1月22日(月) 今回の同乗者は中野 俊氏(地調)の他,御蔵島に向かう都の職員1名と 災対関係者1名.搭乗したヘリは警視庁の「おおとり5号」でした. 午前9時,東京ヘリポートを離陸.9時55分三宅島上空に到達,10時21分まで のおよそ26分間観測を行った.その後御蔵島に到着.都の職員1名を入れ替えた後, 再離陸.10時40分,再び三宅島上空に到着.観測の予定ではなかったところを 無理にお願いし,10分間だけ観測を行った.10時51分に三宅島を離れ,11時2分 神津島に立ち寄る.給油と災対関係者の入れ替えを行った後,11時24分に神津島 を出発,帰途につく.12時23分,東ヘリに帰還. 今日は天候とパイロットに恵まれ,カルデラ内部およびカルデラ壁を存分に 観察することが出来ました.飛行ルートは高度約1000mで,カルデラを時計回りに 北〜東〜南〜南西の順に旋回(北西側はミストのために近づかず). これを4回繰り返した. [噴煙] この日は上層と低層で風向きが異なっていたらしく,噴煙と硫酸ミストの漂う 方向が食い違っていた.到達高度が約2000mにまで達したメインの噴煙は, 山頂からわずかに北東側にたなびいていた.メインの噴煙の色は白.一方, 硫酸ミストは標高1000mほどの高度を北西方向に流れていた. [カルデラ内部] 写真1は,この日に撮影したカルデラ内部の写真である. カルデラ内部のコーン,マウンド,水たまりの位置関係に大きな変化は 認められない.火山灰を伴う噴気は認められないが,噴気活動そのものは 非常に活発で,およそ1ヶ月前にカルデラ内部を観察したときに比べてさらに 噴気量が増加しているように感じられた. カルデラ北西のマウンドは,明らかに周囲より高く,完全に一つの高まりを 形成している.12月の時点に比べてさらに盛り上がった印象が強いが, これが隆起によるものか周囲の沈降によるものかはわからない. カルデラ内部にあった複数の水たまりは,カルデラの北東端にあるもっとも 大きなものを含め,そのほとんどが陸水色に変化し,赤色を呈するものは ほとんど認められなくなった. その中で特筆すべきものが,カルデラのほぼ中央〜南西側に位置する 黒色の”水たまり”(写真2)である.この黒色水たまりは,カルデラ南の 火砕丘群と,カルデラ北西にあるマウンドとの間に形成された低地に存在 している. 当初,「これはもしかして新たな溶岩流か?!」と色めき立ったが, 以下の理由でこれは”水たまり”であると判断した; ・溶岩流にしては粘性が低すぎるように思える ・分布に”飛び地”がある ・南側が黒色から茶色に漸移している この黒色水たまりは,12/4に私がカルデラ底を観察したときには認められなかったが, 12/15と12/29のフライトで津久井さんが撮影された写真にはすでに出現している. よって,この黒い水たまりは12/4〜15の間に形成されたと推定される.この黒い 水たまりのサイズは,12/15の時点に比べて大きくなっているように見える. この黒色水たまりには,メインのコーンの下部からあふれ出た泥流(?)が 流れ込んだような痕跡が,黄色っぽい筋として認められる.この黄色っぽい ものが硫黄だとすると,火口から流出した硫黄を含む泥流によって,湖水の色が 黒色化したのだろうか?? [カルデラリム南西域の亀裂] カルデラの南西域には,津久井さんが12/25に発見した亀裂が分布している. この亀裂の内側の部分は,津久井さんの撮影した写真に比べて小さくなっており, 小規模な崩落が発生しているものと思われる. また,スオウ孔の西にある亀裂も確認した.この亀裂は,カルデラ内部に認められる 大きな亀裂に連続しているように見える(後述). [カルデラ壁] カルデラの北〜北西側は山体の断面が見事に露出している.このうち,スオウ孔 のすぐ西側に,カルデラのほぼ半分ほどの深さまで続く大きな亀裂を発見した. この亀裂は,12/27に金子さんが発見したスオウ孔西側の亀裂(スオウ孔をはさんで 2本あるかもしれない)に連続していることから,この部分の崩壊はまだまだ 進行していくものと思われる.この亀裂の下は,度重なる小崩壊によって 形成されたと思われる新しいテーラス堆積物が積み上がっている. カルデラ壁には無数の溶岩・火砕物の互層が露出している.これらのうち,スオウ孔 のやや西側にある白っぽい「T字」型の溶岩流(?)が見事である.この「T字」 の両端はそれぞれ薄い岩脈に連続している. [スオウ孔] スオウ孔の色は水の色が陸水色になった.このことは12/25の津久井さんの写真や 1/10の金子さんの写真でも確認されている. [山麓および山腹] 1月初旬,坪田で作業をしていた方が降灰を浴びたという情報があったことから, 三宅高校〜太路池周辺を入念に観察した.しかし,建物の屋上はきれいであり, また畑や道路上も,一見したかぎりでは灰に覆われているようにはみえなかった. 以前,三宅高校の屋上に新鮮な降灰のようなものがある,と報告した(11/24の ヘリメモを参照下さい)が,1/22の時点ではその降灰(?)も流されてしまった ようである. (大野)