年4月13日(金) 1.観測支援: 東京消防庁ヘリ 「つばめ」  JA9980号機    クル−3名と我々観測員2名のみ。窓広く室内空間もあり、機内環境は良好。    東ヘリ始発〜東ヘリ帰着、観測専用のため、途中給油なしの無着陸飛行。 気象庁潟山さんから東京消防庁に出されたドアオープン依頼に対し「ドアオープンせず」との 事前回答があり、予定された火口付近の熱測定は実施不可。 ガラス越しの反射光のため、いい記録画像も最初から諦め。 ヘッドセットもなし。飛行ルート等の希望は整備担当氏からパイロットに伝言してもらえ、搭 乗中最大限の協力はしてもらったが、せっかく上空まで達しながら、十分な観測を果たせない のは残念、且つもったいない。 2.搭乗観測者 : 松島(地調)・ 大島 3.天候・飛行コース・時刻等 :  早朝から強い陽射しが射し込み、今日の観察に胸が膨らむ。しかし抜けるような青空ではな く、遠方は結構霞む。  搭乗時間 08時56分 〜 11時08分 (エンジン始動後搭乗、エンジン停止前降機)  観測時刻 09時48分 〜 10時20分 (約30分間) 08:56 東京ヘリポートにて搭乗。  8:58 移動開始、  09:00 南に向かって離陸、 いつもの東消庁コース     (〜 海ホタル 〜 富津洲 〜 浦賀水道 〜 伊豆大島東方 〜) 伊豆大島までは海も穏やか、白波もなし。視程よいが霞がかって伊豆半島ははっきりとは見え ず。雲と紛らわしいのは白雪の富士山頂か。 伊豆半島の蔭をぬける伊豆大島以南は西風強く、海面も急に白波だらけに。機もゆりかごのよ うに機首を左右に揺すられる。時にはドーンと上下に。高度 2500 ft の安定飛行。 9:48 三宅島北西(伊豆岬)上空に接近。 上空に雲はないが景色はかすみがち。強い西風を受けて噴煙は高く上がらず東側にたなびいて いるため、北〜西〜南側からの観察となる。 (噴煙の横倒し状況からすると、冬型の気象条件。カルデラ内の観察は白煙こもって期待薄。) 1回目: 高度 2500 ft 程度から下げ加減で西側海岸沿いを南下、山頂を遠巻きに様子見? (こちらからのお願いコースとは別の機長判断?)。 新澪〜大路間で右旋回、鉢巻道路外側を高度とりつつ北上、神着で左旋回。 2〜3回目: 中高度(3600 ft)。カルデラ縁沿いに北〜西〜南側を2往復してカルデラ内 〜カルデラ縁を観察。 (このうち1回は 6000 ft 以上の高空から全体を俯瞰する予定だったが、ガスって中が見に くいため、少しでも低い高度からの接近観察に切り替えた。) 南下する際、南西斜面過ぎから反転態勢に入ったので、噴煙のないできるだけ南東側まで南下 してから反転(=南斜面上空で右旋回)するようにお願いする。 (南縁の地割れや南斜面の浸食の進行など、観察対象がいろいろあることまでパイロットには 伝わっていない。警視庁並みにヘッドセットがあるとここは楽なのだが。) 4回目: 同じくカルデラ縁沿いに北〜西〜南西側からカルデラ内観察。右旋回の後、南西中 腹牧場を中心に観察、そのまま北上。 10:20 大久保浜から離脱。   〜 伊豆大島の東 〜 城ケ島東 〜 剣崎 〜 観音崎 〜 海ホタル 〜  11:04 東京ヘリポートに北から着陸、  11:08 「ちどり」(JA19A)の発進を待って降機。       (普段より1時間程度早い帰還だった。)      4。 観察事項 4−1. 噴煙 噴煙は強い西風で東側へ流されている。白煙。灰を交えず。 噴煙の高さは、北からの接近時に見ると、山の高さの 1/3〜1/4 即ち 200〜250 mくらい しかカルデラ縁上に上がらずに倒れている。 観察飛行中これを大きく凌ぐことなく、最高時でもせいぜい300m。(よって海面上せいぜい 約1000m。) 白煙は南縁から溢れぎみに東斜面を下り、南限は空港ビル、北限は三七山(未確認)程度、の 範囲に拡がる。下部に漂う青白ガスはもっと北東側へ地獄谷方向の北までひろがり、海上まで のびている。 噴煙量は、3月18日最大微動の後の3月21日の少なさは別格として、回復してきており、私 の目で比較する限り3月28日、4月4日より多い。 しかも排出に力強さが回復、以前のようにモックモックと上げている。(久しぶり。)しかし 全体として、かつてに較べればやはり弱い、少ない。 4−2. 火口 カルデラ内はモヤって十分には見られなかったが、瞬間的に観察できた。 主火口とその東隣の第2主火口と合わせて瓢箪型の輪郭が見え、噴煙活動は弱い。もうもうと 白煙をたてカリフラワー状にモックモックと上げる根元は瓢箪ではなく、(北から見て)その 奥の南火口とその東隣であるらしい。 つまり、これまでの主火口と平行する南隣の火口群らしい。そこは列状に伸びる北西噴気帯の 延長上に当たる。 そのあたりは、3月18日以後(恐らく南壁の崩落〜埋没で)噴煙排出を妨げられ、3月21日 観察時には埋没した南火口から南東にかけて蒸し焼き状態の黒い地肌に覆われ、脇から漏れ出 るように何本か列状に細い白煙を上げていた所(カルデラ南壁直下部分)。 いよいよ蓋を破って排気の自由を得たのかもしれない。(モックモックの白煙は2本あるよう にも見えるが未確認。) 4−3. カルデラ底 モヤって殆ど見えない。北池がきたなく、輪郭も変わっていなさそうなのは一応把握。 4−4. カルデラ縁と斜面上部 大きな変化は見あたらない。 南西縁の登山道カーブ東の地割れは、健在。レンズ状ブロックの中のひび割れがだんだん顕著 になってきた。 西南西縁の大地割れも、健在。高角度から見ると一線上配列ではなく、多少エシェロンぎみ。 北壁の崩壊は着々と進んでいるように見える。(活動自体に直接関係ないが。) スオウ穴の水は相変わらずきたない草色。 4−5. 斜面周辺〜山麓部 4月4日の観察時に鉢巻き道路あたりを境に下位の植生は緑がよみがえってきているのを見て いたが、約10日後の今日は、鉢巻き道路より上でもうっすらと緑の気配が感じられるようにな ってきた。ガリの発達著しく荒れ果てた北〜北西斜面でも。 今日は波高く船は着かなかったらしい。南側都道の復旧工事現場も黄色い重機がただ置かれた ままになっていた。  (大島 治)