5月28日(月) ヘリコプター:警視庁 おおとり8号(藤井機長・田中副操縦士・大久保機関士) 観測搭乗者:下司(東大地震研),大島(東大教養) 昨日27日朝,降灰をともなう有色噴煙が観測され,火口内の状態が注目された. しかし,本日の観測では顕著な変化は見出されなかった. 午前9時00分,東京ヘリポートを離陸.クルー・火山観測者以外に3名の同乗者 (警察関係)あり.海上は凪で,うねり・白波ともほとんどない.9時51分,三宅島 神着海岸付近に到達. 東側海岸沿いに高度300mほどで新澪池付近まで往復後,北側を通って阿古付近か ら村営牧場方向へまわり,初め低空で,後に5000ftまで上昇してカルデラ内を中 心に観察を行った. ○噴煙の状況:白色の噴煙が海抜2000m程度まで上昇(Fig.1).このところ高 い噴煙高度が報告されている.高く上がってから南〜南南東へゆるやかに流れる. ガス(ミスト)も,坪田方向へ噴煙の下側に薄く広がっている.三宅高校上空で ガスを横切るとき,機内でも硫黄臭を感じた. ○カルデラ内の状況:地形,噴気の分布などカルデラ内の状態に先週末と大き な変化は見られない(Fig.2).雲が北側から山頂部にかかっており,噴煙は南側 へたなびいているため,カルデラ内は西側のわずかな角度からしか覗き込めなか った.  主火口の噴気は比較的弱く,部分的に火口底が見える(Figs.3,4).内側火口 はほとんど見えない.25日金子氏撮影時の噴気よりも弱いが,下司撮影14日噴気 よりは強い.主火口外の噴気の周辺には硫黄の付着が見られる.噴煙の間から見 える主火口東側壁面にもほぼ一面に硫黄の付着がある(Figs.3,4). ○27日降灰:カルデラ内火口東側も僅かに灰白色がかって見えるが,降灰の影 響かどうか判断は難しい.ガリーなど既存の地形はそのまま保存されている( Fig.5)ため,27日噴火に伴ってカルデラ内に降灰があったとしてもそれはごく微 量である.   三七山-三池付近の樹木の色がややくすんで灰白色がかって見えるのは 27日の 降灰の影響と思われる(Figs.6,7).久々に火口からモノが放出されたので,火口 内の物質的な情報が得られる可能性が高い.降灰の採集がなされることを期待した い. 10時20分観測終了.神津島空港にて警察同乗者3名降機,2名乗機.10時57分神津 島離陸.新島-大島-鎌倉-新横浜-丸子橋上空を経由して,11時59分東京ヘリポー ト到着. ご協力いただいた警視庁クルーの皆様に感謝. 写真キャプション Fig.1 北西側から見た三宅島.噴煙は南側へたなびく.高さ2000m前後. Fig.2 西側から見るカルデラ全体.27日噴火前と特に大きな変化はない. Fig.3 カルデラ内火口.噴煙量はやや少ない. Fig.4 主火口アップ.火口底に黄色い硫黄の付着が一面にみられる.火口左(東)側火砕 丘斜面に発達するガリーもくっきりとしており,火口近傍に多量の火山灰の堆積があっ た証拠は見出せない. Fig.5 主火口周辺.特に変化は見られない.5月14日Fig.2と比較してください. Fig.6 三池浜北部.27日朝降灰の報告のあった地域だが,とくに降灰の影響は見られな い. Fig.7 三池上方山腹の樹木.降灰の影響か,樹木の色がやや灰白色にみえる. Fig.8 三池上方山腹の杉.まだらに変色している. Fig.9 村営牧場からレストハウス周辺.ほとんど灰色の世界だが,画面右下の七島展望 台南斜面には緑が芽吹いているのが見える. (下司 信夫)