3月19日(月) 今回搭乗したヘリは警視庁の「おおとり8号」. 同乗者は川邊氏(地調)の他,災対関係者3名. 午前9時3分,東京ヘリポートを離陸.10時0分三宅島上空に到達,10時27分まで のおよそ27分間観測を行った.10時37分神津島に立ち寄り,災対関係者の 入れ替えを行った後,11時1分神津島を出発,帰途につく.11時55分, 東ヘリに帰還. 今日はカルデラ内部およびカルデラ壁を観察することが出来た. 飛行高度は約1000m.カルデラ縁を時計回りに北〜東〜南の順に旋回. これを2回繰り返した.その後,島を反時計回りに1周したが, 反対側の窓だったため,山の状況を観察することができなかった(残念・・・). [噴煙] この日,久しぶりに火山灰混じりの有色噴煙が確認された.火山灰を含む 噴煙は,メインの火砕丘の南よりの位置から,もくもくと上昇していた. 噴煙の色は乳白色で,大量の火山灰が含まれているという印象はない. また,この日は火口群から放出される噴煙そのものの量が少ないように思えた. 微風下でもカルデラ内部を観察できた理由は,この噴煙量の少なさによる ものであろう. 噴煙の形は,これまでフワーッとしたサーマル状の形態を示していたが, この日はもくもくとしたカリフラワー状の形態(もしくは有珠山でみられる ような”炸裂型噴煙”に近い)を呈する.火山灰の放出に伴って,噴煙の形状も これまでとちょっと違ってきたように思える. 風が弱かったため,噴煙はカルデラのほぼ真上に上昇した後,ゆっくりと 西北西〜北西方向に流れていった.到達高度は約2000m.また,これまで 顕著に確認されていた硫酸ミストは,この日はほとんど確認できなかった. 島を1周した際に硫黄臭さをほとんど感じなかったことから,硫黄の放出量が かなり減少したような印象を持った. [カルデラ内部] カルデラ内部のコーン,噴気帯,北西のマウンド,水たまりの位置関係に大きな 変化は認められない.しかし,カルデラ壁の崩壊は進行している.カルデラの 東〜北東域には,最近の崩落によると思われる茶褐色の新鮮な崩壊堆積物が 表面を薄く被覆している.三池の山側にある鉄塔が,見かけ上カルデラ壁に 近づいたようにみえることから,この崩落堆積物はカルデラ東壁の崩落に伴う ものらしい.カルデラ南西側の黒色の水たまりも,カルデラ壁の崩落による 堆積物によって,その一部が埋め立てられはじめている. [火山灰] 島上空を一周する際に,ヘリの全面に微量の火山灰が付着した.神津島空港に 立ち寄った際に,ヘリのフロント部分を観察した限りでは,付着した火山灰は 極めて微量で,黄土色を呈する.その様子は,どろんこの水たまりを通過した後に 車に付着する”しぶき”によく似ている.あまりにも微量であったため, 回収する事はできなかったが,非常に泥っぽい印象を持った. [山麓] 新たな泥流は確認できない.ただ,土砂の流出に伴い,大船渡湾付近の海水が 色づいている様子が観察された. この日の様子を見ると,硫酸ミストを伴う大量の白色噴煙の放出に特徴づけられる これまでの様子とは若干表面現象が違って見える.火山活動が新たな状況を 迎えつつある可能性もあるので,今後,噴煙の形や色,到達高度などに注意して 観察していきたい. それから,微量とはいえ,火山灰放出を伴うことから,今後のヘリ観測も安全を 確保しつつ,慎重に行う必要があると思われる(例えば,カルデラの南側には 近付かない,もしくは噴煙の中には入り込まない等). 気象庁によれば,3/19の午前7時31分に有色噴煙が確認されています.これは 監視カメラに写るほどの明瞭なものです.ただし,微動の発生時刻とは 対応していないそうです.また,前日の3/18 22時32分には空振も観測されています. 一応,ご参考までに. (大野)