空中写真に西山付近に見られた無数の細 かい地割れに似た雰囲気。といって地割れと認識できるものではない。線で結んで図 示できるような明確なものでもない。 12月13日の観察で気になり始めたが、今回も(っと)見えるような気がするので 、一応幽霊あつかいとしておきます。(仮に何かの前兆としても、事態がはっきりす るまでにはかなりかかりそう。) 私の目が(いや頭も)おかしい可能性も高いので、どなたか、南〜南南西斜面で同じ ように見えたら教えてください。私も気をつけています。